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AtCoder入門ガイド - 競技プログラミングを始めるための完全マニュアル

この記事のまとめ

  • AtCoderは日本発の競技プログラミングプラットフォームで、日本語の問題文と丁寧な解説が大きな魅力
  • ABCコンテストは毎週土曜日に開催され、初心者でも参加しやすいA問題から挑戦できる
  • レーティングシステムで自分の成長が可視化でき、過去問とAtCoder Problemsを活用した日常練習が上達の鍵

AtCoderとは - 日本が誇るプログラミングコンテストの舞台

AtCoderは、日本発の競技プログラミングプラットフォームとして2012年に誕生した。創設者の高橋直大氏自身がトップレベルの競技プログラマーであり、その経験が運営に反映されている。問題の質の高さと日本語でのサポートが充実していることから、日本のエンジニアやプログラミング学習者にとって最もアクセスしやすいプラットフォームだ。

海外にはCodeforcesやTopCoderといった競技プログラミングのプラットフォームがあるが、AtCoderは問題文がすべて日本語と英語の両方で提供されている点が大きな強みだ。アルゴリズムの問題自体は英語で読めても、微妙なニュアンスの理解が求められる場面では日本語があるとやはり安心感がある。コンテスト後に公開される公式解説も日本語で丁寧に書かれているので、「なぜその解法になるのか」を深く理解できる。

そういえば、AtCoderは企業の採用活動にも活用されている。AtCoderJobsという求人サービスでは、レーティングに基づいて企業とのマッチングが行われる。つまり、AtCoderで問題を解き続けることは、純粋にプログラミング力を高めるだけでなく、転職やキャリアアップにも直結する可能性があるわけだ。

アカウント登録の手順 - 3分でスタートラインに立てる

AtCoderのアカウント登録は非常に簡単だ。公式サイト(atcoder.jp)にアクセスして「新規登録」をクリックし、ユーザー名、メールアドレス、パスワードを入力するだけで完了する。ユーザー名は後から変更できないので、少し考えてから決めるとよい。本名でもハンドルネームでもどちらでも構わないが、コンテストの順位表に表示されることは覚えておこう。

登録が完了したら、プロフィール設定で「所属」や「使用言語」を入力しておくことをおすすめする。所属は会社名や大学名を入れてもいいし、空欄のままでも問題ない。使用言語の設定はコンテスト中の提出で自動選択されるものではないが、他のユーザーがあなたのプロフィールを見たときに参考になる情報だ。

ところで、AtCoderには「Practice Contest」という常時開放されているコンテストがある。ここで提出の仕方を事前に練習しておくと、初めてのコンテスト本番で「提出方法がわからない」というトラブルを防げる。問題は非常にシンプルで、標準入力からデータを読み取って標準出力に結果を表示するだけの内容だ。自分が使う言語で入出力の書き方を確認する良い機会になる。

ABCとは何か - 初心者のための主戦場

AtCoderのコンテストにはいくつかの種類があるが、初心者が最初に参加すべきなのはABC(AtCoder Beginner Contest)だ。ABCは毎週土曜日の21時から開催される100分間のコンテストで、A〜Gの7問(場合によってはF問やEx問まで)が出題される。A問題が最もやさしく、後ろの問題にいくほど難しくなる構成だ。

A問題は本当に基礎的な内容で、プログラミングを始めたばかりの人でも解ける難易度に設定されている。たとえば「2つの整数を受け取って、その合計を出力してください」といった問題だ。B問題は少しだけ複雑になり、ループや条件分岐を組み合わせる必要が出てくる。C問題からはアルゴリズムの知識が求められ始め、D問題以降は中級者向けの内容になる。

初心者がABCに参加するメリットは、「実際のコンテストの雰囲気を体験できる」ことにある。時間制限のあるなかで問題を読み、考え、コードを書いて提出する。このライブ感は過去問を解くだけでは得られない。最初のコンテストでA問題だけしか解けなくても全く問題ない。それが現在地だと知ること自体に価値がある。回を重ねるごとにB問題、C問題と解ける範囲が広がっていく実感は、この上ないモチベーションになる。

レーティングの仕組み - 色で分かる自分のレベル

AtCoderのレーティングシステムは、参加者のスキルレベルを数値と色で表現するものだ。コンテストに参加して問題を解くたびに、パフォーマンス値が計算され、それに基づいてレーティングが更新される。レーティングはElo式に近い仕組みで、自分より強い相手に勝つと大きく上がり、自分より弱い相手に負けると大きく下がる。

色の区分は灰色(400未満)から始まり、茶色(400〜799)、緑色(800〜1199)、水色(1200〜1599)、青色(1600〜1999)、黄色(2000〜2399)、橙色(2400〜2799)、赤色(2800以上)と続く。灰色からスタートして茶色になることが最初の目標になるだろう。茶色になるには、ABCでA〜C問題を安定して解けるようになる必要がある。

そういえば、レーティングは最初の数回のコンテストで大きく変動しやすいという特徴がある。これは「暫定レーティング」の仕組みによるもので、参加回数が少ないうちはレーティングの振れ幅が大きい。10回ほど参加すると安定してくるので、最初の数回の結果に一喜一憂する必要はない。大事なのは長期的なトレンドとして上がっているかどうかだ。

緑色に到達すれば、プログラミングの基礎力は十分にあるとみなされるレベルだ。水色以上になると、アルゴリズムの知識と応用力が高いことの証明になり、IT企業の採用面でも評価される。ただし、レーティングを上げること自体が目的になってしまうと楽しくなくなるので、あくまで成長の指標として楽しむ気持ちを忘れないでほしい。

コンテスト参加のコツ - 本番で実力を出し切るために

コンテスト本番では、限られた100分間をどう使うかが成績を大きく左右する。基本的な戦略としては、A問題から順番に解いていくのがセオリーだ。A問題は5分以内、B問題は10分以内に解くことを目標にして、残りの時間をC問題以降に充てよう。

問題を読んでいて「これは解けそうだ」と思ったら、すぐにコーディングに入るのではなく、まずサンプルケースを手で計算してみよう。問題の意図を正確に理解しているかどうかを確認するためだ。コンテスト中に最もつらいのは、30分かけてコードを書いた後に「あ、問題の意味を取り違えていた」と気づく瞬間だ。サンプルケースの確認に1〜2分かけることで、このリスクを大幅に減らせる。

ところで、コンテスト中の「WA(Wrong Answer)」はペナルティとして加算される仕組みになっている。同じ問題で何度もWAを出すと、解けた場合でも順位が下がる。だから、提出する前にサンプルケースが全て通ることを必ず確認しよう。さらに余裕があれば、自分でエッジケースのテストケースを作って確かめるとよい。0が入力された場合や、最大値が入力された場合など、境界値のテストは特に重要だ。

各プログラミング言語での参加 - 自分に合った道具を選ぶ

AtCoderでは30以上のプログラミング言語で提出できるが、競技プログラミングでよく使われるのはC++、Python、Javaの3つだ。それぞれに特徴があるので、自分の目的に合った言語を選ぶとよい。

C++は実行速度が圧倒的に速く、競技プログラミングの世界では最も人気のある言語だ。STL(標準テンプレートライブラリ)にソートや二分探索、優先度付きキューといったアルゴリズムとデータ構造が豊富に用意されていて、少ないコード量で高速なプログラムが書ける。上位を目指すなら、C++を選んでおくのが無難だ。ただし、C++自体の学習コストはやや高いので、プログラミング初心者には敷居が高く感じるかもしれない。

Pythonは書きやすさとコードの読みやすさで人気がある。文法がシンプルで、リスト内包表記やスライスといった強力な機能を使えば、少ない行数で処理を記述できる。デメリットは実行速度で、C++の10〜100倍遅いことがある。そのため、D問題以降で実行時間制限に引っかかることがまれにある。とはいえ、C問題まではPythonで十分に対応できるし、PyPy(高速なPython実装)を使えば速度の問題もかなり緩和される。

Javaは実行速度とコードの安全性のバランスが良い言語だ。業務でJavaを使っているエンジニアが多いため、「仕事で使っている言語でそのまま参加したい」という人に向いている。ただし、入出力の書き方がやや冗長で、Scannerクラスでの入力読み取りは慣れるまで手こずるかもしれない。BufferedReaderを使った高速入力のテンプレートを事前に用意しておくと、コンテスト中のストレスが減る。

過去問練習の方法 - コンテスト外の時間を有効に使う

コンテストは週に1回だが、実力を伸ばすには日常的な練習が欠かせない。AtCoderの過去問は公式サイトですべて公開されており、コンテスト終了後も自由に解くことができる。過去のABCの問題を解いていくのが、最もシンプルで効果的な練習方法だ。

過去問を解く際のポイントは、自分のレベルに合った問題を選ぶことだ。A問題が安定して解ける人がA問題ばかり解いていても成長は遅い。逆に、C問題がまだ解けない段階でD問題に挑戦しても、時間ばかりかかって得るものが少ない。「8割の確率で解けるレベル」の問題を中心に、「5割の確率で解けるレベル」の問題にも挑戦するのが理想的なバランスだ。

解けなかった問題は、コンテスト後に公開される公式解説を読んで復習しよう。AtCoderの解説は非常に丁寧で、なぜその解法になるのかの理由まで説明してくれることが多い。解説を読んだ後は、自分の力でもう一度コードを書いてみることが大切だ。「読んで理解した」と「自分で書ける」の間には大きなギャップがある。このギャップを埋める作業こそが、実力向上の核心だ。

AtCoder Problemsの活用 - 学習効率を劇的に高めるツール

AtCoder Problemsは、kenkooooさんが作成・運営しているAtCoderの非公式支援サイトだ。AtCoderの全問題を難易度別に一覧表示してくれるほか、自分が解いた問題、解いていない問題をカラーで表示してくれる。このサイトなしに効率的なAtCoder学習は考えにくいほど、便利なツールだ。

特に便利なのが「Difficulty」の表示だ。各問題に対して推定難易度が数値で表示されるので、「今の自分はDifficulty 400くらいの問題なら解ける」「600になると半分くらいしか解けない」といった具合に、自分のレベルと問題の難度を客観的に把握できる。これにより、やみくもに過去問を解くのではなく、自分に合った難度の問題を効率的に選べるようになる。

もうひとつ注目したいのが「Training」モードだ。これは特定のカテゴリやアルゴリズムに絞って問題を出してくれる機能で、「二分探索の問題だけを集中的に練習したい」といったニーズに応えてくれる。また、「Streak」機能もあり、毎日1問以上解くと連続記録が表示される。LeetCodeと同様に、この小さなゲーミフィケーション要素が学習の継続を後押ししてくれる。

ところで、AtCoder Problems以外にも便利な外部ツールがある。「AtCoder Tags」は問題にアルゴリズムのタグ(DP、グラフ、貪欲法など)を付けてくれるサービスで、特定のアルゴリズムを集中的に練習したいときに重宝する。「AtCoder Clans」はユーザーのランキングや統計情報を詳しく見られるサイトだ。これらのツールをうまく組み合わせることで、限られた練習時間の中でも効率よくスキルを伸ばせる。

灰色から茶色へ - 最初の壁を越えるために

AtCoderを始めたばかりの人が最初に目指すべきは、灰色から茶色への昇格だ。茶色(レーティング400以上)になるためには、ABCのA問題とB問題を安定して解き、C問題もコンテスト中に解けることが目安になる。これは決して高いハードルではないが、ある程度の知識と練習が必要だ。

A問題とB問題を確実に解くためには、プログラミングの基本的な文法を理解していれば十分だ。変数、条件分岐(if文)、ループ(for文、while文)、配列の操作ができれば、ほとんどのA問題とB問題に対応できる。ここでつまずく人は、競プロの問題に取り組む前に、プログラミング入門書で基礎を固めたほうがよい。基礎が固まっていない状態で問題に挑戦しても、「何がわからないのかがわからない」状態に陥りやすい。

C問題を解くためには、いくつかの基本的なアルゴリズムの知識が必要になる。全探索、ソート、累積和、二分探索あたりが頻出だ。これらのアルゴリズムを一度理解すれば、C問題の多くに対応できるようになる。学習方法としては、ABCの過去問のC問題を20問ほど解いてみて、解けなかった問題のパターンを分析するのが効果的だ。同じパターンの問題を集中的に解くことで、そのアルゴリズムが「使える道具」として定着する。

茶色から緑色へ - アルゴリズムの引き出しを増やす

茶色から緑色(レーティング800以上)への道は、アルゴリズムの知識の幅を広げることが鍵になる。C問題を安定して解き、D問題にも時々正解できるようになると、緑色が見えてくる。D問題で頻出するアルゴリズムとしては、動的計画法(DP)、幅優先探索(BFS)、深さ優先探索(DFS)、Union-Findなどがある。

DPは競技プログラミングにおける最頻出アルゴリズムのひとつだ。AtCoderには「Educational DP Contest」という、DP専門の練習コンテストが用意されている。A問題からT問題まで26問あり、基本的なナップサック問題から高度な木DPまで段階的に学べる構成だ。この26問をすべて理解できれば、ABCのD問題で出るDP問題のほとんどに対応できるだろう。

実は、緑色を目指す段階で最も大切なのは「計算量の感覚を身につけること」だ。AtCoderの制限時間は通常2秒で、その間に処理できる計算量の目安は10の8乗程度だ。入力サイズが10の5乗ならO(N log N)の解法が必要、10の3乗ならO(N^2)でも間に合う、といった判断を瞬時にできるようになると、問題の方針を立てるスピードが格段に上がる。この感覚は問題を数多く解く中で自然と身についていくものだから、焦らず着実に練習を重ねていこう。

競技プログラミングを楽しむために - 成績に一喜一憂しない心構え

競技プログラミングは、本来楽しい知的スポーツだ。しかし、レーティングにこだわりすぎると「下がったらどうしよう」というプレッシャーで参加すること自体が苦痛になりかねない。大切なのは、コンテストの結果ではなく、そこから何を学んだかだ。

コンテスト中に解けなかった問題は、最高の学習教材になる。「あと少しで解けそうだったのに」という悔しさを感じた問題こそ、復習したときに最も記憶に残る。コンテスト後に解説を読み、自分のアプローチの何がダメだったのかを分析する。この振り返りのプロセスを丁寧に続けている人は、確実に成長する。

そういえば、AtCoderのコミュニティはとても温かい雰囲気がある。Twitterでは「#AtCoder」のハッシュタグでコンテスト後に感想を共有する文化があり、初心者からトップレベルの選手まで交流が活発だ。他の人の解法を見て「そんなアプローチがあったのか」と驚いたり、自分の解法を共有して反応をもらったりする経験は、ひとりで黙々と解いているだけでは得られない刺激になる。競技プログラミングを長く続けている人の多くは、コミュニティとの繋がりを楽しんでいる人だ。

まとめ

AtCoderは、日本語で気軽に競技プログラミングを始められる素晴らしいプラットフォームだ。アカウント登録からABCへの参加まで、ハードルは驚くほど低い。レーティングシステムで自分の成長が数値として見えるので、モチベーションを保ちやすいのも大きな魅力だ。

上達の道筋は明確で、ABCのA問題から始めて徐々にカテゴリを広げていけばよい。過去問とAtCoder Problemsを活用した日常練習を続ければ、灰色から茶色、そして緑色へと着実にステップアップできる。焦らず楽しみながら、1問ずつ解ける問題を増やしていこう。競技プログラミングの世界は、始めてみると思っていた以上に奥が深く、そしてとても楽しいものだ。

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