ホーム > カウンターオファーの扱い方 - 現職の引き止めにどう対応するか

カウンターオファーの扱い方 - 現職の引き止めにどう対応するか

この記事のまとめ

  • カウンターオファーを受諾した人の約半数は、1年以内に再び転職活動を始めるというデータがある
  • 年収アップの提示だけで判断するのは危険で、転職を決意した根本的な理由が解消されるかが鍵
  • カウンターオファーが出にくい退職交渉の進め方を知っておくと、双方にとってスムーズな移行が実現する

カウンターオファーとは何か

退職の意思を上司に伝えたとき、「給料を上げるから残ってくれないか」「希望するポジションに異動させるから考え直してほしい」と言われた経験がある人は少なくないだろう。これがいわゆるカウンターオファーだ。現職の企業が社員の離職を防ぐために、年収アップ、昇進、部署異動、勤務条件の変更といった条件改善を提示して引き止めようとする行為を指す。

カウンターオファーはエンジニアに対して特に出やすい。技術的な知識やプロジェクトの文脈を深く理解している社員が抜けると、チームの生産性が一時的に大きく落ちるからだ。後任の採用と教育にかかるコストを考えれば、年収を50万円や100万円上乗せしてでも引き留めるほうが企業にとっては合理的な判断になることが多い。

ただし、カウンターオファーが出たからといって「自分は会社に必要とされている」と安易に解釈するのは早計だ。多くの場合、カウンターオファーは会社側の短期的な損失を防ぐための対応であり、あなた個人への長期的なキャリア投資とは性質が異なる。冷静に自分の状況を分析し、感情に流されない判断をすることが重要だ。

カウンターオファーを受けたときの判断基準

カウンターオファーを提示されたとき、嬉しさと戸惑いが入り混じった感情になるのは当然だ。ここで重要なのは、転職を決意した当初の理由に立ち返ることだ。なぜ転職しようと思ったのか、その根本的な不満や課題がカウンターオファーによって本当に解決されるのかを冷静に考えてほしい。

年収が不満で転職を決意した場合、カウンターオファーで年収が上がれば問題は解決するように見える。しかし考えてみてほしい。辞めると言わなければ上げてもらえなかった給与を、なぜ日頃の評価で適正に反映してくれなかったのだろうか。次に年収を上げてもらうためにも、また転職をちらつかせなければならないのだとしたら、それは健全な雇用関係とは言い難い。

技術的な成長の停滞、プロジェクトへの不満、上司やチームとの人間関係、会社の方向性への疑問といった理由で転職を考えた場合は、カウンターオファーの内容がそれらの問題を根本から解消するものかどうかを見極める必要がある。部署異動の提案を受けたとしても、会社の組織文化そのものに不満があるなら、異動先でも同じ問題にぶつかる可能性が高い。判断に迷う場合は、信頼できる第三者(家族、メンター、転職エージェントなど)に相談するのもよい方法だ。

カウンターオファーを受諾した場合のリスク

カウンターオファーを受諾するとどうなるのか。海外の人事関連の調査データによると、カウンターオファーを受諾した社員の約50%が受諾後12か月以内に退職しているとされている。また、カウンターオファーを受諾した社員の約80%が18か月以内に退職するというデータもある。こうした数字は、カウンターオファーの効果が長続きしないことを如実に示している。

受諾後に退職率が高くなる理由はいくつかある。一つは、転職を考えた根本的な不満が解消されないケースが多いことだ。年収が上がっても、仕事の内容や組織の文化が変わらなければ、数か月もすれば同じ不満が再び頭をもたげてくる。もう一つは、「一度辞めようとした人」というレッテルが社内で貼られてしまうリスクだ。上司や同僚との関係にどこか溝ができ、重要なプロジェクトへのアサインや昇進の候補から外される可能性がある。

企業の立場で考えれば、退職の意思を示した社員は「いつまたいなくなるか分からない」存在だ。次に人員削減が必要になったとき、真っ先にリストアップされるのはカウンターオファーを受諾して残った社員かもしれない。企業が後任の採用をこっそり進めているケースもあり、準備が整った段階で配置転換や実質的な降格を言い渡されることもないとは言えない。カウンターオファーの受諾は、見た目ほど安全な選択肢ではないのだ。

カウンターオファーの辞退を伝える方法

カウンターオファーを受け取ったうえで、やはり転職する意思が変わらない場合、どのように辞退を伝えるかが次の課題になる。ここで大切なのは、相手の好意に対する感謝を示しつつ、明確に意思を伝えることだ。「ありがたいお話ですが、熟考した結果、やはり新しい環境で挑戦する決意は変わりません」というシンプルな表現で十分だ。

辞退の理由を長々と説明する必要はない。むしろ詳細に説明すればするほど、上司がそれぞれの理由に対して「それならこうするから」と追加の提案をしてくる余地を与えてしまう。転職先の具体的な条件を伝えるのも避けたほうがよい。「あちらはいくら出すのか」「うちもそれに合わせる」といった交渉に発展すると、話が泥沼化しやすい。決定事項として伝え、議論の余地を残さないのがスマートな対応だ。

辞退を伝えた後も、退職日までの期間は残っている。引き継ぎを丁寧に行い、現職のチームに迷惑をかけない姿勢を見せることが、カウンターオファーを辞退した後の最善のフォローになる。テック業界は意外と狭い世界で、前の会社の同僚とクライアントとして再会したり、将来の採用面接で元上司が面接官だったりすることもある。円満な関係を保つことは、自分のキャリアを守ることにもつながる。

カウンターオファーが出にくい退職交渉の進め方

そもそもカウンターオファーを受けること自体を避けたいと考える人も多いだろう。引き止めを受けると断るのが辛いし、退職交渉が長引く原因にもなる。カウンターオファーが出にくい退職の伝え方にはいくつかのポイントがある。

退職の意思を伝える際に「迷っている」という印象を与えないことが大前提だ。「実は転職を考えているのですが」という切り出し方では、上司は「まだ引き留める余地がある」と判断する。「転職先が決まりまして、退職日のご相談をさせていただきたいのですが」という形で、すでに決定事項であることを冒頭で明確にするのが効果的だ。

退職理由にネガティブな要素を出さないことも重要だ。「給与に不満がある」「この仕事にやりがいを感じない」といった理由を伝えると、会社側はその不満を解消するカウンターオファーを用意しやすくなる。代わりに、「新しい分野に挑戦したい」「自分の専門性をさらに深められる環境を見つけた」など、現職では実現が難しいポジティブな理由を伝えることで、カウンターオファーの出しようがない状況を作ることができる。

退職の意思を伝えるタイミングも考慮に値する。ボーナス支給直後や年度末のタイミングでは、会社側も人事異動の調整がしやすく、引き止めよりもスムーズな移行に意識が向きやすい。繁忙期の真っ只中に退職を切り出すと、「今抜けられては困る」という感情的な反応を引き出しやすいので注意が必要だ。

カウンターオファーが出たら考えるべきキャリアの本質

カウンターオファーを提示される状況は、自分のキャリアについて深く考えるよい機会でもある。転職を決意した動機、現職での満足度、5年後10年後にどのようなエンジニアでいたいかといった問いに向き合うことで、目の前のオファーの数字に振り回されない判断ができるようになる。

年収は確かに重要な要素だが、キャリアの中で本当に価値があるのは、技術的な成長機会、信頼できるチームメンバーとの協働、自分が情熱を持てるプロダクトへの関わりといった、お金では測れない部分だ。カウンターオファーで年収が100万円上がったとしても、技術的に停滞した環境で過ごす1年間は、市場価値という観点ではむしろマイナスになりかねない。

逆に、現職で得られる成長機会がまだ十分にあると気づくこともある。転職を考えるきっかけが一時的な感情や特定のプロジェクトへの不満だった場合、カウンターオファーをきっかけに上司と本音の対話をすることで、現職でのキャリアパスが見えてくることもあるだろう。大切なのは、カウンターオファーの受諾も辞退も、その場の感情ではなく、自分のキャリア戦略に基づいた意思決定であることだ。

よくある質問と実践的なアドバイス

カウンターオファーに関して、エンジニアからよく聞かれる質問に答えておきたい。「転職先にカウンターオファーを受けたことを伝えるべきか」という質問については、基本的に伝える必要はない。転職先の企業が知りたいのはあなたの入社意思の固さであり、カウンターオファーの存在を伝えることで「まだ迷っているのか」と不安を与えてしまうリスクがある。

「カウンターオファーの金額を使って転職先と年収交渉してもよいか」という質問もよくあるが、これは慎重に判断すべきだ。カウンターオファーの金額を交渉材料にすること自体は違法ではないが、転職先から「お金で動く人」という印象を持たれるリスクがある。年収交渉は自分の市場価値やスキルに基づいて行うのが正攻法であり、カウンターオファーの金額はあくまで参考情報として自分の中に留めておくのが無難だ。

「退職を撤回した後、再度転職活動をしてもよいか」という問いに対しては、もちろんよい。ただし、カウンターオファーを受諾して短期間で再び退職するのは、次の転職先からの印象が良くない。受諾を決めたなら、少なくとも1年は現職でしっかりと成果を出してから動いたほうが、キャリアにとってはプラスになるだろう。

まとめ

カウンターオファーは一見すると魅力的に映るが、統計データが示すとおり、受諾した多くの人が短期間で再び転職活動に戻っている。転職を決意した根本的な理由がカウンターオファーで本当に解消されるかを冷静に見極めることが、後悔のない判断につながる。

辞退する場合は感謝を伝えつつ明確な意思を示し、引き継ぎを丁寧に行うことで円満な関係を保とう。そもそもカウンターオファーを出されにくい退職交渉の進め方を身につけておけば、双方にとって負担の少ないスムーズな移行が実現できる。

IT転職で年収アップを実現しませんか?

エンジニア・プログラマー向け転職エージェントで、理想のキャリアを手に入れましょう。

おすすめ転職サイトを見る