エンジニア転職の技術面接では、コーディング課題やコードレビューが実施されることが増えています。実は多くの候補者が、技術力は十分あるにも関わらず、ちょっとした見落としでマイナス評価を受けてしまうケースがあるのです。
私自身、過去に技術面接を受ける側として、そして現在は面接官として多くのコードを見てきました。その経験から言えるのは、「良いコード」を書くことと同じくらい「NGパターンを避ける」ことが重要だということです。特に限られた時間の中で評価される転職面接では、減点されるポイントを事前に把握しておくことが合否を分けることもあります。
そういえば、先日の採用面接でも、優秀な技術力を持つ候補者が基本的なコーディング規約を無視したために評価を下げてしまったケースがありました。技術的には素晴らしいソリューションだったのですが、変数名が適当だったり、エラーハンドリングが不十分だったりと、実務では致命的になりかねない問題が散見されたのです。
エンジニア転職の技術面接でコードレビューが重視される理由
エンジニアの採用プロセスにおいて、コードレビューや技術課題の提出が一般的になってきた背景には、いくつかの理由があります。履歴書や職務経歴書だけでは判断できない実践的なスキルを確認できること、そして何より「一緒に働きたいエンジニアかどうか」を見極められることが大きな要因です。
面接官がコードを見る際は、単に動作するかどうかだけでなく、保守性や可読性、チーム開発を意識したコーディングができているかを重点的にチェックしています。例えば、複雑なアルゴリズムを実装できる技術力があっても、他のメンバーが理解できないようなコードを書いてしまうエンジニアは、チーム開発において問題となる可能性があるのです。
さらに、コードレビューでは候補者の思考プロセスや問題解決アプローチも見られています。どのようにして問題を分解し、どんな順序で実装を進めたのか。エッジケースをどう考慮したのか。これらの要素は、実際の業務でエンジニアがどのようにタスクに取り組むかを予測する重要な手がかりとなります。
NGパターン1: 変数名・関数名の命名が不適切
コードレビューで最も頻繁に指摘される問題の一つが、不適切な命名です。変数名や関数名は、コードの可読性に直接影響する重要な要素です。特に転職面接では、限られた時間で自分のコードを理解してもらう必要があるため、分かりやすい命名は必須といえるでしょう。
よくある失敗例として、a
、b
、temp
、data
といった意味のない変数名を使ってしまうケースがあります。また、日本語をローマ字表記にしたtsuika
(追加)やsakujo
(削除)といった命名も避けるべきです。英語での命名が基本ですが、適切な英単語が思いつかない場合は、少し長くなっても意味が明確な名前を選ぶことが重要です。
関数名についても同様で、doProcess()
やhandleData()
といった曖昧な名前ではなく、calculateTotalPrice()
やvalidateEmailFormat()
のように、その関数が何をするのか一目で分かる名前を付けるべきです。良い命名は、コメントを書く必要性を減らし、コード自体をドキュメントとして機能させることができます。
NGパターン2: エラーハンドリングの不足
実務経験の浅いエンジニアが陥りがちなミスとして、エラーハンドリングの不足があります。技術課題では「正常に動作すること」に注力するあまり、例外処理やエラーケースの考慮が疎かになってしまうことがよくあります。しかし、実際の開発現場では、エラーハンドリングの品質がシステムの安定性を大きく左右します。
例えば、外部APIを呼び出す処理で、ネットワークエラーやタイムアウトを考慮していない。ファイル操作で、ファイルが存在しない場合やアクセス権限がない場合の処理が実装されていない。データベース接続で、接続失敗時のリトライ処理がない。これらはすべて、本番環境では深刻な問題となる可能性があります。
適切なエラーハンドリングには、エラーの種類に応じた処理の分岐、ユーザーへの適切なフィードバック、ログ出力による問題の追跡可能性の確保などが含まれます。面接官は、候補者がこれらの実務的な観点を持っているかどうかを、コードから読み取ろうとしているのです。
NGパターン3: コメントが適切でない
コメントに関する問題も、コードレビューでよく指摘されるポイントです。興味深いことに、コメントは「多すぎても少なすぎても」問題となります。まったくコメントがないコードは、複雑なロジックの理解を困難にしますが、逆に自明なコードに対する冗長なコメントは、コードの可読性を損なう原因となります。
悪いコメントの典型例として、「変数を初期化する」「ループを開始する」といった、コードを見れば分かることを説明するものがあります。一方で、なぜそのような実装にしたのか、どのような制約があるのか、といった「意図」を説明するコメントは非常に有用です。
また、TODOコメントやFIXMEコメントを残したままにすることも避けるべきです。技術課題では完成度の高いコードを提出することが期待されているため、未完成な印象を与えるコメントは削除するか、実装を完了させるべきでしょう。コメントは、将来の自分や他の開発者への重要なメッセージであることを意識して書く必要があります。
NGパターン4: インデントや書式が統一されていない
コードの書式やインデントの統一性は、一見些細なことのように思えるかもしれませんが、実は候補者の開発経験や品質意識を判断する重要な指標となります。タブとスペースが混在している、インデントの深さがバラバラ、括弧の位置が統一されていないといった問題は、チーム開発の経験不足を示唆する可能性があります。
実際の開発現場では、コーディング規約に従うことは基本中の基本です。しかし、技術面接の課題では、緊張や時間制限の中で、こういった基本的な部分が疎かになってしまうことがあります。特に、複数の言語を扱える候補者の場合、言語ごとの慣習を混同してしまうケースも見られます。
この問題を避けるためには、使用する言語の一般的なコーディング規約を事前に確認し、できればlinterやformatterを使用することをお勧めします。Visual Studio CodeやIntelliJ IDEAなどの最新のIDEには、自動フォーマット機能が備わっているため、これらを活用することで、書式の統一性を保つことができます。
NGパターン5: パフォーマンスを考慮していない
技術課題では、「動けばいい」という考えで実装してしまいがちですが、パフォーマンスへの配慮も重要な評価ポイントです。特に、データ量が増えた場合の計算量を考慮していないコードは、実務では大きな問題となる可能性があります。
よくある例として、ネストしたループによるO(n²)やO(n³)の処理を、より効率的なアルゴリズムで置き換えられるケースがあります。また、データベースクエリでN+1問題を引き起こすような実装や、不必要なメモリ使用、重複した計算の実行なども、パフォーマンス意識の欠如を示す兆候となります。
ただし、過度な最適化も問題です。「早すぎる最適化は諸悪の根源」という格言があるように、可読性を犠牲にしてまで最適化する必要はありません。重要なのは、パフォーマンスのボトルネックになりうる箇所を認識し、必要に応じて最適化できることを示すことです。
NGパターン6: テストコードがない・不十分
最近の技術面接では、テストコードの作成を求められることが増えています。テストコードは、候補者が品質保証にどれだけ意識を向けているか、そして実装の意図を正しく理解しているかを判断する良い指標となるからです。
テストコードに関する問題として、そもそもテストを書いていない、正常系のテストしか書いていない、テストケースが不十分である、といったものがあります。特に、エッジケースや異常系のテストが欠けていると、実務での問題発見能力に疑問を持たれる可能性があります。
良いテストコードは、実装の仕様を明確に示すドキュメントとしても機能します。何をテストしているのか分かりやすい名前を付け、AAA(Arrange-Act-Assert)パターンに従って構造化し、必要十分なアサーションを含めることが重要です。また、テストの実行時間にも配慮し、高速に実行できるユニットテストを中心に構成することも評価されるポイントです。
NGパターン7: セキュリティへの配慮不足
Webアプリケーションの開発課題では、セキュリティへの配慮も重要な評価ポイントとなります。SQLインジェクション、XSS(クロスサイトスクリプティング)、CSRF(クロスサイトリクエストフォージェリ)といった基本的な脆弱性への対策が実装されているかどうかは、候補者のセキュリティ意識を測る指標となります。
よくある問題として、ユーザー入力をそのままSQLクエリに組み込んでしまう、HTMLに出力する際にエスケープ処理を行わない、認証・認可の実装が不適切である、といったものがあります。これらは基本的なセキュリティ知識があれば防げる問題ですが、意外と多くの候補者が見落としてしまいます。
セキュリティは後から追加するものではなく、設計段階から考慮すべきものです。フレームワークが提供するセキュリティ機能を適切に活用し、必要に応じて追加の対策を実装する。このような姿勢を示すことで、実務でも信頼できるエンジニアであることをアピールできます。
NGパターン8: 可読性より巧妙さを優先
技術力をアピールしようとするあまり、必要以上に複雑で巧妙なコードを書いてしまうことがあります。ワンライナーで複雑な処理を実現したり、高度な言語機能を多用したりすることで、かえってコードの可読性を損なってしまうケースです。
実際の開発現場では、「賢いコード」よりも「分かりやすいコード」の方が価値があります。チームメンバー全員が理解でき、保守できるコードこそが良いコードなのです。特殊な記法や難解なアルゴリズムを使う場合は、その理由を明確にし、適切なコメントで説明することが重要です。
シンプルで直感的なコードを書くことは、決して技術力の低さを示すものではありません。むしろ、複雑な問題をシンプルに解決できることこそ、真の技術力の表れといえるでしょう。面接官も、メンテナンス性の高いコードを書ける候補者を高く評価する傾向があります。
NGパターン9: Git利用時のコミットが適切でない
技術課題をGitリポジトリで提出する場合、コミット履歴も評価の対象となることがあります。すべての変更を1つの巨大なコミットにまとめてしまったり、意味のないコミットメッセージを使用したりすることは、バージョン管理への理解不足を示してしまいます。
良いコミット履歴は、開発の過程を物語るストーリーとなります。機能ごとに適切に分割されたコミット、分かりやすいコミットメッセージ、必要に応じたブランチの活用などは、実務でのGit運用能力を示す良い指標となります。
また、.gitignore
ファイルの設定や、不要なファイルをコミットしないことも重要です。IDEの設定ファイルやビルド成果物、個人的なメモファイルなどが含まれていると、プロフェッショナルさに欠ける印象を与えてしまう可能性があります。
NGパターン10: 要件を正しく理解していない
最後に、そして最も重要なNGパターンは、与えられた要件を正しく理解せずに実装してしまうことです。どんなに技術的に優れたコードを書いても、要求されたものと異なる実装では意味がありません。
要件の誤解は、仕様書の読み込み不足、思い込みによる実装、エッジケースの考慮不足などから生じます。特に、「多分こういうことだろう」という推測で実装を進めてしまうことは危険です。実務では、不明な点があれば確認することが当たり前ですが、面接の場合は質問の機会が限られることもあります。
このような問題を避けるためには、要件を注意深く読み、実装前に全体の設計を考え、テストケースを先に考えることが有効です。また、READMEファイルなどで、自分の理解した要件と実装方針を明記することで、たとえ誤解があったとしても、思考プロセスを評価してもらえる可能性があります。
まとめ
エンジニア転職の技術面接におけるコードレビューでは、動作するコードを書くことはもちろん重要ですが、それ以上に「実務で通用するコード」を書けることが評価されます。今回紹介した10のNGパターンを意識することで、面接官に良い印象を与えることができるでしょう。
これらのポイントは、転職活動だけでなく、日常の開発業務でも重要な要素です。常に意識して実践することで、より良いエンジニアとして成長できるはずです。技術面接は、自分のスキルを客観的に見直す良い機会でもあります。この記事を参考に、ぜひ自信を持って技術面接に臨んでください。
転職活動を成功させるためには、技術力だけでなく、適切なサポートも重要です。エンジニア転職に特化したエージェントサービスを活用することで、より効果的な面接対策が可能になります。あなたの転職が成功することを心から願っています。