この記事のまとめ
- エンジニアが副業から法人化まで段階的に独立を進めることで、年収を大幅に向上させることが可能
- 税務最適化により、個人事業主から法人への切り替えタイミングで年間数十万円の節税効果を実現できる
- 法人設立により社会的信用度が向上し、大型案件の受注や銀行融資の獲得がしやすくなる
エンジニアとして働いていると、「もっと収入を増やしたい」「将来的に独立したい」と考える瞬間があるのではないでしょうか。実は多くの技術者が、副業から始めて最終的に法人化を果たし、年収を3倍以上に向上させています。
私自身も転職支援を通じて、数多くのエンジニアの独立成功事例を見てきました。成功するエンジニアには共通した戦略があり、それは段階的に収入源を多様化し、適切なタイミングで税務戦略を最適化することです。
この記事では、エンジニアが副業から法人設立まで進む実践的なロードマップを詳しく解説します。税務の専門知識や経営戦略まで、技術者特有の課題を解決しながら独立を成功させる方法をお伝えします。
エンジニア独立の現状:なぜ今が最適なタイミングなのか
現在のIT業界では、フリーランスエンジニアや個人事業主として活動する技術者が急増しています。実際に、私がサポートしてきたエンジニアの中には、会社員時代の年収400万円から独立後に年収1200万円を達成した方もいらっしゃいます。
ところで、この背景には何があるのでしょうか。最も大きな要因は、リモートワークの普及とデジタルトランスフォーメーション(DX)の加速です。企業が外部の専門技術者を求める機会が増え、エンジニアにとって独立しやすい環境が整ったのです。
それに加えて、クラウドサービスの発達により、個人でも企業レベルのシステム開発が可能になりました。Amazon Web ServicesやGoogle Cloud Platformなどを活用すれば、少ない初期投資で高品質なサービスを提供できます。これらの環境変化が、エンジニアの独立を後押ししているのです。
副業解禁の波がエンジニアにもたらす機会
近年、多くの企業が副業を解禁しています。厚生労働省の「副業・兼業の促進に関するガイドライン」の改定もあり、エンジニアが本業と並行して個人の技術力を活かす機会が増えています。
この流れは、エンジニアにとって絶好のチャンスといえます。まず本業で安定収入を確保しながら、副業で新しい技術領域に挑戦したり、将来の独立に向けた準備ができるからです。実は多くの成功事例では、いきなり会社を辞めて独立するのではなく、副業から段階的にシフトしているケースがほとんどなのです。
特にエンジニアの場合、プログラミングやシステム設計などの技術的スキルは、そのまま副業や独立後のビジネスに直結します。営業や経理など他の職種とは異なり、個人の技術力だけで価値を提供できる点が大きな強みになります。
年代別に見るエンジニア独立のベストタイミング
20代のエンジニアは技術習得への意欲も高く、失敗してもやり直しがきくため、積極的に副業から始めることをおすすめします。特に20代後半であれば、本業である程度の実績を積んでいるため、その経験を活かした案件を受注しやすくなります。実際に私が知る成功事例の多くは、27-28歳頃から副業を開始し、30代前半で法人化を果たしています。
30代のエンジニアにとっては、キャリアの転換期として独立を検討する絶好の機会です。技術力と経験のバランスが取れており、クライアントからの信頼も得やすい年代といえるでしょう。また家族がいる場合でも、副業から始めて段階的に独立することで、リスクを最小限に抑えながらキャリアチェンジが可能です。
40代以降のエンジニアの場合、豊富な経験と人脈を活かした高単価案件に特化した独立戦略が有効です。マネジメント経験や業界知識を組み合わせることで、技術コンサルタントとしての地位を確立できる可能性が高まります。
エンジニア独立を支える3つのトレンド
第一に、企業のIT投資拡大により外部パートナーへの需要が急増していることです。総務省の情報通信白書によると、企業のIT投資額は年々増加傾向にあり、特に中小企業では内製化よりも外部委託を選択するケースが増えています。
第二に、プロジェクト型の働き方が主流になりつつあることが挙げられます。従来の終身雇用制度から、スキルベースの働き方への転換が進んでおり、エンジニアにとって独立しやすい土壌が形成されています。
第三に、税制面でも個人事業主や法人への優遇措置が拡充されており、独立による経済的メリットが以前よりも大きくなっています。特に2023年からのインボイス制度開始に伴い、適切な準備をしたフリーランスエンジニアにとっては、かえって競争優位性を獲得する機会となっています。
エンジニア独立の段階的ロードマップ:副業から法人化まで
エンジニアが安全に独立を成功させるためには、段階的なアプローチが重要です。いきなり会社を辞めて独立するのではなく、リスクを最小限に抑えながら着実に収入基盤を構築していく戦略をお伝えします。
成功するエンジニアの多くは、明確な段階を踏んで独立を実現しています。第1段階では本業を続けながら副業で実績を積み、第2段階で個人事業主として本格的な活動を開始し、第3段階で法人化により事業を拡大します。
ここでは、それぞれの段階で必要な準備や注意点について詳しく解説していきます。各段階の目安期間や収入目標、そして次の段階に進むための条件も具体的に示しますので、あなたの現在の状況に合わせて活用してください。
第1段階:副業エンジニアとしてのスタート
副業エンジニアとしての第一歩は、本業で培った技術を活かせる案件から始めることです。この段階では月収5-15万円程度を目標とし、6ヶ月から1年程度継続します。重要なのは、単に収入を得ることではなく、個人として顧客との直接取引経験を積むことです。
副業を始める際の最初の壁は「案件をどこで見つけるか」という問題です。ところが意外にも、最初の案件は身近なところから見つかることが多いのです。前職の同僚や友人の紹介、地域の中小企業のIT化支援など、人脈を活用した営業が効果的です。
クラウドソーシングサイトも活用できますが、最初は単価が低めになることを覚悟する必要があります。しかし、評価を積み重ねることで徐々に高単価案件にアクセスできるようになります。特にランサーズやクラウドワークスでは、継続案件を獲得することが収入安定化の鍵となります。
この段階で注意すべきは、本業との兼ね合いです。会社の就業規則を確認し、必要に応じて上司に相談することをお勧めします。また、確定申告の準備として、副業収入と経費の記録を始めることも重要です。
副業期間中に身につけるべきスキル
副業期間は技術力向上の絶好の機会でもあります。本業では触れることのない新しい技術領域に挑戦したり、フロントエンドとバックエンドの両方を経験したりすることで、市場価値を高めることができます。
特に重要なのは、顧客との直接コミュニケーション能力です。要件定義から納品まで、一人で完結させる経験は、将来の独立において大きな財産となります。技術的な説明を非エンジニアにも分かりやすく伝える能力や、プロジェクトスケジュールの管理能力なども、この時期に培っておきましょう。
また、見積もり作成や契約書の理解など、ビジネス面でのスキルも重要です。最初は戸惑うかもしれませんが、これらの経験が次の段階での成功につながります。
第2段階:個人事業主としての本格始動
副業で安定した実績を積んだ後、個人事業主として本格的な活動を開始します。この段階の目標は月収30-50万円程度で、期間は1-2年を想定します。ここで重要になるのが、税務面での最適化と事業基盤の構築です。
個人事業主になるメリットは、青色申告により最大65万円の特別控除を受けられることです。また、事業に関する経費も幅広く計上できるため、実質的な税負担を大きく軽減できます。パソコンやモニター、書籍代、セミナー参加費、自宅の一部を事務所として使用している場合の家事関連費なども、適切な割合で経費計上が可能です。
この段階では、継続的な案件獲得のための営業活動が重要になります。既存クライアントからのリピート案件や紹介案件を中心としつつ、新規開拓も積極的に行う必要があります。特にエンジニアの場合、技術的な専門性を活かした特化戦略が効果的です。
たとえば、「React専門のフロントエンドエンジニア」や「AWS構築専門のインフラエンジニア」など、明確なポジショニングを確立することで、高単価案件を継続的に受注できるようになります。
個人事業主期間での重要な準備項目
個人事業主として活動する期間は、将来の法人化に向けた準備期間でもあります。特に重要なのは、財務管理体制の確立です。会計ソフトを導入し、日々の収支を正確に記録する習慣を身につけましょう。freeeやマネーフォワードクラウドなど、個人事業主向けのサービスが充実しています。
また、事業拡大に向けた人脈形成も重要な要素です。同業者との交流、クライアント企業の経営層とのリレーション構築、異業種交流会への参加など、様々なチャネルを通じてネットワークを広げていきましょう。
契約書や見積書のフォーマット整備、請求書発行システムの構築など、事務処理の効率化も忘れずに行います。これらの業務システムは、法人化後もそのまま活用できるため、この時期にしっかりと整備しておくことが重要です。
第3段階:法人化による事業拡大
個人事業主として年商800万円を超えてきたら、法人化を検討するタイミングです。法人化により税務面でのメリットを享受しつつ、社会的信用度の向上と事業拡大基盤を構築します。
法人化の最大のメリットは税務面での優遇です。個人事業主の場合、所得税率は最大45%まで上昇しますが、法人税率は中小企業であれば年800万円以下の所得に対して15%、800万円超の部分でも23.2%に留まります。年収1000万円を超える場合、法人化により年間100万円以上の節税効果を期待できます。
加えて、法人であれば社会保険の加入義務が生じますが、これは実は大きなメリットでもあります。厚生年金への加入により将来の年金額が増え、健康保険の傷病手当金なども受給できるようになります。また、小規模企業共済に加入することで、さらに税務面での優遇を受けながら退職金の準備も可能です。
法人化により銀行との関係も大きく改善します。個人事業主の場合、事業資金の融資は制限的でしたが、法人になることで設備投資資金や運転資金の調達がしやすくなります。特に日本政策金融公庫の新創業融資制度などは、スタートアップ企業に有利な条件となっています。
法人化のタイミングと手続きの流れ
法人化の適切なタイミングは、年商だけでなく利益率も考慮して判断する必要があります。一般的に、年商800万円を超え、かつ営業利益率が20%以上を安定して確保できている状態が理想的です。また、今後1-2年で事業拡大(スタッフ雇用や大型案件受注)を計画している場合も、法人化を検討すべきタイミングといえます。
法人設立の手続きは、定款作成、公証人による定款認証、登記申請の順序で進めます。株式会社の場合、設立費用は約25万円程度(司法書士に依頼する場合は追加で10-15万円)が必要です。最近ではオンライン申請も可能になり、手続きの簡素化が進んでいます。
重要なのは、法人設立前に税理士との相談を行うことです。税理士を早期に関与させることで、設立時から最適な税務戦略を構築できます。月次顧問料は3-5万円程度が相場ですが、その価値は十分にあると考えられます。
事業成長戦略:一人法人から組織化まで
法人化後の次のステップは、事業の組織化と拡大戦略の実行です。最初は一人法人として運営し、事業が安定してきたら徐々にスタッフを雇用していく段階的なアプローチが安全です。
一人法人の期間では、まず法人としての基盤固めに専念します。法人口座の開設、会計システムの導入、顧問税理士との定期的な面談体制の確立など、経営インフラの整備が重要です。また、法人名義での営業活動により、これまでアプローチできなかった大企業との取引機会も増えてきます。
事業拡大のタイミングは慎重に見極める必要があります。人件費は固定費として継続的に発生するため、安定した売上基盤がない状態での採用は危険です。一般的には、現在の売上の1.5倍程度の案件見込みができてから、初回の人材採用を検討することを推奨します。
採用においては、技術力だけでなく、小規模組織でのマルチタスク対応能力を重視しましょう。特に最初の1-2名は、技術と営業の両方に対応できる人材が理想的です。また、リモートワーク前提での採用により、全国から優秀な人材を確保できる点も、IT企業の大きな強みといえます。
持続可能な成長のための重要指標
法人として持続的に成長するためには、売上だけでなく、利益率、キャッシュフロー、顧客満足度などの複数指標をバランスよく管理する必要があります。特にエンジニア系の法人では、技術的負債の管理も重要な経営指標となります。
顧客の多様化も成長戦略の重要な要素です。特定のクライアントに依存しすぎることなく、複数の収入源を確保することで、事業の安定性を高めます。理想的には、最大顧客でも全体売上の30%以下に留めることを目標としましょう。
また、技術トレンドへの対応も継続的に必要です。AIやブロックチェーン、量子コンピューティングなど、新興技術分野への投資により、競合他社との差別化を図ることができます。
エンジニア独立による収入拡大の現実的なシミュレーション
実際にエンジニアが独立することで、どの程度の収入向上を見込めるのでしょうか。私がサポートしてきた事例を基に、具体的な数値シミュレーションをお示しします。
会社員時代に年収600万円だったシステムエンジニアの場合を例に取ると、副業期間(月10万円程度)を経て個人事業主として独立した初年度は年収720万円、2年目には年収960万円、法人化後の3年目には年収1,400万円を達成したケースがあります。
段階 | 期間 | 月収 | 年収 | 税引後年収 |
---|---|---|---|---|
会社員 | - | 50万円 | 600万円 | 480万円 |
副業期間 | 6ヶ月 | +10万円 | 660万円 | 520万円 |
個人事業主(初年度) | 1年目 | 60万円 | 720万円 | 580万円 |
個人事業主(2年目) | 2年目 | 80万円 | 960万円 | 750万円 |
法人化後 | 3年目以降 | 120万円 | 1,440万円 | 1,100万円 |
この数値は決して非現実的ではありません。エンジニアの技術力と適切な事業戦略を組み合わせることで、十分に達成可能な目標です。重要なのは、段階的にステップアップしていくことと、各段階で適切な税務戦略を取ることです。
専門分野別の収入水準
専門分野によって、独立後の収入水準は大きく異なります。特に高単価が期待できるのは、AI・機械学習、ブロックチェーン、クラウドインフラ、セキュリティなどの領域です。これらの分野では、フリーランスとして月額150-300万円の案件も珍しくありません。
一方、Web制作やモバイルアプリ開発などの分野では、競合が多いため差別化が重要になります。デザイン力やUX設計能力を併せ持つフルスタックエンジニアとしてポジショニングすることで、高単価案件の獲得が可能です。
インフラ・DevOps分野では、企業のクラウド移行需要が高まっており、AWS、Azure、GCPの認定資格を持つエンジニアに対する需要が急増しています。特に大企業のDXプロジェクトでは、月額200万円を超える案件も存在します。
税務最適化戦略:個人から法人まで完全攻略
エンジニアの独立成功において、税務戦略は収入向上と同じくらい重要な要素です。適切な税務知識を身につけることで、年間数十万円から数百万円の節税効果を実現できます。
個人事業主として活動する期間では、青色申告による65万円の特別控除が基本戦略となります。これに加えて、事業に関連する経費を漏れなく計上することで、課税所得を大幅に圧縮できます。パソコンやソフトウェア、書籍、セミナー参加費はもちろん、自宅兼事務所の家賃や光熱費も適切な按分により経費計上が可能です。
特にエンジニアの場合、技術学習のための投資が多いため、これらを適切に経費処理することで大きな節税効果を得られます。また、小規模企業共済への加入により、年間最大84万円の所得控除を受けながら、将来の退職金準備も同時に行うことができます。
法人化後の税務戦略はさらに複雑になりますが、その分メリットも大きくなります。所得の分散、退職金の活用、生命保険による節税など、個人では不可能な様々な手法を活用できるようになります。
個人事業主期間の節税テクニック
個人事業主として最も効果的な節税手法は、経費の適切な計上です。エンジニアの場合、以下のような項目が経費として認められます。
まず、直接的な事業経費として、パソコンやモニター、キーボードなどのハードウェア、開発ツールやクラウドサービスの利用料、ドメイン・サーバー費用などがあります。これらは100%事業経費として計上可能です。
次に、自己投資関連として、技術書籍、オンライン学習サービス、セミナー・カンファレンス参加費、資格取得費用なども経費計上できます。エンジニアの場合、継続的な学習が事業に直結するため、これらの費用は正当な事業経費として認められやすい傾向にあります。
自宅を事務所として使用している場合の家事関連費も重要な節税ポイントです。専用の作業スペースがある場合、家賃や光熱費の一部を経費として計上できます。按分割合は使用面積や使用時間に基づいて合理的に決定する必要がありますが、通常20-30%程度が妥当な範囲とされています。
法人化タイミングの税務シミュレーション
法人化の最適なタイミングは、税務面から見ると年所得800万円前後が一つの目安となります。個人事業主の場合、所得税と住民税を合わせた実効税率は累進課税により所得が増えるほど高くなりますが、法人税率は比較的フラットです。
年所得600万円の場合、個人事業主なら実効税率約30%(約180万円)、法人なら約25%(約150万円)となり、年間約30万円の節税効果が期待できます。年所得1000万円になると、この差はさらに拡大し、年間100万円以上の節税効果を実現できます。
ただし、法人化により社会保険料の負担が発生することも考慮する必要があります。厚生年金や健康保険の事業主負担分を含めると、年間60-80万円程度の追加負担となります。しかし、これらは将来の年金給付増加や傷病手当金などの保障拡充というメリットもあるため、単純な負担増とは考えるべきではありません。
社会保険戦略:個人事業主から法人への最適な移行
エンジニアの独立において見落としがちなのが、社会保険制度の活用です。適切な社会保険戦略により、将来のリスクに備えながら、現在の税負担も軽減できます。
個人事業主の期間では、国民年金と国民健康保険に加入することになります。国民年金は定額ですが、国民健康保険料は前年の所得に応じて決まるため、収入が増加すると保険料負担も大きくなります。年収800万円の個人事業主の場合、国民健康保険料は年間約60万円程度になることも珍しくありません。
この状況を改善する一つの方法が、法人化による厚生年金・健康保険への加入です。法人の役員として厚生年金に加入することで、将来の年金受給額を大幅に増やすことができます。また、健康保険では傷病手当金や出産手当金なども受給できるようになり、リスク保障が充実します。
特に注目すべきは、法人の場合、社会保険料の半額を法人が負担するため、個人の実質負担を軽減できることです。さらに、法人が負担した社会保険料は全額経費として計上できるため、税務面でもメリットがあります。
小規模企業共済の活用による節税効果
個人事業主・法人経営者ともに活用できる制度として、小規模企業共済があります。この制度は「経営者の退職金制度」とも呼ばれ、月額1,000円から70,000円まで(年間最大84万円)の掛金を拠出でき、全額が所得控除の対象となります。
年収800万円の個人事業主が月額7万円(年間84万円)を拠出した場合、所得税・住民税合わせて約25万円の節税効果を得られます。さらに、共済金の受取時も退職所得として優遇税制の適用を受けられるため、非常に効率的な資産形成手段といえます。
法人化後も継続して活用でき、特に一人法人の場合は退職金制度の代替として機能します。20年以上加入していれば、拠出元本を上回る共済金を受け取れる可能性が高く、長期的な資産形成戦略として極めて有効です。
生命保険を活用した法人の節税戦略
法人化後の高度な節税戦略として、生命保険の活用があります。法人契約の生命保険は、一定の条件下で保険料を経費として計上しながら、将来の退職金原資を積み立てることができる優れた制度です。
特に定期保険や逓増定期保険を活用することで、現在の税負担を軽減しながら、将来的には保険の解約返戻金を退職金として受け取ることができます。退職金は所得税法上優遇されており、長期勤続による退職所得控除により、大部分が非課税となる可能性があります。
ただし、2019年の税制改正により、保険商品による節税効果は以前ほど大きくなくなっています。それでも、リスク保障と節税を両立させる手段として、依然として有効な選択肢といえるでしょう。
法人設立の実務:手続きから運営体制構築まで
法人設立は複雑に見えますが、適切な準備により滞りなく進めることができます。株式会社設立の基本的な流れと、IT企業特有の注意点について詳しく解説します。
法人設立の第一段階は、会社の基本事項を決定することです。商号(会社名)、事業目的、本店所在地、資本金額、役員構成などを検討します。特にIT企業の場合、事業目的は将来の事業展開を見据えて幅広く記載することが重要です。「ソフトウェアの開発・販売・保守」「情報処理サービス業」「システム開発・運用・保守」「コンサルティング業」など、関連する事業領域を漏れなく記載しましょう。
資本金額については、許認可が不要な一般的なIT事業であれば100万円程度で十分です。ただし、クライアントとの取引において信用面を重視する場合は、300-500万円程度に設定することも検討に値します。現在は資本金1円でも会社設立は可能ですが、あまりに少額では取引先からの信頼を得にくい場合があります。
定款作成では、将来の事業拡大や資金調達を見据えた条項を盛り込むことが重要です。特に株式の発行に関する条項や、取締役会設置の有無、監査役設置の有無などは、後から変更する場合に登記費用が発生するため、慎重に検討しましょう。
設立後の運営体制構築
法人設立後は、適切な運営体制の構築が成功の鍵となります。まず優先すべきは、会計・税務体制の整備です。法人は個人事業主と異なり、複式簿記による帳簿作成と法人税申告が必要となるため、専門知識が不可欠です。
税理士との顧問契約は必須と考えるべきでしょう。月額3-5万円程度の費用はかかりますが、適切な税務アドバイスにより、その何倍もの節税効果を期待できます。また、税務調査対応や複雑な税制改正への対応なども含めると、費用対効果は十分に見合います。
銀行口座の開設も重要な手続きの一つです。近年、マネーロンダリング対策の強化により、法人口座の開設審査が厳格化しています。事業計画書や取引先との契約書、オフィスの賃貸契約書など、事業実態を証明する書類を準備しておくことが重要です。
労務管理についても、将来の従業員雇用を見据えた準備が必要です。就業規則の整備、労働保険・社会保険の加入手続き、給与計算システムの導入など、人事労務インフラの整備を段階的に進めていきましょう。
【例文あり】志望動機を明確にしておく
未経験からIT業界への転職を成功させるために、志望動機の内容はじっくり考えて準備しておきましょう。アピールできる専門的なスキルがないからこそ、「なぜIT業界で働きたいのか」という理由を明確に伝えると、採用につながりやすくなります。押さえておきたいポイントは、下記のとおりです。
- 身につけたいスキルや目指すポジションなど目標を伝える
- 仕事への興味や関心を積極的に伝えて入社意欲の高さを示す
- 自分自身のエピソードを盛り込む
3つのポイントを基に、職種別の例文を2つ紹介します。
プログラマー
【例文】 現在はものづくりを行う会社で働いておりますが、アイデアを1から形にしていくことにやりがいを感じたため、プログラマーを希望いたしました。
現在はJavaやPythonを学んでおり、入社後も業務内容に応じて使用できる言語を増やしていく所存です。より高度なスキルを身につけ、将来的にはシステムエンジニアやITスペシャリストを目指したいと考えています。
システムエンジニア
【例文】 前職では、業務効率化のためSEの方と打ち合わせをする機会が多くありました。その中でITシステムの重要性を実感し、システムエンジニアになろうと決意いたしました。これまで営業職として「顧客の役に立つ仕事をしたい」と奮闘してまいりましたが、今後はIT業界の中でその思いを実現したいと考えております。
現在はJavaのプログラムについて勉強しており、自分の考えたシステムが形になっていく楽しさも実感しています。前職でのマネジメント経験も活かし、入社後はプロジェクトマネージャーを目指してスキルを磨いていく所存です。
上記に加えて、企業の魅力や特徴など、働きたいと思った理由を盛り込むとなおよいでしょう。
【例文あり】履歴書や面接での自己PRも重要
未経験からIT業界を目指す際、「ITのスキルはありません」とだけ伝えるのは避けたほうがよいでしょう。採用するメリットがないと企業側に判断される可能性があるためです。職種関係なく活かせるスキルや、入社前に取得した資格などを積極的にアピールしていきましょう。下記に、例文を紹介します。
プログラマー
【例文】 私の強みは、課題解決能力とコミュニケーション能力です。現在塾講師として働いており、生徒に積極的に話しかけて悩みをヒアリングし、どのような解決策があるか一緒に考えています。
目の前でトラブルが発生した際に、冷静かつ客観的に現状を分析し、最善の対処法を提案していく力は、プログラマーとしても活かせるのではないかと考えております。入社後はコミュニケーション能力を発揮し、チームで協力してひとつずつ成果を積み上げていけるよう努めていく所存です。
システムエンジニア
【例文】 私の強みは、常にチャレンジ精神を持って取り組む姿勢です。現職では、業務での反省点をまとめて次に活かすこと、必要なスキルは積極的に磨くことを心がけております。現在は、スクールに通いながらシステムエンジニアに求められる技術を習得しているところです。学習意欲の高さを活かし、貴社に最大限貢献できるよう努めます。
転職エージェントを活用した準備がおすすめ
未経験からIT業界への転職を成功させるためには、転職エージェントを活用して準備を進める方法をおすすめします。転職エージェントを利用する大きなメリットは、転職希望者の適性や経験に合った企業を紹介してくれる点です。
また転職のプロが志望動機の書き方や面接のアドバイス、転職後のアフターフォローなどをしてくれるサービスもあります。IT業界は専門性が高いため、まったくの未経験者が個人で行う転職活動には限界があるでしょう。これらのサービスは無料で受けられるケースが多いため、うまく活用してみてください。
未経験からIT業界へ転職するメリット
まったくの未経験からIT業界へ転職するとなると、仕事を覚えるのに苦労することもあるでしょう。しかし未経験であっても、IT業界へ転職して得られる利点は十分あります。ここでは、未経験からIT業界へ転職するメリットを2つに分けて紹介します。
在宅勤務など自由度の高い働き方ができる場合も
IT業界の仕事は、基本的にインターネット環境が整っていればパソコンひとつで作業できます。そのため、在宅ワークやノマドワークなど場所を選ばない働き方が実現可能です。
また、個人作業が多い職種であれば周りと勤務時間を合わせる必要がないため、フレックスタイム制を導入している企業もあります。出産や子育てなどライフステージの変化に合わせて自由度の高い働き方を選択できる点は、IT業界へ転職するメリットといえます。
キャリアプランを立てやすい
IT業界で仕事をすると専門的なスキルを身につけられます。そのため、実績を活かして転職したりフリーランスとして独立したりと、キャリアプランを立てるうえでの選択肢が幅広い点は大きなメリットです。またひとつの業種にこだわるのではなく、担当できる業務を次々と広げていくことで年収アップを狙える可能性もあります。将来の目標を立てやすく、仕事に対するやる気にもつながるでしょう。
未経験からIT業界への転職はきつい?知っておきたい注意点
働き方の自由度が高く、専門的なスキルを磨けるIT業界に魅力を感じる方もいるでしょう。しかし、未経験から転職するとなると、大変な点があることも事実です。ここでは、IT業界へ転職したいと考える際に知っておきたい注意点を2つ紹介します。
未経験でも応募できる求人を自分で見つけるのは難しい
転職を希望する企業が決まっている場合は、採用ページから直接アクセスしてみるとよいでしょう。しかし企業の採用サイトは、キャリア採用や新卒採用の求人が多い傾向にあります。未経験からIT業界への転職を目指す場合は、ひとつずつ企業のホームページを検索していくのではなく、転職サイトや転職エージェントを活用する方法がおすすめです。
転職サイトや転職エージェントはインターネット環境さえあればいつでも自由に求人を検索でき、動画や画像も確認できるため企業のイメージが湧きやすいといえます。また転職サイトや転職エージェントは、無料でサービスを利用できる点もメリットです。
人員不足で業務量の負担が大きい可能性がある
IT業界は、人材が不足している企業も少なくありません。ひとりに課せられる業務量が多い企業に転職してしまうと、残業や休日出勤が必要となる可能性もあります。
思った以上に過酷さを感じ、「イメージと違った」「前職のほうがよかった」など後悔してしまうケースもあるでしょう。このような企業に転職しないためには、雇用条件を十分確認する、転職エージェントのキャリアアドバイザーに企業の内情を聞くなどの方法が有用です。
未経験からIT業界を目指す際に気になる疑問を解決
未経験からIT業界への転職を目指すために必要なポイントを理解したものの、細かい疑問が残っている方もいるでしょう。ここでは、副業やアルバイトからIT業界を目指す方法、フリーランスとしての独立やインターン情報などを紹介します。また、学歴が重視されるのかといった点も触れています。
副業やアルバイトから始められる?
未経験でIT業界の副業を始める場合、いきなり仕事を獲得するのは困難です。スクールに通ってスキルを磨いたり、一度IT業界に転職して実績を作ったりしてからのほうがスムーズにいく可能性は高いといえます。また企業のアルバイトであれば未経験でも採用してくれるケースは多々あり、実績作りにも向いています。
フリーランスとして活躍するには?
ITフリーランスは業務の幅が広く、需要も高いと考えられます。しかし未経験からいきなりフリーランスを目指すのは難しく、まずは実績や人脈作りを優先させるとよいでしょう。一度IT業界に転職して専門性を高め、そのスキルを基にフリーランスに転向したほうが、未経験で始めるより安定した収入を得られる可能性は高いといえます。
高卒でもIT業界を目指せる?
IT業界は需要が高く、また学歴より実績を重視する企業もあるため、大学や専門学校を卒業していない方でも採用される可能性は十分にあります。ただし、大卒レベルの数学知識が求められるシステム開発などの業種では、高卒だと採用時に不利になってしまう場合があるため注意が必要です。求人情報の内容をよく確認し、高卒でも応募できる業種を選択したほうが無難です。
未経験でもインターンを受けることは可能?
IT業界のインターンは、未経験でも受けられる可能性はあります。ただしほとんどの企業では、プログラミングなどのスキルを身につけていることが条件となるでしょう。まったくの未経験だと、まずひとつの言語を習得するまでに大幅な時間がかかってしまうためです。未経験でインターンに参加する場合も、独学やスクールである程度の知識は身につけておきましょう。
まとめ
未経験者がIT業界へ転職を目指す際には、具体的な職種や求められるスキル、資格の理解が重要です。また、教育制度が整った企業を選ぶことでスムーズな適応が可能になります。
未経験からIT業界への転職を成功させるには、未経験者を募集している求人を探すことが欠かせません。その際には、IT業界の転職事情に精通している転職エージェントが役立ちます。
マイナビITエージェントでは、専任のキャリアアドバイザーが未経験者を募集しているIT求人を紹介します。応募書類の添削や面接対策など転職を成功に導くサポートも充実しているため、未経験からIT業界を目指したいとお考えの方は、お気軽にご相談ください。