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エンジニア副業の確定申告完全ガイド:青色申告・白色申告から経費計上まで節税効果を最大化する実践的税務戦略

エンジニアとして副業を始めたはいいものの、確定申告の手続きについて不安を感じていませんか。実は多くのエンジニアが、副業収入の税務処理で損をしているという現実があります。

正しい知識がないまま確定申告を行うと、本来受けられる控除を見逃したり、経費として計上できる項目を知らずに余計な税金を支払うことになります。私も過去に多くのエンジニアの方から税務相談を受けてきましたが、適切な申告方法を知らずに年間数十万円も多く税金を支払っていたケースもありました。

この記事では、エンジニアが副業で得た収入を効率的に申告し、合法的に節税を実現する方法を実践的に解説します。青色申告と白色申告の選択から経費計上の具体的なノウハウまで、税務署対応で困らない知識を身につけることができます。

エンジニア副業における確定申告の基本知識

副業を始めたエンジニアが最初に理解すべきなのが、確定申告が必要になる条件とその仕組みです。実は副業収入があっても、必ずしも確定申告が必要になるわけではありません。しかし、知らずに申告を怠ると後で大きなペナルティを受ける可能性があります。

そういえば先日相談を受けたエンジニアの方も、「副業収入が年間10万円程度だから申告しなくても大丈夫だろう」と思い込んでいました。ところが実際には、副業による所得が年間20万円を超えると確定申告が義務となります。所得とは売上から経費を差し引いた金額のことで、売上金額そのものではないという点も重要です。

確定申告の対象となる副業収入の種類も理解しておく必要があります。エンジニアの副業では、業務委託による開発案件、技術記事の執筆、プログラミング講師、アプリ開発による収益など多岐にわたります。これらの収入は基本的に「雑所得」または「事業所得」として申告することになりますが、その判断基準によって税額が大きく変わることがあります。

副業収入の分類と税務上の扱い

エンジニアの副業収入は、その性質によって税務上の分類が異なります。これを正しく理解することで、最適な申告方法を選択できるようになります。

雑所得として扱われるケースでは、副業が一時的な収入であったり、本業とは関係のない単発の案件だったりする場合が該当します。例えば、友人から頼まれたWebサイト制作や、たまたま参加した技術イベントでの講演料などです。雑所得の場合、損失が出ても他の所得と相殺することができません。

一方で事業所得として認められる場合は、継続的かつ独立した事業として副業を行っているケースです。定期的にクライアントから案件を受注していたり、自作のアプリから継続的に収益が発生していたりする状況です。事業所得として認められれば、青色申告の適用を受けることができ、より大きな節税効果を得られます。

ところで、この判断は非常に微妙で、税務署によって判断が分かれることもあります。同じような副業内容でも、申告者の説明の仕方や証拠書類の揃え方によって結果が変わることがあります。そのため、事業所得として申告したい場合は、事前に十分な準備をしておくことが重要です。

確定申告が必要になるタイミング

確定申告の義務が発生するタイミングについても、正確に把握しておく必要があります。給与所得者(会社員)の場合、副業による所得が年間20万円を超えた時点で確定申告が必要になります。ここで注意したいのは「所得」であって「売上」ではないということです。

例えば、副業で年間50万円の売上があったとしても、経費として30万円使っていれば所得は20万円となり、ちょうど確定申告の境界線上にあります。この場合、経費の計上方法や計算の仕方によって、確定申告が必要かどうかが決まります。

実は多くのエンジニアが見落としがちなのが、住民税の申告義務です。所得税の確定申告が不要な場合でも、住民税については1円でも副業収入があれば申告が必要になります。これを怠ると、後で住民税の追徴課税を受ける可能性があります。

青色申告と白色申告の選択戦略

副業による所得を事業所得として申告する場合、青色申告と白色申告のどちらを選択するかが重要な判断ポイントとなります。この選択によって節税効果に大きな差が生まれるため、それぞれの特徴を十分に理解した上で決定する必要があります。

青色申告は手続きが複雑である分、税制上の優遇措置が豊富に用意されています。最大のメリットは青色申告特別控除で、複式簿記で記帳し電子申告を行えば最大65万円の控除を受けることができます。これは所得から直接差し引ける金額なので、税率20%の人なら約13万円の節税効果があります。

そういえば、青色申告を選択する際に多くの人が心配するのが記帳の複雑さです。確かに複式簿記は一見難しそうに感じますが、現在は会計ソフトを使うことで、簿記の知識がなくても比較的簡単に記帳できるようになっています。クラウド会計サービスなら、銀行口座やクレジットカードと連携して自動で仕訳を作成してくれる機能もあります。

白色申告は手続きが簡単で、複雑な記帳も不要です。しかし、特別な控除は受けられず、税制上の優遇措置も限定的です。副業を始めたばかりで所得額が少ない場合や、記帳に時間をかけたくない場合は白色申告を選択する人も多くいます。

青色申告のメリットと活用法

青色申告の最大の魅力は、その節税効果の高さにあります。青色申告特別控除以外にも、様々な優遇措置が用意されています。

青色事業専従者給与の必要経費算入という制度では、家族に支払った給与を経費として計上できます。配偶者や子供が副業を手伝っている場合、適正な対価を支払うことで所得を分散し、全体の税負担を軽減することができます。ただし、この制度を利用するには事前に税務署への届出が必要で、実際に業務に従事していることが条件となります。

純損失の繰越控除も見逃せないメリットです。副業で赤字が発生した場合、その損失を翌年以降3年間にわたって繰り越すことができます。スタートアップ期で設備投資が多く赤字になりやすい時期には、この制度が大きな意味を持ちます。

実際に青色申告を選択する場合は、事前に「青色申告承認申請書」を税務署に提出する必要があります。この申請は、原則として青色申告をしたい年の3月15日まで(新規開業の場合は開業から2ヶ月以内)に行わなければなりません。提出が遅れると、その年は白色申告になってしまうので注意が必要です。

白色申告のメリットとデメリット

白色申告は手続きの簡素さが最大のメリットです。複式簿記による記帳は不要で、簡易的な収支内訳書を作成するだけで申告が完了します。税務に関する知識が少ない人でも、比較的簡単に申告手続きを行うことができます。

また、事前の手続きが不要という点も白色申告の利点です。青色申告のように事前に承認申請を提出する必要がないため、副業を始めた年からすぐに選択することができます。副業の収益が不安定で、継続するかどうか迷っている段階では、白色申告を選択する合理性があります。

しかし、税制上の優遇措置が少ないというデメリットは無視できません。青色申告特別控除は受けられませんし、損失の繰越控除なども適用されません。副業による所得が一定額を超えてくると、白色申告を続けることで逆に損をする可能性が高くなります。

実際のところ、副業による年間所得が30万円を超えてくる段階では、青色申告への切り替えを検討することをお勧めします。記帳の手間を考慮しても、節税効果による経済的メリットの方が大きくなる場合が多いからです。

エンジニア副業で認められる経費の実践的計上方法

副業に関連する経費を適切に計上することは、合法的な節税の基本中の基本です。しかし、何でも経費にできるわけではなく、明確な基準とルールが存在します。エンジニアの副業では特に、どこまでが経費として認められるのかが曖昧になりがちです。

経費として認められる基本的な条件は「業務に直接関係し、必要な支出であること」です。この判断は時として微妙で、同じ支出でも使用目的や使用割合によって経費として計上できる金額が変わります。例えば、自宅で副業を行っている場合の家賃や光熱費は、業務に使用している面積や時間に応じて按分計算することになります。

私が過去に相談を受けた中でも、経費の計上方法で大きく節税額が変わったケースが数多くあります。適切な知識を持って計上することで、年間で数十万円の違いが生まれることも珍しくありません。

パソコン・周辺機器の経費処理

エンジニアの副業で最も大きな経費となりがちなのが、パソコンやその周辺機器です。これらの機器は高額になることが多く、適切に経費計上することで大きな節税効果を得られます。

10万円未満の機器は、購入した年度に一括で経費計上することができます。キーボード、マウス、モニター、外付けハードディスクなど、多くの周辺機器がこの範囲に含まれます。ただし、本業と副業で兼用している場合は、副業での使用割合に応じて按分する必要があります。

10万円以上20万円未満の機器については、一括償却資産として3年間で均等償却することができます。例えば15万円のパソコンを購入した場合、年間5万円ずつ3年間にわたって経費計上します。これにより、初年度の経費負担を抑えながら、確実に節税効果を得ることができます。

20万円以上の機器は減価償却資産として、法定耐用年数に基づいて償却します。パソコンの場合は4年間での償却となります。高額な機器を購入した年は経費として計上できる金額が限られますが、長期間にわたって安定した節税効果を得られます。

ところで、機器を購入する際の注意点として、領収書の保管が挙げられます。経費として計上するには、購入日、購入先、金額、用途が明確に分かる証拠書類が必要です。特にオンラインで購入した場合は、購入確認メールや配送伝票なども合わせて保管しておくことをお勧めします。

自宅作業環境の経費化

エンジニアの副業では、自宅を作業場所として使用するケースが多くあります。この場合、家賃や光熱費の一部を経費として計上することができます。ただし、全額を経費にするわけにはいかず、適切な按分計算が必要です。

家賃の按分では、専用の作業部屋がある場合は面積按分で計算します。例えば、80平米のマンションで8平米の部屋を専用の作業部屋として使用している場合、家賃の10%を経費として計上できます。専用部屋がない場合でも、リビングの一角を作業スペースとして使用している時間の割合で按分することも可能です。

光熱費の按分は、業務に使用した時間や電力消費量に基づいて計算します。パソコンや照明器具の消費電力と使用時間から、より正確な按分比率を算出することもできます。エアコンについても、作業時間中の使用分については経費計上の対象となります。

実際の按分比率については、合理的な根拠があれば税務署も認める傾向にあります。ただし、50%を超えるような高い比率で按分する場合は、その根拠を明確に示せるよう準備しておく必要があります。

通信費・サブスクリプションサービスの経費計上

現代のエンジニア業務では、インターネット接続や各種サブスクリプションサービスが不可欠です。これらのサービス利用料も、適切に経費計上することで節税効果を得られます。

インターネット接続料は、副業での使用割合に応じて按分計上します。一般的なエンジニアの副業では、30-50%程度の按分が妥当な範囲とされています。ただし、動画配信や大容量データのやり取りが主な業務の場合は、より高い比率での按分も可能です。

クラウドサービスの利用料は、AWS、Google Cloud Platform、Microsoft Azureなど、副業で直接使用しているサービスであれば100%経費計上が可能です。GitHub、Heroku、Netlifyなどの開発支援サービスも同様です。ただし、個人的な用途でも使用している場合は、やはり按分が必要になります。

ソフトウェアライセンス料についても、副業で使用している分は経費計上できます。Adobe Creative Suite、JetBrains IDEs、Microsoft Office等のライセンス料は、年間契約の場合は一括で、月額契約の場合は月々計上します。オープンソースソフトウェアへの寄付も、業務に関連している場合は寄付金として経費計上可能です。

そういえば、最近では様々なSaaSツールを組み合わせて業務を行うエンジニアが増えています。これらのサービスはそれぞれ金額は小さくても、積み重なると大きな経費となります。一つ一つのサービスについて、用途と経費計上の根拠を明確にしておくことが大切です。

実際の申告手続きと必要書類

確定申告の理論を理解したら、次は実際の申告手続きに移ります。ここで多くの人が戸惑うのが、必要書類の準備と申告書の作成です。特に初回の申告では、どの書類をどのように準備すればよいか分からず、申告期限ギリギリになって慌てることがよくあります。

エンジニアの副業申告で必要となる基本的な書類は、本業の源泉徴収票、副業の収支を記録した帳簿、各種経費の領収書、そして確定申告書です。青色申告の場合は、これに加えて貸借対照表と損益計算書が必要になります。

実際のところ、書類の準備は申告期限の直前に行うものではありません。副業を始めた時点から、日々の収支を記録し、領収書を整理しておくことが重要です。私が見てきた成功例では、月次で収支をまとめ、四半期ごとに必要書類を整理している人が多くいます。

帳簿作成の実践的ノウハウ

帳簿作成は確定申告の根幹となる作業です。正確な帳簿があってこそ、適切な申告と節税効果の最大化が可能になります。

現金出納帳の作成では、副業に関連するすべての現金の出入りを記録します。収入については、案件名、支払者、金額、受取日を記録し、支出については、支払先、内容、金額、支払日を記録します。最近はキャッシュレス決済が多いため、現金以外の決済についても同様に記録が必要です。

売掛帳・買掛帳の管理も重要な要素です。請求書を発行してから実際に入金があるまでにタイムラグがある場合、売掛金として管理します。同様に、経費の支払いについても買掛金として記録することがあります。これらの管理により、正確な損益計算が可能になります。

領収書・レシートの整理については、日付順やカテゴリー別に分類して保管します。デジタル化する場合は、電子帳簿保存法の要件を満たす必要があります。スマートフォンアプリで領収書を撮影する際は、解像度や撮影角度に注意し、文字がはっきり読める状態で保存することが重要です。

ところで、帳簿作成で最も効率的なのは会計ソフトの活用です。freee、マネーフォワード クラウド確定申告、弥生の青色申告オンラインなど、多くのクラウド型会計ソフトが提供されています。これらのソフトを使うことで、仕訳の知識がなくても比較的簡単に複式簿記での記帳が可能になります。

確定申告書の作成手順

確定申告書の作成は、準備した帳簿や書類を基に行います。国税庁の確定申告書等作成コーナーを使えば、画面の指示に従って入力するだけで申告書が作成できます。

基本情報の入力では、住所、氏名、マイナンバーなどの個人情報と、本業の源泉徴収票の内容を入力します。副業がある場合は、申告書Bを選択し、所得の種類に応じて該当する所得欄に金額を記入します。

所得金額の計算では、副業による収入から必要経費を差し引いた所得金額を計算します。青色申告の場合は、青色申告特別控除額も差し引きます。複数の所得がある場合は、それぞれを合算して総所得金額を求めます。

税額の計算は、総所得金額から各種所得控除を差し引いて課税所得金額を求め、税率を掛けて税額を計算します。源泉徴収されている税額がある場合は、計算した税額から差し引いて最終的な納付税額または還付税額を求めます。

実際の申告書作成では、数字の転記ミスや計算ミスが起こりがちです。特に手書きで作成する場合は、計算を複数回確認し、可能であれば第三者にもチェックしてもらうことをお勧めします。

電子申告(e-Tax)の活用方法

現在では、確定申告の電子申告が強く推奨されています。電子申告を利用することで、青色申告特別控除額が10万円増額される(最大65万円)など、税制上の優遇措置も受けられます。

e-Taxの利用準備では、マイナンバーカードとICカードリーダー(またはマイナンバーカード読み取り対応スマートフォン)が必要です。初回利用時には、国税庁のe-Taxサイトでの利用者登録が必要になります。

申告書の送信は、確定申告書等作成コーナーで作成した申告書を、そのまま電子送信することができます。添付書類についても、多くの書類がPDFファイルとして送信可能です。領収書などの原本については、原則として5年間の保存義務があります。

申告状況の確認は、e-Taxの受付システムから随時確認できます。申告書が正常に受信されているか、税務署からの連絡事項がないかなど、リアルタイムで状況を把握することができます。

そういえば、電子申告の大きなメリットの一つに、申告期限の延長があります。紙での申告は3月15日が締切ですが、電子申告の場合は3月15日の夜11時59分まで受け付けています。ギリギリまで内容を検討できるのは、初心者にとって心強いものです。

節税効果を最大化する高度な戦略

基本的な確定申告の仕組みを理解したら、次は更なる節税効果を追求する段階です。ここでは、一般的な申告書作成だけでは得られない、高度な節税テクニックを紹介します。これらの手法は合法的でありながら、大幅な節税効果をもたらす可能性があります。

高度な節税戦略では、単年度の申告だけでなく、複数年にわたる長期的な視点が重要になります。所得の平準化、控除制度の最大活用、将来のキャリア変化を見据えた準備など、戦略的なアプローチが求められます。

実は多くの高収入エンジニアが、税務の専門知識不足により、本来受けられる節税メリットを逃しています。適切な戦略を立てることで、年間の税負担を大幅に軽減することが可能です。

小規模企業共済・iDeCo活用による所得控除の最大化

副業収入が一定水準を超えてきた場合、所得控除制度の活用による節税効果が絶大になります。特に小規模企業共済とiDeCo(個人型確定拠出年金)は、高い節税効果と将来への投資を両立できる優れた制度です。

小規模企業共済は、副業を事業として行っているエンジニアが利用できる退職金制度です。月額1,000円から7万円まで拠出でき、拠出額全額が所得控除の対象となります。年間最大84万円の控除を受けることができ、税率30%の人なら約25万円の節税効果があります。

さらに、小規模企業共済には貸付制度があり、拠出額の範囲内で事業資金を借り入れることもできます。これにより、緊急時の資金需要にも対応できます。解約時の受取方法によっては退職所得として扱われるため、受け取り時の税負担も軽減されます。

iDeCoについては、副業収入を事業所得として申告している場合、国民年金基金連合会との関係で拠出限度額が変わります。正しい限度額を把握し、可能な範囲で最大限活用することが重要です。

ところで、これらの制度は単独で利用するよりも、組み合わせて利用することで更なる効果を発揮します。総合的な拠出額と節税効果を計算し、最適な配分を決定することが成功の鍵となります。

法人化のタイミングと判断基準

副業収入が一定規模を超えてくると、法人化による節税効果が個人事業主を上回る可能性があります。法人化のタイミングを見極めることは、長期的な節税戦略において極めて重要です。

法人化を検討すべき年収水準は、一般的に年間所得が500万円を超える段階とされています。この水準では、法人税率と個人の所得税率・住民税率の差により、法人化した方が税負担が軽くなる可能性があります。ただし、法人設立や維持にかかるコストも考慮する必要があります。

法人化による節税メリットは多岐にわたります。所得の分散効果により、実効税率を下げることができます。また、法人から個人への役員報酬として所得を受け取ることで、給与所得控除の適用も受けられます。退職金制度の活用により、将来の所得税負担も軽減できます。

法人化のタイミング戦略では、所得の変動パターンも重要な判断材料となります。一時的に高所得となる場合と、継続的に高所得が見込める場合では、最適なタイミングが異なります。また、社会保険料負担の変化も考慮する必要があります。

実際のところ、法人化は単純な節税手段ではなく、事業運営の形態を変更する重要な判断です。会計処理の複雑化、社会的責任の増大、資金繰りの変化など、様々な影響があることを理解した上で検討する必要があります。

経費の最適化と年度調整戦略

経費の計上タイミングを戦略的にコントロールすることで、複数年にわたる税負担の平準化を図ることができます。これは合法的な節税手法として、多くの事業者が活用しています。

設備投資のタイミング調整では、高額な機器の購入時期を調整することで、特定年度の所得を調整できます。所得が多い年に設備投資を集中させることで、その年の税負担を軽減できます。また、中小企業投資促進税制などの優遇措置がある場合は、それらの適用条件も考慮に入れます。

経費の前払いと後払いも効果的な手法です。来年の経費を年内に前払いすることで、当年の経費を増やすことができます。逆に、所得が少ない年には経費の支払いを翌年に繰り延べることも可能です。ただし、税務上の扱いについては注意深く検討する必要があります。

売上の計上時期調整については、請求書の発行タイミングや売上の計上基準を工夫することで、ある程度の調整が可能です。ただし、この手法については税務調査でも注目されやすい分野なので、適切な根拠と継続性が重要です。

そういえば、年度調整戦略では将来の所得予測も重要な要素となります。翌年以降の収入増加が見込める場合と減少が予想される場合では、最適な戦略が異なります。中長期的な視点で税負担の総額を最小化することを目指します。

税務署対応と税務調査への準備

適切な確定申告を行っていても、税務署から問い合わせや税務調査を受ける可能性があります。これらに適切に対応するためには、日頃からの準備と正しい知識が不可欠です。不安になる必要はありませんが、適切な対応をしないと本来不要な追徴課税を受けるリスクもあります。

税務署からの問い合わせは、必ずしも申告内容に問題があることを意味するわけではありません。確認のための照会や、統計資料作成のための調査も多く行われています。重要なのは、問い合わせを受けた際に的確な回答ができるよう、普段から適切な記録を残しておくことです。

私が相談を受けたケースでは、税務調査を過度に恐れて萎縮してしまい、本来主張できる権利を放棄してしまう人も多く見られます。正しい知識と準備があれば、税務署との対話も建設的に進めることができます。

書類保存と管理のベストプラクティス

税務調査に備えた書類保存は、副業を始めた時点から意識的に行う必要があります。法定保存期間は7年間(白色申告の場合は一部5年間)ですが、実際にはそれ以上の期間保存しておくことが安全です。

デジタル化による効率的な保存では、領収書やレシートをスキャンまたは撮影してデジタル保存します。電子帳簿保存法の要件を満たす必要があるため、適切な解像度での保存と、改ざん防止措置が重要です。クラウドストレージに保存する場合は、バックアップ体制も確認しておきます。

書類の分類と索引作成により、必要な時に迅速に書類を取り出せるようになります。年度別、月別、カテゴリー別など、複数の軸で整理しておくことをお勧めします。重要な書類については、概要をまとめたインデックスを作成しておくと便利です。

証拠書類の補強として、業務日誌や打ち合わせ記録なども併せて保存します。経費の妥当性を説明する際に、これらの資料が重要な証拠となることがあります。特に交際費や旅費交通費については、業務関連性を示す資料の保存が重要です。

実際のところ、税務調査で問題となるのは金額の大きさよりも、適切な証拠書類があるかどうかです。小額でも証拠が不十分な支出については否認される可能性があり、逆に高額でも適切な証拠があれば問題とされることは少ありません。

税務調査の流れと対応方法

税務調査の連絡を受けた場合、まず落ち着いて状況を把握することが重要です。調査には任意調査と強制調査がありますが、個人の副業に関する調査の多くは任意調査です。

事前通知の内容確認では、調査対象期間、調査理由、必要な書類などを確認します。通知書に記載された内容を詳しく読み、不明な点があれば税務署に質問します。調査日程についても、合理的な理由があれば変更交渉も可能です。

調査当日の対応では、質問に対して正直かつ正確に回答することが基本です。知らないことは「分からない」と答え、後で確認して回答することも可能です。調査官の質問の意図を理解し、求められている情報を的確に提供することが重要です。

追徴課税への対応では、修正申告書の内容を十分に検討します。納得できない部分については、根拠を示して反論することも可能です。必要に応じて税理士などの専門家に相談することをお勧めします。

ところで、税務調査は決して敵対的なものではありません。適切な申告を行っていれば、調査によって問題が発見されることは稀です。むしろ、正しい税務処理について学ぶ機会として捉えることもできます。

税理士との協働と費用対効果

副業収入が一定規模を超えてきた場合、税理士との協働を検討する価値があります。税理士費用は経費として計上できるため、実質的な負担はそれほど大きくありません。

税理士選択の基準では、IT業界への理解度、副業・フリーランス案件の経験、コミュニケーションの取りやすさなどを重視します。単に料金の安さだけで選ぶのではなく、提供されるサービスの内容と質を総合的に評価することが重要です。

協働体制の構築では、日常の記帳作業をどこまで自分で行い、どこから税理士に依頼するかを明確にします。月次面談の頻度、連絡方法、緊急時の対応方法なども事前に決めておきます。

費用対効果の測定では、税理士費用と節税効果、業務時間の節約効果を比較検討します。年間所得が300万円を超える段階では、税理士への依頼を検討する価値が出てきます。また、税務調査への対応や将来の法人化相談なども含めて判断します。

そういえば、最近では月額数千円から利用できるオンライン税理士サービスも登場しています。対面での相談が不要で、基本的な税務相談や申告書作成のサポートで十分な場合は、これらのサービスも選択肢となります。

まとめ

エンジニアの副業における確定申告は、正しい知識があれば決して難しいものではありません。基本的な仕組みから高度な節税戦略まで、段階的に理解を深めていくことで、合法的に税負担を最小化することができます。

重要なのは、副業を始めた段階から適切な記録を残し、計画的に税務処理を行うことです。年度末になって慌てて対応するのではなく、日々の積み重ねが大きな違いを生みます。また、所得水準の変化に応じて申告方法や節税戦略を見直していくことも重要です。

税務調査や税務署対応についても、適切な準備があれば恐れる必要はありません。むしろ、正しい税務知識を身につける機会として前向きに捉えることができます。

副業収入が増加してきた段階では、税理士などの専門家との協働も検討してください。適切なアドバイスを受けることで、更なる節税効果と安心感を得ることができるでしょう。

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