Google、Amazon、Apple、Meta、Netflixといった、いわゆるFAANG企業のコーディング面接に日本から挑戦したいと考えるエンジニアが増えている。これらの企業は世界トップクラスの報酬体系を持ち、技術的に最先端のプロダクトに携われるという魅力がある。日本にも東京オフィスを構えている企業が複数あり、海外に移住しなくても挑戦できるケースは少なくない。
ただし、FAANG企業の面接プロセスは日本の一般的なIT企業とは大きく異なる。アルゴリズムのコーディング問題を複数ラウンドにわたって出題され、すべてが英語で行われるのが標準だ。この記事では、FAANG企業の面接プロセスの全体像、各フェーズでの対策方法、英語での技術コミュニケーションの準備、日本からエントリーするための具体的な方法まで、網羅的に解説する。これからFAANG企業への挑戦を考えている人はもちろん、「いつかは挑戦したい」と思っている段階の人にも、準備の全体像を把握するための参考になるはずだ。
FAANG企業の面接プロセス全体像
FAANG企業の採用プロセスは、概ね「応募・書類選考」「Recruiter Phone Screen」「Technical Phone Screen」「On-site Interview(Virtual On-site)」「Hiring Committee Review」という流れで進む。企業によって細部は異なるが、この基本構造はほぼ共通している。全プロセスを通過するのに通常2~3ヶ月程度かかることが多い。
応募後にまず行われるのがRecruiterとの電話面談だ。ここでは技術的な質問はほとんどなく、経歴の確認、希望するポジションの確認、ビザの状況(日本での勤務か海外への移住か)などが話題になる。Recruiterは候補者をスクリーニングする役割なので、ここで好印象を残せれば次のステップへの推薦を受けやすくなる。英語でのカジュアルな会話力が求められるので、自己紹介と経歴の説明は事前に練習しておこう。
Technical Phone Screenでは、45分~60分の電話またはビデオ通話でコーディング問題が1~2問出題される。オンラインのコードエディタ(CoderPadやGoogleのドキュメントなど)を使って、面接官とリアルタイムでコードを共有しながら問題を解く形式だ。ここではコードの正確性だけでなく、思考プロセスを英語で説明する能力も評価される。この段階を通過すると、On-siteラウンドに進む。
On-site Interviewの構成と対策
On-site Interview(最近はVirtual On-siteが主流)は、FAANG企業の選考で最も重要なステージだ。通常4~6回のセッションが1日で行われ、各セッションは45分~60分で構成される。セッションの内訳はコーディング問題が2~3回、システムデザイン(シニアレベル以上の場合)が1回、Behavioral Question(行動面接)が1回、というのが典型的なパターンだ。
コーディングセッションでは、Medium~Hardレベルのアルゴリズム問題が出題される。面接官は問題を出した後、候補者がどのように問題を分析し、解法を設計し、コードに落とし込んでいくかの全プロセスを観察している。解けたかどうかだけでなく、コミュニケーションの仕方、エッジケースへの気づき、計算量の分析、テストケースの提示なども評価の対象だ。コードを書く前に「まず入力と出力を確認させてください」「このアプローチでO(n log n)の計算量になりますが、よろしいですか」と確認を入れることで、面接官との信頼関係を築ける。
Behavioral Question(BQ)セッションは、技術以外の面を評価する面接だ。Amazonの「Leadership Principles」が有名だが、他のFAANG企業でも類似のフレームワークがある。「過去に困難なプロジェクトにどう取り組んだか」「チームメンバーとの対立をどう解消したか」「失敗からどう学んだか」といった質問が出される。回答はSTAR形式(Situation/Task/Action/Result)で構成するのが定番で、事前に5~6個のエピソードを用意しておけば、多くの質問に対応できる。
出題傾向とレベル感
FAANG企業のコーディング面接で出題される問題は、LeetCodeのMedium~Hardレベルが中心だ。Easyレベルがそのまま出ることはほとんどないが、Medium問題のバリエーションが圧倒的に多い。頻出するアルゴリズムパターンとしては、グラフ探索(BFS/DFS)、動的計画法、スライディングウィンドウ、二分探索、木構造の操作が挙げられる。
企業ごとに出題傾向に特徴がある点も見逃せない。Googleは数学的な要素を含む問題や文字列操作の問題が比較的多い印象がある。Amazonはグラフとツリーの問題を好む傾向があり、Leadership Principlesに基づくBQの比重も高い。Metaはツリーとグラフの問題に加えて、配列やハッシュマップの問題もよく出る。ただし、これらはあくまで傾向であって、どの企業でもあらゆるカテゴリの問題が出題される可能性はある。
レベル感としては、LeetCodeのTop 200 Liked Problemsを一通り解けるようになっていれば、Phone Screenは十分に通過できる水準だろう。On-siteではそれに加えて、Hard問題にも食らいつける力と、解法を英語で明確に説明する力が求められる。ここで大切なのは「すべてのHard問題を解ける必要はない」ということだ。On-siteは複数セッションの総合評価なので、1つのセッションで苦戦しても、他のセッションでカバーできれば合格は十分にあり得る。
英語での技術コミュニケーション対策
日本からFAANG企業に挑戦する際、多くの人がネックに感じるのが英語でのコミュニケーションだ。TOEIC 900点以上を持っていても、技術面接の英語は独特のハードルがある。なぜなら、技術面接では「考えながら英語を話す」というマルチタスクが要求されるからだ。普段のビジネス英語とは質の異なる負荷がかかる。
技術面接で必要な英語力は、日常会話とは別物だと割り切って対策するのが効率的だ。面接で頻繁に使うフレーズをテンプレートとして暗記しておくと、思考の負荷が大幅に軽減される。たとえば「Let me think about the approach first.」「I think we can use a hash map to optimize this.」「The time complexity would be O(n) because we traverse the array once.」「Let me walk through an example to verify.」といったフレーズは、ほぼすべての面接で使い回せる。
そういえば、英語面接の練習としておすすめなのが「英語でLeetCodeの問題を解説する」トレーニングだ。問題を解いた後に、その解法を英語で口頭説明する練習を繰り返すことで、技術的な英語表現が自然に身につく。最初は一人で録音して聞き直すところから始めて、慣れてきたらオンラインの面接練習サービス(PrampやInterview.ioなど)で実際の人と模擬面接をするとよい。実際の面接では完璧な英語は求められていないので、多少の文法ミスがあっても論理的に説明できていれば問題ない。
リモート面接を成功させるコツ
日本からFAANG企業の面接を受ける場合、Virtual On-site(リモート面接)が主流になっている。リモート面接では対面とは異なる注意点があり、事前の準備が合否を左右することもある。
ネットワーク環境の整備は基本中の基本だ。面接中にビデオが途切れたり、音声が聞こえにくくなったりすると、コミュニケーションに大きな支障が出る。可能であれば有線LANに接続し、事前にスピードテストで十分な帯域があることを確認しておこう。マイクとカメラの品質も重要で、外付けのヘッドセットがあると音声がクリアになって聞き取りやすい。面接前日にZoomやGoogle Meetでテスト通話をして、映像と音声が問題なく動作することを確認しておくと安心だ。
時差への対応も見落としがちなポイントだ。アメリカ西海岸のオフィスとの面接の場合、日本時間の朝や深夜にセッションが設定されることがある。時差の影響で頭がぼんやりした状態で面接に臨むのは避けたいので、面接の時間帯に合わせて前日の就寝時間を調整するなどの工夫が必要だ。可能であれば、RecruiterにOn-siteの時間帯について日本時間で都合のよい枠をリクエストしてみよう。多くのRecruiterは候補者の時差事情に配慮してくれる。
面接中のコーディングでは、画面共有でコードエディタを見せながら進めることが多い。エディタのフォントサイズを大きくしておく、シンタックスハイライトを有効にする、変数名を読みやすくするといった細かい配慮が、面接官のコードレビューのしやすさに影響する。コードを書きながら声に出して思考を説明する「think aloud」の習慣も、対面以上に意識したい。リモートでは表情やジェスチャーが伝わりにくいので、言葉で補う必要があるからだ。
日本からのエントリー方法
FAANG企業に日本から応募する方法はいくつかある。最もストレートなのは、各企業の採用サイトからオンラインで直接応募する方法だ。GoogleであればGoogle Careers、AmazonであればAmazon.jobsのサイトから、勤務地「Tokyo」でフィルタリングして対象のポジションを探せる。応募時には英語のレジュメ(Resume)が必要になるので、事前に準備しておこう。
リファラル(社員紹介)は、書類選考を通過する確率を大幅に高める手段だ。FAANG企業に勤めている知人や元同僚がいれば、リファラルを依頼してみよう。知人がいない場合でも、LinkedInでFAANG企業のエンジニアとつながり、カジュアルに話を聞く中でリファラルにつながることがある。LinkedInのプロフィールを英語で充実させておくと、Recruiterから直接スカウトが来ることもある。
ところで、転職エージェントを利用する方法もある。外資系テック企業に強いエージェントとしては、ロバート・ウォルターズやマイケル・ペイジ、RGFなどが知られている。エージェントを経由するメリットは、面接プロセスの進行管理やスケジュール調整を代行してくれること、報酬交渉のサポートを受けられること、不合格の場合にフィードバックを入手しやすいことなどがある。一方、エージェントによっては自分の希望と合わないポジションを勧められることもあるので、エージェント任せにせず自分でも情報収集を行うことが大切だ。
準備期間の目安と学習ロードマップ
FAANG企業のコーディング面接に必要な準備期間は、現在のスキルレベルによって大きく異なる。すでにLeetCodeのMedium問題をコンスタントに解ける人であれば、2~3ヶ月の集中的な準備で十分に挑戦可能だ。基礎的なアルゴリズムの知識はあるが問題演習の経験が少ない場合は、4~6ヶ月を見込んでおくのが安全だろう。
準備の前半は、アルゴリズムとデータ構造の基礎を固める期間だ。配列、ハッシュマップ、スタック、キュー、ツリー、グラフといった基本データ構造を使いこなせるようにし、BFS/DFS、二分探索、DP、バックトラッキングといった主要アルゴリズムのパターンを習得する。LeetCodeのEasy50問、Medium100問程度をこなせれば、基礎はかなり固まったと言える。
準備の後半は、応用力とスピードを磨く期間だ。Hard問題にも挑戦し、複数のパターンを組み合わせた複合的な問題への対応力を養う。並行して、英語での技術説明の練習、BQの準備(STARエピソードの整理)、システムデザインの勉強(シニアレベルの場合)を進めていく。模擬面接を週に1~2回のペースで入れて、本番さながらの環境で練習するのが仕上げの段階で特に重要だ。
実は、準備を完璧にしてから応募するよりも、ある程度の準備ができた段階で応募してしまうのも戦略として有効だ。選考プロセスには2~3ヶ月かかるので、応募後も準備を続ける時間がある。不合格だった場合も、一般的に6ヶ月~1年後に再挑戦できる企業が多いので、「練習試合」のつもりで1回目のチャレンジを経験しておくと、2回目以降の通過率が格段に上がる。
まとめ
FAANG企業のコーディング面接は確かにハードルが高いが、正しい準備を段階的に進めていけば日本からでも十分に突破可能だ。面接プロセスの全体像を理解し、コーディング問題の対策、英語でのコミュニケーション力の向上、リモート面接環境の整備を並行して進めていこう。
日本からのエントリーには直接応募、リファラル、エージェント経由など複数の方法がある。準備期間は2~6ヶ月を目安に、LeetCodeでの問題演習と模擬面接を中心に進め、完璧を目指すよりも実戦経験を積むことを意識するのが成功への近道だ。