この記事のまとめ
- 地方自治体でのIT経験は、GovTech分野での高い評価に繋がる貴重な実務経験として活用できる
- デジタルガバメント推進の背景で、行政IT経験者への企業側のニーズは急速に拡大している
- 公務員から民間への転職では、規制業界・社会インフラ分野で特に高い評価を受けやすい
- 自治体システム開発経験は、要件定義から運用保守まで一貫した経験として転職時に有利
地方自治体でIT業務を担当している方の中には、民間企業への転職を検討しているものの「公務員のIT経験は評価されるのだろうか」と不安を感じている方も多いのではないでしょうか。
実は、デジタルガバメント推進の流れを受けて、行政IT分野の知見を持つエンジニアへの企業からの注目度は年々高まっています。自治体システム開発や電子申請システムの運用経験は、民間企業においても高く評価される専門性の高いスキルです。
本記事では、地方自治体でのIT経験を活かして理想の転職を実現する具体的な戦略と、GovTech分野で求められる人材像について詳しく解説します。この記事を読めば、あなたの行政IT経験を最大限に活用した転職成功の道筋が見えてくるでしょう。
地方自治体IT経験者が知るべき現在の転職市場動向
デジタル化の波は民間企業だけでなく、行政機関にも大きな変革をもたらしています。特に地方自治体でのIT業務経験は、今や転職市場において非常に価値の高いスキルとして注目されています。
なぜなら、行政システムは高い信頼性とセキュリティが求められる特殊な領域であり、そこで培われた経験は民間企業の基幹システム開発でも大きく活用できるからです。ここでは、自治体IT経験者が把握しておくべき転職市場の現況について詳しく解説します。
デジタルガバメント推進で行政IT経験者への需要が急拡大
内閣官房デジタル田園都市国家構想実現会議の資料によると、2025年度末までに全自治体でDX推進を完了させる目標が設定されており、これに伴い行政IT分野の知見を持つ人材への需要が急激に高まっています。
特に注目すべきは、民間企業が行政向けシステム開発に参入する際、自治体側の業務フローや要件を理解できる人材が圧倒的に不足している点です。そのため、実際に自治体でシステム開発や運用に携わった経験を持つエンジニアは、転職市場において非常に希少価値の高い存在として位置づけられています。
実際に、自治体IT経験者を積極的に採用している企業では、一般的なITエンジニアと比較して10-20%高い年収を提示するケースも珍しくありません。行政システムの特殊性を理解し、住民サービスの向上に貢献できる視点を持った人材は、今後さらにその価値が高まっていくでしょう。
20代自治体IT経験者は「即戦力として評価」される黄金期
20代で自治体IT業務に携わっている方は、転職市場において極めて有利な立場にいます。なぜなら、若さと専門性を同時に兼ね備えた人材として、多くの企業から高い評価を受けるからです。
特に、住民票システムや税務システムなど、個人情報を扱う基幹システムの開発・運用経験は、金融機関やヘルスケア業界など厳格なセキュリティが要求される分野で非常に重宝されます。また、予算制約の中でシステム最適化を図った経験は、コスト意識の高い民間企業でも大きく評価される要素となっています。
実際に、自治体出身の20代エンジニアが大手SIerに転職し、年収を30%以上アップさせた事例も数多く報告されています。デジタル化推進の追い風を受けて、この傾向はさらに強まると予想されます。
30代は自治体IT経験を活かしたスペシャリスト転職の最適期
30代の自治体IT経験者は、マネジメント経験と専門技術の両方を備えた即戦力として、転職市場で最も高い評価を受ける年代です。この年代では、単なる実装スキルだけでなく、プロジェクト管理や要件定義などの上流工程経験がより重視される傾向にあります。
自治体でのシステム導入プロジェクトリーダー経験や、ベンダー管理の実績は、民間企業のIT部門やプロジェクトマネージャー職で非常に価値の高い経験として評価されます。また、議会対応や住民説明など、ステークホルダーとの調整経験は、顧客折衝が重要な業務において大きなアドバンテージとなります。
特に注目されるのが、限られた予算内でシステム最適化を実現した経験です。民間企業でもコスト削減が重要な経営課題となっている現在、こうした実績を持つ30代エンジニアへの期待値は非常に高くなっています。
40代以上は自治体IT経験を活かした「エグゼクティブ転職」が主流
40代以上の自治体IT経験者は、一般的なIT転職とは異なり、より戦略的なアプローチが必要になります。この年代では、技術的なスキルよりも、組織運営やプロジェクト統括の豊富な経験が重視される傾向にあります。
特に価値が高く評価されるのは、自治体全体のIT戦略策定に関わった経験や、複数部署にまたがる大規模システム統合プロジェクトのリーダー経験です。こうした経験は、大手企業のCTO(Chief Technology Officer)やIT部門の責任者候補として高く評価され、通常のエンジニア転職では考えられないようなハイクラスポジションへの転職も可能になります。
実際に、地方自治体で情報システム課長を務めていた40代エンジニアが、大手金融機関のIT統括部長として年収1000万円を超える条件で転職を成功させた事例も報告されています。長年の公務員経験で培った堅実性とリスク管理能力は、特に金融業界や社会インフラ関連企業で非常に高く評価される要素となっています。
自治体IT経験者が活躍できる主要な転職先業界と職種
自治体IT経験者の転職先は、単純にIT業界だけに限定されません。行政システムで培った知見は、規制業界、社会インフラ、金融機関など、幅広い分野で高く評価されています。
特に重要なのは、自治体での経験がどのような民間企業のニーズとマッチするかを正確に把握することです。ここでは、自治体IT経験者が特に重宝される業界と、そこで求められる職種について詳しく解説します。
GovTech・シビックテック業界(最有力転職先)
自治体IT経験者にとって最も直接的にスキルを活かせるのが、GovTech(行政テクノロジー)業界です。この分野では、自治体向けシステムの開発・運用、電子自治体サービスの提供、デジタルガバメント推進支援などを手がける企業が急成長しています。
特に重要なのは、これらの企業が自治体側の業務フローや住民ニーズを深く理解できる人材を強く求めていることです。実際に自治体でシステム導入や運用に関わった経験は、この分野では代替不可能な価値を持っています。
自治体向けシステムアーキテクト
自治体でのシステム設計経験を活かし、民間企業が自治体向けに提供するシステムの全体設計を手がけるポジションです。住民票システム、税務システム、福祉システムなどの複雑な業務フローを理解し、技術的な解決策を提案できる能力が求められます。
実際の自治体経験を持つアーキテクトは、理論的な設計だけでなく、実運用での問題点や改善策を的確に把握できるため、ベンダー企業からは非常に重宝される人材として評価されています。年収800万円から1200万円のレンジで提示されることが多い高年収ポジションです。
GovTechプロダクトマネージャー
自治体でのシステム導入プロジェクト経験を活かし、行政サービスのデジタル化を推進する製品・サービスの企画から進行管理までを一手に担う職種です。自治体の業務課題を技術的に解決するためのプロダクト戦略を立案し、開発チームと連携しながらリリースまでを管理します。
特に重要なのは、自治体の予算サイクルや意思決定プロセスを理解し、適切なタイミングでプロダクトを展開できる能力です。これまでの自治体経験があるからこそ実現できるポジションで、スタートアップから大企業まで幅広い企業で求められています。
デジタルガバメントコンサルタント
自治体でのIT業務経験を武器に、他の自治体や民間企業に対してデジタル化の戦略立案から実行支援までを提供するコンサルタント職です。実際の行政プロセスを理解し、住民サービスの課題を技術的に解決できる知見は、他のコンサルタントでは代替できない専門性として高く評価されます。
特に重要なのは、住民目線でサービス設計を考える能力です。民間企業では顧客体験(CX)向上が重要な経営課題となっている中、住民サービスの最適化経験を持つコンサルタントは引く手あまたです。フリーランスでも時給一万円から二万円で活動できる高単価な分野です。
デジタルガバメントUXデザイナー
自治体での住民サービス提供経験を活かし、行政サービスのユーザーインターフェース(UI)やユーザーエクスペリエンス(UX)の設計を手がけるスペシャリストです。実際に住民がどのように行政サービスを利用するかを理解しているため、真に住民目線に立ったサービス設計ができるのが大きな強みです。
この分野は特に成長性が高く、マイナンバーカードポータルや税務システムのユーザビリティ改善など、大規模なプロジェクトが連続的に展開されています。一般的なWebデザイナーとは異なり、アクセシビリティへの配慮や高齢者にも使いやすいインターフェース設計が求められるため、社会的意義の高い仕事でもあります。
金融・保険業界(規制業界での高評価)
自治体IT経験者が特に高い評価を受けるのが、厳格な規制やコンプライアンス要件がある金融・保険業界です。個人情報保護法やマイナンバー法などの法的要件を日常的に扱ってきた経験は、金融商品取引法や銀行法などの規制の中でシステム運用を行う金融機関で非常に重宝されます。
特に注目されるのは、自治体での予算管理や会計システム運用経験です。これらの経験は、厳格な内部統制が求められる金融業界での中核システム運用において、即戦力として期待されています。主な転職先職種は以下のとおりです。
金融機関向けシステムコンサルタント
自治体での会計システムや税務システム運用経験を活かし、金融機関の勘定システムやリスク管理システムの導入・改善を支援するコンサルタント職です。公金の管理で培われた厳格な内部統制への理解や、コンプライアンス経験は、金融機関でのシステム導入で極めて重要な要素となっています。
特に大手銀行や保険会社では、自治体システムの安定性とセキュリティを理解したコンサルタントを求めています。プロジェクト単価も高く、経験者であれば月額100万円から150万円のレンジでの求人も珍しくありません。
金融機関IT部門スペシャリスト
自治体でのシステム開発・運用経験を活かし、金融機関の社内IT部門で基幹システムの管理・改善を担うスペシャリスト職です。特に金融機関では、个人情報保護やマネーロンダリング対策などのコンプライアンスへの理解が不可欠であり、自治体での法的制約への対応経験は非常に高く評価されます。
また、自治体での着実なシステム運用経験は、金融機関が最も重視する「システムの安定性」と直結しているため、大手都市銀行や地方銀行で非常に需要が高い職種です。キャリアアップではIT部門のマネージャーや情報システム部長クラスのポジションも目指すことができます。
保険会社システムリスク管理専門職
自治体での情報セキュリティ対策や個人情報保護業務の経験を活かし、保険会社でのシステムリスク管理を担当する専門職です。保険業界では、膨大な個人データを扱うため、自治体での個人情報保護法対応や情報漏洩防止対策の実務経験が非常に重要視されています。
特に生命保険会社や損害保険会社では、金融庁の監督指針に基づく厳格なシステム管理が求められており、自治体での法令遵守体制構築経験は、そのまま保険業界のシステムガバナンス強化に活用できます。また、災害時の業務継続計画(BCP)策定経験がある場合は、さらに高い評価を受けることができる分野です。
プロジェクトマネージャー
プロジェクトマネージャーは、システム開発などのプロジェクト全体の進行を管理する職種です。具体的には、計画立案や予算管理、リソースや工程の管理、さらにはステークホルダーとのコミュニケーションも業務内容に含まれます。いわば、プロジェクトを成功へ導く重要な役割を担うといえます。
社会インフラ・公益事業業界(安定性重視企業での高評価)
自治体IT経験者の転職先として、特に安定した雇用と社会的意義を重視する方におすすめなのが、社会インフラや公益事業を手がける業界です。電力会社、ガス会社、水道事業者、鉄道会社などでは、自治体での公共サービス提供経験が非常に高く評価されます。
これらの業界では、システム停止が社会に与える影響が大きいため、自治体での「絶対に止めることができないシステム」の運用経験は、まさに求められるスキルそのものです。主な転職先職種は以下のとおりです。
インフラ系システムエンジニア
電力会社、ガス会社、鉄道会社などで、社会インフラを支える重要システムの開発・運用を手がけるエンジニア職です。自治体での住民票システムや税務システムなど、「絶対に停止してはいけないシステム」の運用経験は、この分野で最も重要視されるスキルです。
特に注目されるのは、総務省のガイドラインに基づいたシステム管理経験です。これらの経験は、特に電力自由化後の電力会社や、鉄道会社で求められている「規制対応能力」と直結しているため、一般的なエンジニアと比べて高い年収提示を受けることができます。
公益事業情報システムマネージャー
水道局、交通局、途府県営企業などの公益事業者で、情報システムの全社管理を手がけるマネージャー職です。自治体でのシステム導入プロジェクト経験や、住民サービスの品質向上に取り組んだ経験は、公益事業でのサービス品質管理に直接活かすことができます。
特に、自治体での防災システムや総合行政ネットワーク(LGWAN)の管理経験がある方は、この分野で非常に高い評価を受けることができます。公益事業は安定した雇用と社会貢献を両立できるキャリアパスとして、特に40代以上の方から高い支持を得ている分野でもあります。
ネットワークエンジニア
ネットワークエンジニアは、システムが利用できるようにネットワーク環境を整えるのが仕事です。ルーターやLANケーブルなど、物理的な機器に触れて行う仕事が多いのが特徴です。セキュリティーに関する知識も求められます。
テクニカルライター
テクニカルライターは、家電やソフトウェアなどのマニュアルを作成する専門職です。技術的な情報を一般のユーザーにも分かりやすく伝える役割を担います。ユーザーからの問い合わせ内容を改訂版に反映させ、より良いマニュアルに仕上げることもテクニカルライターとしての重要な役割です。
セキュリティエンジニア
セキュリティエンジニアは、情報システムをサイバー攻撃から守る役割を担う専門職です。具体的には、サーバーやネットワークのセキュリティー強化、脆弱性のチェック、適切なセキュリティー対策の導入が求められます。IT 未経験から目指す際には、セキュリティーに関連する資格の取得が強い後押しになります。
OAインストラクター
OAインストラクターは、パソコンやOffice系ソフトなどの操作を分かりやすく教える専門家です。主に講座形式で指導し、多様な参加者のレベルに応じた教え方が求められます。基本的なコンピューターリテラシーがあり、人に教えることが好きな方に向いています。
CAD設計エンジニア
CAD設計エンジニアは、CADソフトを駆使して製品や部品の設計を担当する職種です。特に、製品や建築物のモデリングを行い、クライアントの要望に応じた設計図を作成します。また設計だけでなく、シミュレーションで性能を評価し、設計プロセス全体を改善する役割も担っています。
ハードウェア業界
ハードウェア業界は、パソコン本体やキーボード、マウス、モニター、プリンター、スマートフォン、タブレット、ゲーム機などの製作・販売を行っています。主な職種には以下のようなものがあります。
ハードウェアエンジニア
ハードウェアエンジニアは、コンピューター内部で使われる電子回路や部品を設計します。パソコンやスマートフォンなど自社商品に加え、クライアントの要望に合わせてオリジナルの機器を開発することもあります。電子回路やデバイスに関する知識だけでなく、使用者の安全面に配慮した設計が求められる仕事です。
組み込みシステムエンジニア
組み込みシステムエンジニアは、エアコン・炊飯器などの家電製品や工業機器が動作するためのシステムを開発する仕事です。コンピューターが内蔵されているほとんどの製品には、組み込みソフトウェアが搭載されています。スマート家電やIoT(モノのインターネット)の広がりに伴い、需要はますます高まっています。
IT業界の年収は職種によって大きく異なる
マイナビエージェントのデータによると、IT業界全体の平均年収は427万円です。ただし職種や経験によって、年収は大きく異なります。ここでは、IT業界の中で平均年収の高い業種をいくつか紹介します。
職種名 | 平均年収 |
---|---|
プロジェクトマネージャー(オープン・WEB) | 670万円 |
プリセールス | 599万円 |
社内システム企画 | 512万円 |
サーバーエンジニア | 462万円 |
システムエンジニア(制御・組み込み) | 455万円 |
またマイナビエージェントのデータを基に、IT業界の年代別年収を紹介します。
年代 | 平均年収 |
---|---|
20歳~24歳 | 307万円 |
25歳~29歳 | 373万円 |
30歳~34歳 | 449万円 |
35歳~39歳 | 528万円 |
IT業界は未経験から挑戦する場合でも、年収の高い職種や企業を選択してスキルや実績を着実に積み上げていけば、大幅な年収アップが実現可能です。
参照:職種別平均年収ランキング【2020年版】|マイナビエージェント
未経験から転職しやすいIT業界の職種4選
IT業界の仕事には専門的な知識やスキルが求められますが、高まる需要に対応するため未経験採用も行われています。とはいえ、高度な専門知識が求められる職種にすぐにチャレンジできるわけではありません。転職準備として知識やスキルを身につけたり、入社後に研修を受けたりしてスキルレベルを高めていくことが必要です。ここでは、未経験からチャレンジしやすいIT職種を紹介します。
エンジニアやプログラマー
多種多様なIT職種の中で、比較的未経験から転職しやすいのはソフトウェア業界のプログラマーやシステムエンジニア(SE)、ネットワークエンジニアといわれています。これらの職種はシステム構築に欠かせない職種のため需要が高く、「未経験可」の求人も多く出ているからです。
「実務経験がなくても大丈夫なのだろうか」と心配されるかもしれませんが、未経験者を迎え入れている企業の多くは入社後の研修を用意しています。その辺りも事前に確認してみるとよいでしょう。
IT営業
ハードウェアやソフトウェアといったIT製品・サービス関連の営業をIT営業と呼びます。クライアントのビジネスを促進するため、または問題を解決するために最適なツールやシステムを提案するのが仕事です。
自社の製品やサービスに関する知識だけでなく、IT全般に関する知識、クライアントの要望をくみ取る能力、分かりやすく説明するスキルなども必要とされます。人とのコミュニケーションが得意な方におすすめの職種です。
IT事務
IT事務はITエンジニアのサポートをする職種です。専門的な知識は必要とされていませんが、事務作業に必要なMicrosoft ExcelやMicrosoft Wordの基本スキル、タイピング技術、ビジネスマナーなどは必要です。IT業界を知るという意味では、チャレンジしやすい職種といえるでしょう。業務を通じて知識の幅を広げていけるため、別のIT職種へチャレンジする足掛かりにもなります。
テクニカルサポート
テクニカルサポートは、自社製品やサービスに関する技術的な問い合わせに対応します。クライアントと直接対話する形での対応になるため、カスタマーサポートのオペレーター経験がある人などは有利です。クライアントの要望をくみ取る能力や、順序立てて分かりやすく説明するスキルも求められます。
IT関連の基本スキルが必要であることに加え、転職後も勉強を続けて自分をアップデートしていかなければならない職種であることは理解しておきましょう。
未経験からIT業界への転職を成功させるためのポイント
未経験からでも条件に合うIT企業を探して転職を成功させたいと考えている場合は、ここで紹介するポイントを重視して準備を始めてみましょう。特に志望動機や自己PRでは、未経験だからといって何もアピールしないのではなく、これまでの経験を基に自分を採用するメリットを企業へうまく伝える必要があります。それぞれの例文も紹介しているため、ぜひ参考にしてみてください。
未経験者を募集している求人を探す
未経験からIT業界へ転職するには、未経験者を募集する求人を探すことが鍵となります。IT業界では、技術進化による需要拡大のため、多くの企業が新しい人材の参入を求めています。未経験者でも挑戦できる職種は多々ありますが、サポート・ヘルプデスクやインフラエンジニアなどのように、業務がマニュアル化されている職種は特に未経験者向けです。
さらに、転職エージェントを活用することで、未経験者向けの求人情報を効率的に探せます。
教育制度の有無を確認して企業を選ぶ
未経験からIT業界へ転職する場合、教育制度の充実度を確認しておいたほうが安心です。たとえば大企業の場合、研修内容やスケジュールなどの骨組みが整っている傾向にあります。
逆にベンチャー企業だと研修内容が確立しておらず、社員の働きを見て学ぶ姿勢を求められるケースがあります。入社してまもなくの状態で、即戦力としての働きを求められる可能性もあるでしょう。スキルを学んでから実践していきたい方は、教育制度の有無と内容まで把握してから転職先を決めることをおすすめします。
IT業界に役立つ資格を取得する
IT業界未経験者の場合、ITスキル習得に向けて勉強している姿勢を見せるため、以下のような資格を取得するのがおすすめです。
- ITパスポート
- 基本情報技術者試験
- マイクロソフトオフィススペシャリスト(MOS)
- 応用情報技術者試験
また以下のようなスキルを持っている場合、未経験でもIT業界で活躍できる可能性が高いといえます。
- 論理的思考力
- プログラミングスキル
- コミュニケーション能力
- プレゼンスキル
- 資料作成能力
- 英語力
IT業界では、物事を筋道立てて考え、プログラミングで形にしていく力が求められます。また、チームやクライアントとの話し合いを進めていく中で、分かりやすく伝える力も必要です。IT業界の最新情報は英語圏から発信されるケースも多いため、英文を読み解く語学力があるとなおよいでしょう。
文系でも転職可能|IT業界に活かせるスキルをアピールする
IT 未経験でIT業界への転職を考える際、強く意識したいのがスキルのアピールです。多くのIT企業では、技術的なバックグラウンドよりもビジネススキルやコミュニケーション能力を重視する傾向があります。
たとえば、パソコンスキルとしてMicrosoft ExcelやMicrosoft Wordを使いこなせることはIT業界でも役立ちます。また、論理的に物事を考えるためのロジカルシンキングも重要です。プロジェクトの進行を支える役割を担うときには、複雑な問題を分解して解決策を考える力が問われるからです。
また、IT業界はチームでの協働やクライアントとの密接なコミュニケーションが多いため、スムーズな意思疎通を図るためのコミュニケーション能力も評価されます。このように、文系理系にかかわらず、既存のスキルと意欲をアピールすることで、IT業界での新しいキャリアを切り開くことが可能です。
【例文あり】志望動機を明確にしておく
未経験からIT業界への転職を成功させるために、志望動機の内容はじっくり考えて準備しておきましょう。アピールできる専門的なスキルがないからこそ、「なぜIT業界で働きたいのか」という理由を明確に伝えると、採用につながりやすくなります。押さえておきたいポイントは、下記のとおりです。
- 身につけたいスキルや目指すポジションなど目標を伝える
- 仕事への興味や関心を積極的に伝えて入社意欲の高さを示す
- 自分自身のエピソードを盛り込む
3つのポイントを基に、職種別の例文を2つ紹介します。
プログラマー
【例文】 現在はものづくりを行う会社で働いておりますが、アイデアを1から形にしていくことにやりがいを感じたため、プログラマーを希望いたしました。
現在はJavaやPythonを学んでおり、入社後も業務内容に応じて使用できる言語を増やしていく所存です。より高度なスキルを身につけ、将来的にはシステムエンジニアやITスペシャリストを目指したいと考えています。
システムエンジニア
【例文】 前職では、業務効率化のためSEの方と打ち合わせをする機会が多くありました。その中でITシステムの重要性を実感し、システムエンジニアになろうと決意いたしました。これまで営業職として「顧客の役に立つ仕事をしたい」と奮闘してまいりましたが、今後はIT業界の中でその思いを実現したいと考えております。
現在はJavaのプログラムについて勉強しており、自分の考えたシステムが形になっていく楽しさも実感しています。前職でのマネジメント経験も活かし、入社後はプロジェクトマネージャーを目指してスキルを磨いていく所存です。
上記に加えて、企業の魅力や特徴など、働きたいと思った理由を盛り込むとなおよいでしょう。
【例文あり】履歴書や面接での自己PRも重要
未経験からIT業界を目指す際、「ITのスキルはありません」とだけ伝えるのは避けたほうがよいでしょう。採用するメリットがないと企業側に判断される可能性があるためです。職種関係なく活かせるスキルや、入社前に取得した資格などを積極的にアピールしていきましょう。下記に、例文を紹介します。
プログラマー
【例文】 私の強みは、課題解決能力とコミュニケーション能力です。現在塾講師として働いており、生徒に積極的に話しかけて悩みをヒアリングし、どのような解決策があるか一緒に考えています。
目の前でトラブルが発生した際に、冷静かつ客観的に現状を分析し、最善の対処法を提案していく力は、プログラマーとしても活かせるのではないかと考えております。入社後はコミュニケーション能力を発揮し、チームで協力してひとつずつ成果を積み上げていけるよう努めていく所存です。
システムエンジニア
【例文】 私の強みは、常にチャレンジ精神を持って取り組む姿勢です。現職では、業務での反省点をまとめて次に活かすこと、必要なスキルは積極的に磨くことを心がけております。現在は、スクールに通いながらシステムエンジニアに求められる技術を習得しているところです。学習意欲の高さを活かし、貴社に最大限貢献できるよう努めます。
転職エージェントを活用した準備がおすすめ
未経験からIT業界への転職を成功させるためには、転職エージェントを活用して準備を進める方法をおすすめします。転職エージェントを利用する大きなメリットは、転職希望者の適性や経験に合った企業を紹介してくれる点です。
また転職のプロが志望動機の書き方や面接のアドバイス、転職後のアフターフォローなどをしてくれるサービスもあります。IT業界は専門性が高いため、まったくの未経験者が個人で行う転職活動には限界があるでしょう。これらのサービスは無料で受けられるケースが多いため、うまく活用してみてください。
未経験からIT業界へ転職するメリット
まったくの未経験からIT業界へ転職するとなると、仕事を覚えるのに苦労することもあるでしょう。しかし未経験であっても、IT業界へ転職して得られる利点は十分あります。ここでは、未経験からIT業界へ転職するメリットを2つに分けて紹介します。
在宅勤務など自由度の高い働き方ができる場合も
IT業界の仕事は、基本的にインターネット環境が整っていればパソコンひとつで作業できます。そのため、在宅ワークやノマドワークなど場所を選ばない働き方が実現可能です。
また、個人作業が多い職種であれば周りと勤務時間を合わせる必要がないため、フレックスタイム制を導入している企業もあります。出産や子育てなどライフステージの変化に合わせて自由度の高い働き方を選択できる点は、IT業界へ転職するメリットといえます。
キャリアプランを立てやすい
IT業界で仕事をすると専門的なスキルを身につけられます。そのため、実績を活かして転職したりフリーランスとして独立したりと、キャリアプランを立てるうえでの選択肢が幅広い点は大きなメリットです。またひとつの業種にこだわるのではなく、担当できる業務を次々と広げていくことで年収アップを狙える可能性もあります。将来の目標を立てやすく、仕事に対するやる気にもつながるでしょう。
未経験からIT業界への転職はきつい?知っておきたい注意点
働き方の自由度が高く、専門的なスキルを磨けるIT業界に魅力を感じる方もいるでしょう。しかし、未経験から転職するとなると、大変な点があることも事実です。ここでは、IT業界へ転職したいと考える際に知っておきたい注意点を2つ紹介します。
未経験でも応募できる求人を自分で見つけるのは難しい
転職を希望する企業が決まっている場合は、採用ページから直接アクセスしてみるとよいでしょう。しかし企業の採用サイトは、キャリア採用や新卒採用の求人が多い傾向にあります。未経験からIT業界への転職を目指す場合は、ひとつずつ企業のホームページを検索していくのではなく、転職サイトや転職エージェントを活用する方法がおすすめです。
転職サイトや転職エージェントはインターネット環境さえあればいつでも自由に求人を検索でき、動画や画像も確認できるため企業のイメージが湧きやすいといえます。また転職サイトや転職エージェントは、無料でサービスを利用できる点もメリットです。
人員不足で業務量の負担が大きい可能性がある
IT業界は、人材が不足している企業も少なくありません。ひとりに課せられる業務量が多い企業に転職してしまうと、残業や休日出勤が必要となる可能性もあります。
思った以上に過酷さを感じ、「イメージと違った」「前職のほうがよかった」など後悔してしまうケースもあるでしょう。このような企業に転職しないためには、雇用条件を十分確認する、転職エージェントのキャリアアドバイザーに企業の内情を聞くなどの方法が有用です。
未経験からIT業界を目指す際に気になる疑問を解決
未経験からIT業界への転職を目指すために必要なポイントを理解したものの、細かい疑問が残っている方もいるでしょう。ここでは、副業やアルバイトからIT業界を目指す方法、フリーランスとしての独立やインターン情報などを紹介します。また、学歴が重視されるのかといった点も触れています。
副業やアルバイトから始められる?
未経験でIT業界の副業を始める場合、いきなり仕事を獲得するのは困難です。スクールに通ってスキルを磨いたり、一度IT業界に転職して実績を作ったりしてからのほうがスムーズにいく可能性は高いといえます。また企業のアルバイトであれば未経験でも採用してくれるケースは多々あり、実績作りにも向いています。
フリーランスとして活躍するには?
ITフリーランスは業務の幅が広く、需要も高いと考えられます。しかし未経験からいきなりフリーランスを目指すのは難しく、まずは実績や人脈作りを優先させるとよいでしょう。一度IT業界に転職して専門性を高め、そのスキルを基にフリーランスに転向したほうが、未経験で始めるより安定した収入を得られる可能性は高いといえます。
高卒でもIT業界を目指せる?
IT業界は需要が高く、また学歴より実績を重視する企業もあるため、大学や専門学校を卒業していない方でも採用される可能性は十分にあります。ただし、大卒レベルの数学知識が求められるシステム開発などの業種では、高卒だと採用時に不利になってしまう場合があるため注意が必要です。求人情報の内容をよく確認し、高卒でも応募できる業種を選択したほうが無難です。
未経験でもインターンを受けることは可能?
IT業界のインターンは、未経験でも受けられる可能性はあります。ただしほとんどの企業では、プログラミングなどのスキルを身につけていることが条件となるでしょう。まったくの未経験だと、まずひとつの言語を習得するまでに大幅な時間がかかってしまうためです。未経験でインターンに参加する場合も、独学やスクールである程度の知識は身につけておきましょう。
まとめ
未経験者がIT業界へ転職を目指す際には、具体的な職種や求められるスキル、資格の理解が重要です。また、教育制度が整った企業を選ぶことでスムーズな適応が可能になります。
未経験からIT業界への転職を成功させるには、未経験者を募集している求人を探すことが欠かせません。その際には、IT業界の転職事情に精通している転職エージェントが役立ちます。
マイナビITエージェントでは、専任のキャリアアドバイザーが未経験者を募集しているIT求人を紹介します。応募書類の添削や面接対策など転職を成功に導くサポートも充実しているため、未経験からIT業界を目指したいとお考えの方は、お気軽にご相談ください。