ライブコーディング面接でどんな問題が出るのか、そして面接官の前でどのように解き進めればよいのか。練習問題を何百問解いても、実際の面接の「空気感」がつかめないまま本番を迎えてしまう方は少なくありません。問題を解く技術力はあるのに、面接の場でそれを発揮する方法がわからないというジレンマは、多くのエンジニアが経験することです。
実は、ライブコーディング面接で高い評価を得るために必要なのは、正解のコードを書くことだけではありません。問題文を受け取ってから最終的なコードに到達するまでの「思考のプロセス」そのものが評価対象になっています。面接官は候補者が沈黙したまま正解を出すよりも、思考を言語化しながら段階的に解に近づいていく様子を見たいと考えていることがほとんどです。
この記事では、ライブコーディング面接で実際に出題される代表的な問題を3つ取り上げ、問題を受け取った瞬間から最適解に至るまでの思考プロセスを丸ごと再現します。解法だけでなく、面接官とのやり取りの進め方、質問の仕方、行き詰まったときの対処法まで含めて解説しますので、面接本番のシミュレーションとしてぜひ活用してください。
ライブコーディング面接の典型的な流れ
コーディング問題が出題された場合、面接の流れには一定のパターンがあります。面接官が問題を口頭またはテキストで提示し、候補者がそれを理解して解法を検討し、コードを書いて動作確認を行い、最後に計算量の分析や改善の余地について議論する、という流れです。この全体の流れを把握しておくだけで、面接中に「今自分はどの段階にいるのか」を意識できるようになり、時間配分の失敗を防げます。
そういえば、多くの候補者が犯すミスの一つに、問題を聞いた瞬間にコードを書き始めてしまうというものがあります。面接官はこの行動を「思考が浅い」「計画性がない」と評価する傾向があり、たとえ正解に到達しても評価が下がる要因になりかねません。問題を聞いてから5分程度は、コードを書かずに問題の理解と解法の検討に集中するのが理想的です。
面接時間は通常45分から60分で、そのうちコーディングに使える時間は30分から40分程度です。残りは自己紹介や質疑応答に充てられます。1問だけを深く掘り下げるパターンと、2問をテンポよく解くパターンがあり、企業によって異なります。いずれの場合も、最初の数分を問題理解に使い、解法を口頭で説明してから実装に入る、という手順は共通しています。
出題例1:連続する部分配列の最大和
ここから、具体的な問題とその解答プロセスを再現していきます。一つ目の問題は、コーディング面接の定番中の定番である「連続する部分配列の最大和」です。
問題文
「整数の配列が与えられます。連続する部分配列(要素が1つ以上)の中で、要素の合計が最大になるものを見つけ、その合計値を返してください。」
入力例:[-2, 1, -3, 4, -1, 2, 1, -5, 4] 出力例:6(部分配列 [4, -1, 2, 1] の合計)
ステップ1:問題を理解し、確認する
問題を聞いた瞬間に解法に飛びつくのではなく、まず面接官に確認の質問を投げかけます。この段階でのやり取りが面接の印象を大きく左右します。たとえば「配列には負の数も含まれるという理解でよいですか」「空の配列が入力される可能性はありますか」「要素は整数のみですか」といった質問を投げかけることで、問題の範囲を正確に把握できると同時に、丁寧に仕事を進められるエンジニアであるという印象を与えられます。
入力例を使って自分の理解が正しいか確認するのも効果的です。「この入力例の場合、[4, -1, 2, 1]の合計が6で、これが最大になるということですね」と声に出して確認することで、面接官との認識のずれを早期に発見できます。実は、問題文の解釈が面接官の意図と異なっていたために、正しいアルゴリズムを書いているのに不正解になるというケースは意外と多いのです。
ステップ2:ブルートフォース解法から考える
確認が終わったら、まず最もシンプルな解法から考えます。「全ての連続する部分配列を試して、それぞれの合計を計算し、最大値を返す方法が考えられます。この場合、二重ループを使うのでO(n^2)の計算量になります」と口頭で説明します。
ここで重要なのは、いきなり最適解を出そうとしないことです。ブルートフォース解法を最初に提示することで、問題を正しく理解していることを示すと同時に、そこから最適化する過程を面接官に見せることができます。面接官によっては「その解法でまず実装してみてください」と言う場合もあれば、「もっと効率的な方法はありますか」と誘導してくれる場合もあります。どちらにしても、出発点としてブルートフォースを提示しておくのは有効な戦略です。
ステップ3:最適解への道筋を見つける
「O(n^2)よりも良い方法を考えてみます」と言いながら、動的計画法のアプローチを検討します。配列を左から順に見ていくとき、各位置で「ここまでの部分配列の最大和」を管理できることに気づきます。ある位置iでの最大和は、「位置i-1までの最大和にa[i]を加えたもの」と「a[i]単体」のどちらか大きい方です。
この考え方を面接官に伝えるときは、具体例を使うと効果的です。「たとえば入力の4番目の要素4に着目すると、それまでの最大和は-2なので、4単体で始めた方が大きいですよね。ここが新しい部分配列の起点になります」のように、数値を交えて説明すると面接官も思考の流れを追いやすくなります。
ステップ4:コードを書く
解法の方針が固まったら実装に移ります。Pythonでの実装例を示します。
def max_subarray(nums):
current_sum = nums[0]
max_sum = nums[0]
for i in range(1, len(nums)):
current_sum = max(nums[i], current_sum + nums[i])
max_sum = max(max_sum, current_sum)
return max_sum
コードを書きながら、「current_sumは現在の部分配列の合計を追跡し、max_sumはこれまでに見つかった最大の合計を保持します」と各変数の役割を説明します。ループの中で「nums[i]単体とcurrent_sum + nums[i]を比較して、大きい方をcurrent_sumに代入します。これにより、直前までの部分配列に追加するか、新しい部分配列を始めるかを判断しています」と処理の意図を伝えます。
ステップ5:テストと計算量分析
コードが書けたら、入力例でトレースして動作を確認します。「入力が[-2, 1, -3, 4, -1, 2, 1, -5, 4]の場合、current_sumの推移は-2, 1, -2, 4, 3, 5, 6, 1, 5となり、max_sumは6を返します。期待通りですね」と声に出して確認します。
ところで、計算量の分析も忘れずに行いましょう。「このアルゴリズムはO(n)の時間計算量で、空間計算量はO(1)です。配列を一回走査するだけで答えが出ます」と伝えます。面接官から「エッジケースは?」と聞かれたら、「全ての要素が負の場合でも、最大の単一要素が返されるように実装しています」と補足できると高評価につながります。
出題例2:有効な括弧の判定
二つ目はスタックを使った典型的な問題です。シンプルに見えて、面接では意外と差がつく問題でもあります。
問題文
「括弧のみで構成された文字列が与えられます。この文字列が有効かどうかを判定してください。有効な文字列とは、開き括弧が対応する同じ種類の閉じ括弧で閉じられており、正しい順序で閉じられているものです。括弧の種類は丸括弧()、角括弧[]、波括弧{}の3種類です。」
入力例1:"()[]{}" → true 入力例2:"(]" → false 入力例3:"([)]" → false
思考プロセスの再現
この問題を受け取ったら、まず面接官に「空文字列の場合はtrueを返す理解でよいですか」と確認します。括弧の問題は入力の前提条件によって実装が変わる部分があるため、こうした確認は重要です。
解法のアプローチとしてスタックを思いつくのは自然な流れです。「開き括弧に出会ったらスタックに積み、閉じ括弧に出会ったらスタックの先頭と対応するかを確認します。対応しなければ無効、最後にスタックが空ならば有効です」と方針を説明します。
実は、この問題のポイントは「対応する括弧のマッピングをどう実装するか」です。if-elif-elseの連鎖で書くこともできますが、ハッシュマップを使ってマッピングを定義する方がコードがきれいになります。面接ではコードの可読性も評価対象であることを意識して、以下のように書きます。
def is_valid(s):
stack = []
mapping = {')': '(', ']': '[', '}': '{'}
for char in s:
if char in mapping:
top = stack.pop() if stack else '#'
if mapping[char] != top:
return False
else:
stack.append(char)
return len(stack) == 0
コードを書いた後は、入力例でトレースして動作を確認します。「"([)]"の場合、'('をpush、'['をpush、')'が来たときにスタックのトップは'['なので対応しません。Falseを返します」と説明することで、自分のコードが正しく動いていることを示せます。
フォローアップへの対応
面接官は多くの場合、問題を解いた後にフォローアップの質問をしてきます。「括弧以外の文字(たとえばアルファベットや数字)が混ざっている場合はどう対処しますか」という拡張問題が代表的です。
この質問に対しては「括弧でない文字は無視してスキップする条件を追加すれば対応できます」と即座に答えられると評価が高まります。そういえば、フォローアップ質問は候補者の応用力を見るためのものなので、完璧なコードを書く必要はなく、口頭で方針を説明できれば十分な場合がほとんどです。慌てて実装しようとするよりも、冷静に方針を伝えるほうが好印象です。
出題例3:二分木のレベル順走査
三つ目の問題は、木構造とBFS(幅優先探索)を組み合わせた中級レベルの問題です。再帰ではなくキューを使ったアプローチが求められることが多い問題です。
問題文
「二分木のルートノードが与えられます。レベル順(上から下、左から右)に各レベルのノードの値をリストのリストとして返してください。」
入力例:
3
/ \
9 20
/ \
15 7
出力例:[[3], [9, 20], [15, 7]]
思考プロセスの再現
木構造の問題が出たとき、まず確認したいのは木のノードの定義です。「ノードはval、left、rightの属性を持つクラスとして定義されている想定でよいですか」と面接官に確認します。面接プラットフォームによっては、ノードクラスがあらかじめ定義されていることもあります。
「レベル順にノードを取得するということは、BFS(幅優先探索)が自然なアプローチですね」と方針を述べます。ここでDFS(深さ優先探索)でも実装可能であることに触れつつ、BFSの方が直感的であることを理由に選択すると、複数の解法を検討した上で選択しているという印象を与えられます。
BFSの実装ではキューを使います。各レベルのノードをまとめるために、キューの中にある要素数をレベルの区切りとして使うのがポイントです。「キューにルートを入れて、キューが空になるまで繰り返します。各イテレーションでは、現在のキューのサイズを保存し、そのサイズ分だけノードを取り出します。取り出したノードの子をキューに追加します」と説明しながらコードを書きます。
from collections import deque
def level_order(root):
if not root:
return []
result = []
queue = deque([root])
while queue:
level_size = len(queue)
current_level = []
for _ in range(level_size):
node = queue.popleft()
current_level.append(node.val)
if node.left:
queue.append(node.left)
if node.right:
queue.append(node.right)
result.append(current_level)
return result
実は、この問題で面接官が注目しているのは「なぜBFSを選んだのか」「レベルの区切りをどう管理するのか」の二点です。特にレベルの区切りをキューのサイズで管理するテクニックは、面接で頻出するパターンなので覚えておいて損はありません。計算量は時間・空間ともにO(n)で、全てのノードを一度ずつ訪問するためです。
追加質問への備え
この問題の後には「ジグザグ順に走査するにはどうしますか」「最も深いレベルのノードだけを返すにはどうしますか」といったバリエーションが聞かれることがあります。ジグザグ順の場合は、偶数レベルでcurrent_levelを逆順にするだけで対応できます。最も深いレベルのノードだけを返す場合は、BFSの最後のレベルを返せばよいので、resultの最後の要素を返す、という方針を口頭で説明できれば十分です。
ところで、木構造の問題は再帰で解く方法も面接官から質問されることがあります。「再帰でも解けますが、レベルを引数として渡し、結果のリストのインデックスとして利用します」と方針を伝えられると、幅広い解法を理解していることをアピールできます。
問題を解くときの心構えと共通テクニック
ここまで三つの問題を通して、解答プロセスの全体像を見てきました。どの問題にも共通する大切なポイントがいくつかあります。
問題を受け取ってからコードを書き始めるまでの「考える時間」をしっかり取ることが、ライブコーディング面接の成否を分ける最大の要因です。沈黙を恐れて慌てて手を動かすよりも、「少し考えさせてください」と一言断って数分間思考を整理するほうが、はるかに良い結果につながります。面接官は考えている候補者を待つことに慣れていますし、計画的に問題に取り組む姿勢を高く評価します。
そういえば、解法が思い浮かばないときの対処法も知っておくべきです。完全に行き詰まった場合は、素直にヒントを求めるのが最善策です。「この方向性で合っていますか」「入力例をもう一つ見せてもらえますか」のように、具体的な質問をすることで、面接官から有益な誘導を引き出せることがあります。ヒントをもらったことで大幅に減点されることは通常ありません。むしろ、行き詰まったときに適切にコミュニケーションを取れるかどうかは、実際のチーム開発で必要なスキルの一つとして評価されます。
コードを書き終わった後のテストフェーズも決して手を抜かないでください。入力例での確認に加えて、エッジケース(空の入力、要素が一つだけ、全て同じ値など)についても「こういうケースでも正しく動きます」と口頭で触れるだけで、テストへの意識が高いエンジニアという印象を残せます。
まとめ:解法よりもプロセスが評価される
ライブコーディング面接で面接官が見ているのは、最終的なコードの正しさだけではありません。問題を理解するための質問力、解法を段階的に組み立てる構成力、そして自分の思考を相手に伝える言語化能力が総合的に評価されています。
この記事で紹介した三つの問題は、それぞれ異なるデータ構造とアルゴリズムを使っていますが、解答プロセスの骨格は共通しています。問題を確認し、ブルートフォースから始めて最適化を検討し、方針を説明してから実装に入り、テストと計算量分析で締めくくるという流れです。この流れを体に覚え込ませておけば、初見の問題に遭遇しても落ち着いて対応できるようになります。
面接対策の練習では、問題を解くだけでなく、声に出して思考プロセスを説明する練習を意識的に行ってください。独り言のようで恥ずかしいかもしれませんが、この訓練がライブコーディング面接の本番で必ず活きてきます。解法を知っていることと、面接で評価される解き方ができることは別物だという認識が、合格への第一歩です。