「マイクロサービスについて設計してみてください」と面接官に言われた瞬間、手が止まってしまった経験はありませんか。
システム設計面接の中でも、マイクロサービスに関する出題は近年ますます増加しています。特にWeb系企業やスタートアップでは、モノリシックなアーキテクチャからの移行経験や、マイクロサービスの設計判断について深く掘り下げられることが珍しくありません。実際のところ、マイクロサービスの設計面接には明確なパターンがあり、そのパターンを押さえておくだけで回答の質が大きく変わります。
この記事では、マイクロサービス設計面接で繰り返し出題される頻出パターンを整理し、それぞれに対する具体的な回答テンプレートを紹介します。面接本番で自信を持って答えられるよう、一緒に準備していきましょう。
マイクロサービス設計面接で問われる本質とは
マイクロサービスの設計面接で面接官が本当に確認したいのは、技術用語をどれだけ知っているかではありません。ビジネス要件を技術的な設計判断に落とし込む力、そしてトレードオフを理解した上で合理的な選択ができるかどうかが問われています。たとえば「なぜモノリスではなくマイクロサービスを選ぶのか」と聞かれたとき、メリットだけを並べる候補者は評価が低くなりがちです。
面接官自身も日々の開発でアーキテクチャの選定に悩んでいます。だからこそ、デメリットやリスクを認識した上で判断できる姿勢を見せることが重要なのです。ある面接官経験者は「完璧な設計を求めているわけではない。なぜその選択をしたのかを論理的に説明できるかを見ている」と話していました。
設計面接の評価基準は大きく3つに分かれます。要件の整理力、設計判断の妥当性、そしてコミュニケーション能力です。ホワイトボードやオンラインツールを使って設計を進める過程で、自分の思考を言語化しながら面接官と議論できることが高い評価につながります。
面接官が注目する評価軸
面接官がマイクロサービス設計の回答で注目するポイントは、意外と技術的な正確さだけに限りません。候補者が曖昧な要件に対してどのように質問を投げかけるか、その姿勢が第一の評価対象になります。実際の開発現場では要件が最初から明確であることはほとんどないため、適切な質問ができること自体がスキルの一つなのです。
スケーラビリティやパフォーマンスのトレードオフについて議論できることも重視されます。「すべてを非同期にすればいい」のような安易な回答ではなく、同期処理が必要な場面と非同期が効果的な場面を区別して説明できるかどうかが問われます。たとえば決済処理のように強い一貫性が求められる場面で非同期を提案してしまうと、実務経験の浅さが露呈してしまいます。
そして意外と見落とされがちなのが、運用面への配慮です。マイクロサービスは開発時のメリットが語られやすい一方、運用コストが高くなる傾向があります。モニタリング、ログの集約、障害時の調査方法まで言及できると、実務をしっかり経験してきた候補者だという印象を与えられます。
頻出パターン1 - サービスの分割と境界設計
マイクロサービス設計面接で最も基本的かつ重要なテーマが、サービスの分割方法です。「ECサイトをマイクロサービスで設計してください」のような課題が出された場合、最初にサービスの境界をどう引くかが問われます。ここで焦ってすぐにサービス一覧を書き始めるのは避けたほうがいいでしょう。
サービス分割で評価されるのは、ドメイン駆動設計(DDD)の考え方を理解しているかどうかです。境界づけられたコンテキスト(Bounded Context)の概念を活用して、ビジネスドメインごとにサービスを切り出す方法を説明できると高い評価を得られます。ECサイトであれば、商品カタログ、注文管理、ユーザー管理、決済、配送といったドメインが自然な分割単位になります。
ただし、すべてを最初から細かく分割する必要はないという点も重要なポイントです。「マイクロサービスは小さければ小さいほど良い」という誤解を持っている方がいますが、過度な分割はサービス間通信のオーバーヘッドやデバッグの困難さを招きます。面接では「最初はやや粗めに分割し、必要に応じて段階的に細分化していく」というアプローチを示すと、実践的な知見を持っている印象を与えられます。
回答テンプレート - サービス分割の進め方
実際の面接で使えるサービス分割の回答テンプレートを紹介します。このテンプレートに沿って話を進めると、面接官に論理的で整理された印象を与えることができます。
回答の冒頭では、ビジネスドメインの理解から始めましょう。「このシステムの主要なビジネスプロセスを整理させてください」と面接官に確認を取りながら、ユーザーの行動フローを書き出します。ECサイトの例であれば、商品閲覧から注文、決済、配送までの一連のフローを描くことで、自然にサービスの境界が見えてきます。
サービスの境界が見えてきたら、各サービスが持つべきデータと責務を明確にします。ここで大切なのは「このサービスだけが、このデータの正規化された状態を持つ」という原則です。たとえば商品の価格情報は商品カタログサービスが管理し、注文サービスは注文時点の価格スナップショットを保持する、という設計方針を示せると、データの一貫性について理解していることが伝わります。
回答の締めくくりとして、この分割によるメリットとリスクの両方に言及しましょう。各チームが独立して開発・デプロイできるメリットに加え、サービス間のデータ整合性やネットワーク障害への対応が複雑になるデメリットも述べることで、バランスの取れた設計判断ができることをアピールできます。
頻出パターン2 - サービス間通信の設計
サービス分割の次に問われるのが、サービス間の通信方式です。同期通信にするか非同期通信にするか、REST APIにするかgRPCにするかなど、選択肢は多岐にわたります。面接で重要なのは、どれか一つを「正解」として提示するのではなく、ユースケースに応じた使い分けを説明することです。
同期通信が適しているのは、リクエストの結果をすぐにユーザーに返す必要がある場面です。たとえば商品の検索結果を表示する場合、ユーザーは即座にレスポンスを期待しているため、同期的にAPIを呼び出すのが自然です。一方、注文確定後の在庫更新や通知メールの送信など、ユーザーが結果を即座に確認しなくてもよい処理は非同期通信が適しています。
gRPCとREST APIの使い分けについても、面接で頻繁に問われるテーマです。gRPCはバイナリプロトコルを使うため通信効率が高く、サービス内部の通信に適しています。一方、REST APIはHTTPベースで汎用性が高いため、外部に公開するAPIやモバイルアプリとの通信に向いています。このように、それぞれの技術の特性と適した場面をセットで説明できると、理解の深さが伝わります。
非同期通信パターンの説明方法
非同期通信のパターンについて面接で説明する際は、メッセージキューを活用したイベント駆動アーキテクチャの観点から話を展開すると効果的です。単に「メッセージキューを使います」と言うだけでは不十分で、なぜそれが必要なのかという文脈を示すことが求められます。
イベント駆動の設計で大切なのは、サービス間の結合度を下げることです。注文サービスが「注文が作成された」というイベントを発行し、在庫サービスや通知サービスがそれぞれ独立にイベントを購読する形にすると、新しい機能を追加する際にも既存サービスを変更する必要がなくなります。面接では、このような疎結合の利点を具体例とともに説明しましょう。
非同期通信を採用する場合の課題についても触れるべきです。メッセージの重複配信や順序の保証、失敗時のリトライ戦略など、運用上考慮すべき点は多数あります。「冪等性(べきとうせい)を持たせることでメッセージの重複配信に対応する」「デッドレターキューを用意して処理失敗メッセージを捕捉する」といった具体的な対策まで言及できると、実務レベルの知見があると評価されます。
頻出パターン3 - データ管理と整合性の確保
マイクロサービス設計面接で特に難易度が高いのが、データ管理のパターンです。モノリシックなアーキテクチャでは単一のデータベースで整合性を担保できましたが、マイクロサービスでは各サービスが独自のデータストアを持つことが推奨されます。この「Database per Service」パターンをどう説明するかが、面接での評価を大きく左右します。
各サービスが自分のデータベースを持つ理由は、サービスの独立性を確保するためです。共有データベースを使うと、あるサービスのスキーマ変更が他のサービスに影響を与えたり、特定のサービスのクエリが全体のパフォーマンスを劣化させたりするリスクがあります。独立したデータストアを持つことで、各チームが自分のペースでスキーマを進化させられるようになります。
ところが、独立したデータストアを持つと、サービスをまたぐトランザクションの整合性をどう担保するかが課題になります。面接では「分散トランザクション」というキーワードが出てくることが多いですが、Two-Phase Commitのような強い一貫性を持つアプローチはマイクロサービスでは推奨されないことを理解しておくべきです。代わりに、Sagaパターンによる結果整合性のアプローチが一般的です。
Sagaパターンの回答テンプレート
Sagaパターンについて面接で問われた場合の回答テンプレートを紹介します。Sagaパターンとは、複数のサービスにまたがるビジネストランザクションを、各サービスのローカルトランザクションの連鎖として実現するパターンです。各ステップが成功すれば次のステップに進み、いずれかのステップが失敗した場合は補償トランザクション(元に戻す処理)を実行して整合性を保ちます。
具体例として注文処理のSagaを説明すると効果的です。注文サービスが注文を作成し、在庫サービスが在庫を確保し、決済サービスが支払いを処理するという流れの中で、もし決済に失敗した場合は、在庫の確保を取り消し、注文をキャンセルするという補償トランザクションが実行されます。この一連の流れをホワイトボードに図示しながら説明すると、面接官にも理解しやすくなります。
Sagaパターンにはオーケストレーション方式とコレオグラフィ方式の2つのアプローチがあることも説明しましょう。オーケストレーションは中央のコーディネーターがフローを管理する方式で、フローの可視性が高い反面、コーディネーターが単一障害点になるリスクがあります。コレオグラフィは各サービスがイベントに反応して処理を進める方式で、疎結合である反面、フロー全体の把握が難しくなります。面接では両方の特徴を述べた上で、ユースケースに応じた選択理由を説明することが重要です。
頻出パターン4 - APIゲートウェイとBFF
マイクロサービスが増えてくると、クライアントが複数のサービスを直接呼び出す必要が出てきます。これはクライアント側の複雑さを増すだけでなく、セキュリティやパフォーマンスの観点からも望ましくありません。そこで登場するのが、APIゲートウェイとBFF(Backend for Frontend)パターンです。
APIゲートウェイは、クライアントとマイクロサービス群の間に位置するリバースプロキシのような存在です。認証・認可の一元管理、レート制限、リクエストのルーティング、レスポンスの集約などを担当します。面接でAPIゲートウェイについて話す際は、どのような責務を持たせるかを明確にすることが重要です。あまりに多くのビジネスロジックをゲートウェイに載せてしまうと、結局モノリスと変わらなくなってしまうためです。
BFFパターンは、フロントエンドの種類(Web、モバイル、デスクトップなど)ごとに専用のバックエンドを用意するアプローチです。Webアプリケーションとモバイルアプリでは必要なデータの粒度やフォーマットが異なることが多いため、それぞれに最適化されたAPIを提供することで、フロントエンドの開発効率を高められます。面接では「なぜ一つの汎用APIではダメなのか」という点を、具体的なユースケースを交えて説明しましょう。
ゲートウェイパターンの実践的な説明
面接でAPIゲートウェイのパターンを説明する際には、実際の技術選択にも触れると説得力が増します。Amazon API GatewayやKong、Envoyなどのプロダクトを知っているだけでなく、それぞれの特性を理解した上で選択理由を述べられると高評価です。
ゲートウェイで実装すべき機能として、まず認証・認可の統一があります。各マイクロサービスに認証ロジックを分散させると保守が困難になるため、ゲートウェイでJWTトークンの検証を行い、認証済みのリクエストだけをバックエンドに転送する構成が一般的です。この設計方針を面接で説明する際は、セキュリティの一元管理とサービスの責務分離という二つの観点から話すと整理して伝わります。
レスポンスの集約(Aggregation)もゲートウェイの重要な機能です。ユーザーのダッシュボード画面を表示する場合、プロフィール情報、注文履歴、お気に入り商品など、複数のサービスからデータを取得する必要があります。クライアントが個別にAPIを呼び出すと、ネットワークラウンドトリップが増えてパフォーマンスが低下します。ゲートウェイで複数のサービスを並行して呼び出し、結果を集約してクライアントに返すことで、この問題を解決できます。
頻出パターン5 - 障害対応とレジリエンス設計
マイクロサービスアーキテクチャにおいて、障害は「起こるかもしれない」ものではなく「必ず起こる」ものとして設計する必要があります。サービスの数が増えるほど障害の発生確率は高まるため、一つのサービスの障害がシステム全体に波及しない仕組みが不可欠です。面接では、この「障害を前提とした設計」をどれだけ深く理解しているかが試されます。
サーキットブレーカーパターンは、障害対応の設計面接で必ずと言っていいほど登場するテーマです。あるサービスへの呼び出しが連続して失敗した場合に、一定期間そのサービスへのリクエストを遮断し、フォールバックの応答を返す仕組みです。電気回路のブレーカーと同じ発想で、障害の連鎖(カスケード障害)を防ぐ役割を果たします。
リトライ戦略も重要なトピックです。単純なリトライではなく、Exponential Backoff(指数的な待機時間の増加)にJitter(ランダムな揺らぎ)を加えたリトライ戦略を説明できると好印象です。すべてのクライアントが同じタイミングでリトライすると、障害中のサービスにさらに負荷がかかってしまうため、Jitterで分散させるのがベストプラクティスです。この細かい配慮まで言及できると、大規模システムの運用経験が感じられる回答になります。
障害シナリオの回答テンプレート
面接で「サービスAが応答しなくなった場合、どう対応しますか」と聞かれた場合の回答テンプレートを紹介します。この種の質問では、段階的なアプローチを示すことが効果的です。
最初の段階として、タイムアウトの設定について説明します。各サービスの呼び出しには適切なタイムアウト値を設定し、応答がない場合は速やかに諦めてエラーハンドリングに移行します。タイムアウト値はサービスの平均応答時間のp99(99パーセンタイル)を基準に設定し、必要に応じて調整するという説明が現実的です。
サーキットブレーカーが発動した後のフォールバック戦略も準備しておきましょう。フォールバックにはいくつかのパターンがあります。キャッシュされたデータを返す方法、デフォルト値を返す方法、機能を縮退させる方法などです。たとえば商品レコメンデーションサービスが停止した場合、パーソナライズされたおすすめの代わりに、人気商品ランキングをキャッシュから返すといった対応が考えられます。
最終的な回答の締めくくりとして、可観測性(Observability)の重要性に触れましょう。分散トレーシング、構造化ログ、メトリクスの三本柱を活用して、障害発生時に迅速に原因を特定できる体制を整えることが、マイクロサービスの運用には欠かせません。具体的なツールとしてJaeger、ELK Stack、Prometheusなどを挙げながら説明すると、実践的な知識をアピールできます。
面接本番で使える回答の組み立て方
マイクロサービス設計面接では、個々の技術知識だけでなく、回答全体の構成力も評価の対象になります。どんなに深い知識を持っていても、それを整理して伝えられなければ高い評価は得られません。ここでは、面接本番で使える回答の組み立てフレームワークを紹介します。
回答の出発点は、必ず要件の確認から始めましょう。「想定されるユーザー数はどのくらいですか」「データの一貫性はどの程度求められますか」「最も重要な非機能要件は何ですか」といった質問を面接官に投げかけることで、設計の方向性を定めるとともに、要件を明確にする能力をアピールできます。
要件が明確になったら、ハイレベルな設計から始めて段階的に詳細化していく「トップダウンアプローチ」をとりましょう。いきなりデータベースのスキーマや具体的な技術スタックの議論に入るのではなく、システム全体のコンポーネント構成を描いてから、各コンポーネントの詳細に踏み込んでいきます。面接官も全体像を把握してから詳細を議論したいと考えているため、この進め方は双方にとって効率的です。
設計の各段階で意識すべきなのが、代替案の提示とトレードオフの説明です。「こういう方法もありますが、今回の要件では〇〇が重要なので、この方法を選びました」という形で、複数の選択肢を検討した上で判断していることを示しましょう。一つの方法しか知らないのではなく、状況に応じた最適な選択ができるエンジニアだという印象を与えられます。
まとめ
マイクロサービス設計面接で頻出する5つのパターンとして、サービスの分割と境界設計、サービス間通信の設計、データ管理と整合性の確保、APIゲートウェイとBFF、障害対応とレジリエンス設計について解説しました。これらのパターンは独立したテーマではなく、実際の設計では組み合わせて考える必要があります。
面接で高い評価を得るためのポイントは、技術的な知識を披露することではなく、ビジネス要件から出発して論理的に設計判断を組み立てる姿勢を見せることです。そして、どの選択にもトレードオフがあることを理解し、状況に応じた最適解を導き出せることが、シニアレベルのエンジニアとして評価される条件です。
面接対策としては、この記事で紹介した回答テンプレートをベースに、自分の経験や具体例を織り交ぜて練習することをおすすめします。実際のプロジェクトでマイクロサービスに関わった経験がなくても、個人プロジェクトや技術書の学びをもとに自分なりの言葉で語れるよう準備しておけば、面接官にも熱意と理解度が伝わるはずです。