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試用期間の注意点 - エンジニアが知っておくべき権利と対策

この記事のまとめ

  • 試用期間中も労働契約は成立しており、正当な理由のない解雇は法律で認められていない
  • 試用期間中の給与や待遇が本採用時と異なる場合は、労働条件通知書で事前に確認しておくべき
  • 試用期間を確実に乗り越えるには、技術力よりもコミュニケーションと「チームに溶け込む姿勢」が鍵になる

試用期間の法的な位置づけを正しく理解する

転職先の企業に入社すると、多くの場合3か月から6か月の試用期間が設定される。「試用」という言葉の響きから、この期間は簡単に解雇されるのではないかと不安に感じるエンジニアも少なくない。しかし実際のところ、試用期間中であっても労働契約は成立しており、企業が自由に社員を解雇できるわけではない。

法的には、試用期間は「解約権留保付きの労働契約」と解釈されている。これは、一定の条件のもとで企業が契約を解除できる権利を留保しているという意味だ。通常の正社員よりも解雇の要件がやや緩やかになる面はあるものの、それでも「合理的な理由」がなければ解雇は認められない。「なんとなく合わないから」「チームの雰囲気に馴染めていない気がするから」という漠然とした理由での解雇は、裁判になれば無効とされる可能性が高い。

試用期間の長さについても法律上の明確な制限はないが、一般的には3か月から6か月が標準だ。1年を超える試用期間は合理性を欠くとして、裁判所が無効と判断した事例もある。入社前に労働条件通知書や雇用契約書で試用期間の長さを確認し、不明な点があれば人事に質問しておこう。試用期間の延長が可能な条件が定められている場合もあるので、その点も確認しておくと安心だ。

試用期間中の解雇が認められる条件

試用期間中に解雇が認められるのは、採用時に予見できなかった事実が判明した場合や、社員としての適格性に重大な問題がある場合に限られる。具体的には、経歴詐称が発覚した場合、著しい能力不足が証明された場合、就業規則に違反する行為が確認された場合、無断欠勤を繰り返した場合などが該当する。

エンジニアの場合、「能力不足」が解雇理由になるケースは特に注意が必要だ。ただし、面接で伝えていたスキルレベルと実際の能力に著しい乖離がある場合は別として、入社後に期待されたほどのパフォーマンスが出せないだけでは、すぐに解雇が認められるわけではない。企業には教育指導や配置転換などの改善措置を講じる義務があり、それらを行ったうえでなお改善が見られない場合に、ようやく解雇が検討される。

試用期間開始後14日以内であれば、労働基準法上の解雇予告が不要とされている。しかし、14日を過ぎた後に解雇する場合は、30日前の予告または30日分以上の解雇予告手当の支払いが必要だ。これは試用期間中であっても正社員と同じ取り扱いだ。こうした法律の知識を持っておくことで、万が一のときに自分の権利を適切に守ることができる。

給与・待遇面で確認すべきポイント

試用期間中の給与が本採用後と異なる場合があることは、見落とされがちなポイントだ。求人票に「月給30万円(試用期間中は28万円)」と記載されているケースがあるように、試用期間中は基本給が低く設定されている企業も存在する。この差は法的には問題ないが、入社前に必ず確認しておくべき事項だ。

給与だけでなく、賞与の扱いについても注意が必要だ。試用期間中に支給日を迎える賞与が満額もらえるのか、それとも按分計算されるのか、あるいは試用期間中は対象外なのかは企業によって異なる。中途入社の場合、入社時期によっては初回の賞与がゼロになることもある。こうした条件はオファーレターや労働条件通知書に記載されているはずなので、承諾前にしっかり確認しておこう。

社会保険の適用については、試用期間中であっても正社員として雇用されている限り、健康保険・厚生年金・雇用保険・労災保険はすべて入社日から適用される。試用期間を理由に社会保険に加入させないのは違法だ。有給休暇についても、入社日から6か月経過すれば法定の年次有給休暇が付与される。試用期間中であることを理由に付与しないのは認められない。これらの権利を把握しておくことは、安心して働くための土台になる。

試用期間中の評価ポイントを把握する

試用期間を無事に通過するためには、企業がこの期間に何を見ているのかを理解しておくことが大切だ。技術力の高さだけが評価されると思いがちだが、実際にはそれ以外の要素のほうが重視される場面が多い。試用期間中に企業が見ているのは、大きく分けて「組織への適応力」「コミュニケーション能力」「業務遂行の姿勢」の3つだ。

組織への適応力とは、チームの働き方やコミュニケーションスタイルにどれだけ柔軟に合わせられるかということだ。前職のやり方にこだわって「前の会社ではこうしていた」と主張し続けるのは、たとえそれが正論であっても試用期間中は避けたほうがよい。まずはチームのやり方を理解し、信頼関係を構築したうえで改善提案を行うほうが、はるかに受け入れられやすい。

コミュニケーション能力とは、報告・連絡・相談を適切に行えるかどうかだ。エンジニアの仕事は個人作業が多いイメージがあるが、実際にはチーム内での情報共有や進捗報告、困ったときに素直に質問できるかどうかが、試用期間の評価に大きく影響する。「分からないことを分からないと言える」ことは、能力の低さではなく、チームワークの素養として高く評価されるものだ。

早期に成果を出すための行動指針

試用期間を安心して乗り越えるために、入社直後からどのような行動を心がけるべきかを整理しておこう。エンジニアとして入社した場合、最初の2週間はオンボーディング期間としてチームの開発環境やプロセスに慣れる時間に充てられることが多い。この期間を受け身で過ごすのではなく、積極的に学びに行く姿勢を見せることで、周囲からの信頼を早期に獲得できる。

開発環境のセットアップは、最初に取り組む作業であり、かつ最も印象に残りやすいタスクだ。手順書を読んで黙々とセットアップするだけでなく、手順書に不備があれば修正してプルリクエストを出す、ハマったポイントをドキュメントに追記するといった行動は、「チームに貢献しようとしている」という姿勢として評価される。小さな改善であっても、入社直後にこうした動きを見せる人は、チームからの信頼を得やすい。

最初に担当するタスクは、意図的に難易度を抑えた「オンボーディングタスク」が用意されていることが多い。ここで大切なのは、完璧な成果物を出そうとして時間をかけすぎるよりも、早い段階でドラフトを見せてフィードバックをもらうサイクルを回すことだ。チームの開発フローに早く馴染むためにも、プルリクエストを小さな単位で出し、レビューコメントに素直に対応する姿勢を見せよう。技術的に優れたコードを書くことよりも、チームのコーディング規約やレビュー文化に合わせたコードを書くことが、この時期には求められる。

試用期間中に起きやすいトラブルとその対処法

試用期間中は新しい環境への適応に追われるため、思わぬトラブルに遭遇することがある。よくあるのは、面接で聞いていた仕事内容と実際の業務が大きく異なるケースだ。バックエンドエンジニアとして入社したのにフロントエンドの業務がメインだった、あるいは開発の仕事だと聞いていたのに運用保守がほとんどだった、といった事態は残念ながら起こりうる。

こうした場合、すぐに「話が違う」と不満をぶつけるのではなく、まずは上司やマネージャーとの1on1で状況を確認するのが適切だ。一時的な人員配置の都合でそうなっているのか、それとも恒常的にその業務を担当する予定なのかで、対応は変わってくる。オファーレターや面接時に確認した業務内容と明らかに異なる場合は、それを根拠として交渉する余地がある。

試用期間中に「この会社は自分に合わない」と感じた場合、無理に耐え続ける必要はない。試用期間は企業が社員を評価する期間であると同時に、社員が企業を評価する期間でもある。合わないと感じた原因が解消可能なものか、それとも組織の本質的な部分に根ざすものかを見極めたうえで、場合によっては試用期間中に退職を検討するのも一つの選択肢だ。試用期間中の退職であれば、職歴として記載しない判断をする転職者もいる。ただしこの判断は慎重に行う必要があるため、転職エージェントやキャリアの相談相手に意見を聞いてから動くのがよいだろう。

試用期間後の本採用に向けて意識したいこと

試用期間の終盤になると、本採用の判断に向けた面談や評価が行われる。この面談は一方的に評価を受ける場ではなく、自分からも入社後の感想や今後のキャリアの方向性を伝える場として活用するのがよい。「この3か月で学んだこと」「今後チームに貢献していきたい領域」「中長期的に挑戦したい技術」といったテーマを事前に整理しておくと、面談がより実りあるものになる。

試用期間中の実績を自分なりにまとめておくことも有効だ。対応したタスクの一覧、貢献した改善提案、チーム内でのコミュニケーションの工夫など、具体的な行動を記録しておくことで、面談の際に自分の成長や貢献を客観的に伝えることができる。エンジニアは自分の仕事を言語化するのが苦手な人も多いが、試用期間中の実績を振り返る作業は、自己認識を深めるうえでも価値のある取り組みだ。

本採用が正式に決まったら、それは新しいスタートラインでもある。試用期間中に観察してきたチームの課題や改善の余地を、本採用後に少しずつ提案していくことで、入社時の「新しいメンバー」から「チームの一員」へと自然にポジションが変わっていく。焦らず、しかし着実に信頼を積み重ねていくことが、転職先で長く活躍するための土台になるだろう。

まとめ

試用期間は不安を感じやすい時期だが、法的には労働者の権利がしっかりと守られていることを知っておけば、過度に恐れる必要はない。試用期間中の給与や待遇の条件は入社前に確認し、解雇の条件や社会保険の適用についても正しい知識を持っておこう。

試用期間を乗り越えるカギは、圧倒的な技術力ではなく、チームに溶け込む姿勢と適切なコミュニケーションだ。小さな貢献を積み重ね、フィードバックを素直に受け入れ、チームのやり方を尊重することで、試用期間は必ず乗り越えられる。本採用後の長期的な活躍に向けて、この期間を成長の機会として前向きに捉えてほしい。

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