この記事のまとめ
- 一般的なプログラマーの英語タイピング速度は毎分50~80ワード程度が標準的な目安
- 職種によって求められるタイピングの質が異なり、フロントエンドは記号入力、インフラはコマンド入力の速さが重要
- タイピング速度よりも正確性やコード品質のほうが、実務では圧倒的に評価される
「自分のタイピング速度ってプログラマーとして十分なんだろうか」と不安に感じたことはありませんか。隣の席の同僚がものすごい勢いでキーボードを叩いているのを見て、焦りを覚えた経験がある方も少なくないはずです。実は、プログラマーに求められるタイピング速度は職種によってかなり違いがあり、一概に「毎分何ワード以上なければダメ」とは言い切れません。
この記事では、プログラマーのタイピング速度について職種別のベンチマークを示しながら、速度以外に重視すべきポイントについても詳しく解説します。自分のタイピング速度がどのレベルにあるのかを把握し、今後のスキルアップの方向性を考える参考にしてください。
一般的なタイピング速度の基準を知ろう
タイピング速度の話をする前に、そもそもどういう単位で計測するのかを整理しておきましょう。英語圏では「WPM(Words Per Minute)」が標準的な指標として使われています。これは1分間に入力できる単語数のことで、1単語はおおむね5文字として計算されます。日本語の場合は「文字/分」で計測されることが多く、変換操作を含むため純粋な打鍵速度とは少し異なります。
一般的なオフィスワーカーの英語タイピング速度は毎分40ワード前後と言われています。事務職で毎日タイピングをしている人なら毎分50~60ワード、タイピングが得意な人で毎分80~100ワードといったところです。プロのタイピストやデータ入力の専門家になると毎分120ワード以上に達することもありますが、これは特殊なケースです。
ところで、日本語タイピングの場合は少し事情が異なります。日本語入力ではローマ字入力またはかな入力に加えて変換操作が必要になるため、英語タイピングと単純に比較することができません。日本語入力において「速い」と言われる水準は、ローマ字入力で毎分300~400打鍵程度です。これは大体1分間に100~130文字程度の日本語を入力できる速度に相当します。
そういえば、タイピング速度を測定するサイトは数多くありますが、測定条件によって結果が大きく変わる点には注意が必要です。用意された文章を写すタイプの測定と、自分で考えながら入力するタイプの測定では、当然ながら後者のほうがずっと遅くなります。プログラミングではコードを考えながら入力するため、タイピングテストの結果がそのまま実務の入力速度を反映するわけではありません。
プログラマーのタイピング速度はどの程度か
プログラマーは一般のオフィスワーカーと比べて、毎日大量のテキストをキーボードから入力しています。そのため、平均的なタイピング速度はオフィスワーカーよりも速い傾向にあります。プログラマー全体の平均は毎分50~80ワード程度で、経験豊富な開発者になると毎分80~100ワードに達する人も珍しくありません。
ただし、ここで大切なポイントがあります。プログラミング時のタイピングは、通常の英文タイピングとは性質がかなり異なるのです。コードを書くときには括弧やブレース、セミコロン、イコール、アンダースコアといった記号を頻繁に使います。通常のタイピングテストではこうした記号の入力はあまり求められないため、テストでは毎分80ワード出せる人でも、コーディング中は毎分50ワード程度に落ちることがあります。
実は、プログラミングにおけるタイピング速度には「実効速度」という概念のほうが適切かもしれません。コードを書いているとき、私たちは純粋にキーを打っているだけではなく、変数名を考えたり、次の行のロジックを頭の中で組み立てたり、IDEの補完機能を使ったりしています。こうした操作をすべて含めた「コードが出来上がる速度」が、プログラマーにとっての本当のタイピング速度と言えるでしょう。
職種別のタイピング速度ベンチマーク
プログラマーと一口に言っても、フロントエンドエンジニアとインフラエンジニアでは日常的に打つ内容がまったく違います。職種ごとに求められるタイピングの特徴を見ていきましょう。
フロントエンドエンジニア
フロントエンドエンジニアは、HTML、CSS、JavaScriptを中心にコードを書きます。HTMLはタグの開き閉じが多く、山括弧やスラッシュを頻繁に打つことになります。CSSではコロンやセミコロン、ブレースの入力が多く、JavaScriptでは括弧やドット、アロー関数の記法など、記号の割合がとても高いのが特徴です。
そのため、フロントエンドエンジニアに求められるのは、純粋なタイピング速度よりも記号入力のスムーズさです。英語タイピングで毎分60ワード程度あれば基本的には困りませんが、括弧やブレースの入力でつまずいてストレスを感じるようなら、記号キーに慣れるための練習をするとよいでしょう。Emmetのようなショートカット記法を覚えることで、HTMLやCSSの入力速度は飛躍的に上がります。
また、最近のフロントエンド開発ではReactやVueなどのフレームワークを使うことが一般的で、コンポーネントのテンプレートを書く機会が多いです。JSXの記法はHTMLとJavaScriptが混在するため、両方の入力に慣れていることが生産性に直結します。エディタのスニペット機能を使いこなせば、定型的なコード構造は数文字の入力で展開できるため、実質的なタイピング量を大幅に削減できます。
バックエンドエンジニア
バックエンドエンジニアは、Python、Java、Go、Rubyなどの言語でサーバーサイドのロジックを記述します。フロントエンドと比べるとHTMLタグのような定型的な記述は少なく、ロジックの構築に頭を使う時間が長い傾向にあります。そのため、タイピング速度そのものよりも、思考のスピードが生産性を大きく左右します。
バックエンドの開発では、クラス名やメソッド名、変数名をわかりやすく命名することが求められます。良い名前をつけるためには、打鍵速度よりも英語の語彙力やコーディング規約への理解のほうが重要です。camelCaseやsnake_caseといった命名規則に沿って、読みやすい名前をスラスラと入力できることが望ましいでしょう。
実はバックエンドエンジニアの場合、タイピング速度が最も問われるのはコードを書いているときではなく、コードレビューのコメントを書いているときかもしれません。プルリクエストに対して丁寧なレビューコメントを素早く書けることは、チームの開発効率に大きく寄与します。毎分60~70ワード程度の速度があれば、バックエンド開発において速度がボトルネックになることはまずないでしょう。
インフラエンジニア・SRE
インフラエンジニアやSRE(Site Reliability Engineer)の仕事は、コードを書く機会がアプリケーションエンジニアよりも少ないように思われがちですが、実際にはかなりの量のテキスト入力をしています。Terraformなどのインフラストラクチャ・アズ・コードの設定ファイル、CI/CDパイプラインの定義、シェルスクリプト、Kubernetes のマニフェストファイルなど、入力すべきものは多岐にわたります。
インフラエンジニアに特徴的なのは、ターミナル上でのコマンド入力の速さが求められることです。サーバーにSSHで接続してトラブルシューティングを行う場面では、コマンドを素早く正確に打てることが重要になります。特に障害対応中はプレッシャーの中で作業することになるため、よく使うコマンドは指が覚えている状態が理想的です。
そういえば、インフラエンジニアの世界ではタイプミスが致命的な結果を招くことがあります。本番環境で誤ったコマンドを実行してしまった事例は業界で数多く報告されています。有名なところでは、rm -rfコマンドの誤実行や、間違ったデータベースに対するDROP TABLEの実行などがあります。インフラエンジニアにとっては、速度よりも正確性が命綱なのです。毎分50ワード程度でも、正確に打てるほうがよほど価値があります。
データサイエンティスト・MLエンジニア
データサイエンティストやMLエンジニアは、PythonやRを使ってデータ分析や機械学習モデルの構築を行います。Jupyter Notebookのようなインタラクティブな環境で作業することが多く、コードを少し書いては実行結果を確認する、というサイクルを繰り返します。そのため、一度に大量のコードを書き続けることは比較的少ない職種です。
この職種で重要なのは、pandas、NumPy、scikit-learnといったライブラリのAPIを正確に入力できることです。ライブラリ名やメソッド名が長いことが多いため、IDEの自動補完機能をうまく活用することが生産性の鍵になります。タイピング速度は毎分50ワード程度あれば十分で、それよりもデータの傾向を読み取る力や、適切な前処理手法を選択する判断力のほうがずっと重要です。
ところで、データサイエンティストの間では「コードは読むものであって書くものではない」という格言があります。既存のコードを読んで理解し、必要な箇所だけを修正するという作業パターンが多いため、速く書くことよりも正確に読み取る能力が重視されるのです。
モバイルアプリエンジニア
iOS(Swift)やAndroid(Kotlin)の開発を行うモバイルアプリエンジニアは、XcodeやAndroid StudioといったIDEに大きく依存します。これらのIDEは強力なコード補完機能を備えており、クラス名やメソッド名の最初の数文字を入力するだけで候補が表示されます。そのため、純粋なタイピング速度の重要性は比較的低い職種です。
モバイルアプリ開発で時間がかかるのは、UIの微調整やデバイスごとの動作確認など、タイピングとは関係のない作業です。ビルドの待ち時間も長いことが多く、1日のうちタイピングしている時間の割合はほかの職種よりも低い傾向にあります。毎分50~60ワード程度の速度があれば、モバイル開発においてタイピングが足を引っ張ることはないでしょう。
職種別タイピング速度の目安一覧
ここまでの内容を表にまとめると、次のようになります。
| 職種 | 推奨速度(WPM) | 重視すべきポイント |
|---|---|---|
| フロントエンドエンジニア | 60~80 | 記号入力のスムーズさ、Emmetの活用 |
| バックエンドエンジニア | 60~70 | 命名の正確さ、レビューコメントの速さ |
| インフラエンジニア・SRE | 50~70 | コマンド入力の正確性、タイプミスの防止 |
| データサイエンティスト | 50~60 | IDE補完の活用、ライブラリAPIの知識 |
| モバイルアプリエンジニア | 50~60 | IDE補完の活用、ショートカットの習熟 |
この表はあくまで目安であり、これを下回っているからといって即座に問題があるわけではありません。重要なのは、タイピング速度が自分の思考の妨げになっていないかどうかです。頭の中でコードの構造が見えているのに指が追いつかないと感じるなら改善の余地がありますが、特にストレスなく入力できているなら現状の速度で十分です。
タイピング速度よりも正確性が大切な理由
プログラミングにおいて、速度と正確性のどちらを優先すべきかと聞かれたら、間違いなく正確性です。これには明確な理由があります。タイプミスによるバグは、見つけるのに時間がかかることが多いのです。
変数名を1文字間違えただけで、コンパイルエラーならまだ救いがありますが、動的型付け言語では実行時まで気づかないことがあります。JavaScriptでundefinedが返ってきて「なぜだ」と悩んだ末に、変数名のスペルミスが原因だったという経験は、多くのエンジニアが持っているでしょう。こうしたバグの原因調査に費やす時間は、ゆっくりでも正確にタイピングすることで節約できる時間をはるかに上回ります。
実は、正確なタイピングを意識することで、自然とタイピング速度も上がっていくものです。ミスタイプを修正するためのバックスペースやDelキーの操作は、思った以上に時間を浪費しています。正確に打つ習慣が身につくと、修正にかかる時間がなくなる分だけ結果的な入力速度が向上するのです。「急がば回れ」とはまさにこのことです。
また、コードの読みやすさという観点でも正確性は重要です。一貫性のある命名、適切なインデント、正しいスペーシングなど、コードの見た目を整えることは、チーム開発では必須のスキルです。これらは速く打つことよりも、丁寧に打つことで実現されます。リンターやフォーマッターに任せられる部分もありますが、基本的なコーディングスタイルへの意識は速度よりも優先されるべきです。
タイピング速度を効率的に改善する方法
現在のタイピング速度に不満がある方のために、効率的な改善方法をいくつか紹介します。ただし、前述のとおり「思考を妨げない程度」まで達していれば十分であり、プロのタイピストを目指す必要はありません。
タッチタイピングの完全習得
意外に思われるかもしれませんが、プログラマーの中にもタッチタイピング(ブラインドタッチ)が完全にはできていない方がいます。画面を見ずにキーボードを打てることは、速度向上の大前提です。指の配置がまだ不安定な場合は、基本的なタッチタイピングの練習から始めることをおすすめします。ホームポジションをしっかり覚え、各指が担当するキーを意識して練習すれば、2~3週間で大きな改善が見られるはずです。
タッチタイピングで特に重要なのは、数字キーと記号キーの入力です。プログラミングではShiftキーとの組み合わせで入力する記号が多いため、この部分が苦手だと実務でのストレスが大きくなります。括弧やブレース、セミコロン、コロンなどを意識して練習することで、コーディング時の実効速度が大幅に上がります。
プログラミング特化の練習
一般的なタイピング練習ソフトは日常的な文章の入力を練習するものですが、プログラマーであればコード入力に特化した練習をするほうが効率的です。typing.ioやSpeedCoder といったサービスでは、実際のプログラミング言語のコードを題材にしてタイピング練習ができます。使い慣れた言語のコードで練習することで、記号の入力パターンが身体に染み込んでいきます。
エディタの使いこなし
タイピング速度そのものを上げるのではなく、同じ結果を少ないキーストロークで達成する方法もあります。VSCodeやJetBrains系のIDEには、マルチカーソル編集、スニペット、Emmet展開、リファクタリング機能など、タイピング量を削減するための機能が豊富に用意されています。これらを使いこなすことで、タイピング速度を上げなくても実効的なコーディング速度を大幅に改善できます。
エディタのショートカットキーを覚えることも、キーストローク削減には効果的です。たとえばVSCodeの「行の複製」「行の移動」「マルチカーソル」「ファイル検索」「シンボル検索」といったショートカットは、一度覚えてしまえば毎日何十回と使うことになり、累積的な時間節約は膨大です。
まとめ
プログラマーのタイピング速度は、職種によって求められるレベルや特徴が異なります。おおむね毎分50~80ワード程度が一般的な目安で、この範囲内であれば実務でタイピング速度が問題になることはほとんどありません。
速度よりも重要なのは正確性です。タイプミスによるバグの原因調査やコードの修正に費やす時間を考えると、ゆっくりでも正確に入力できるほうが結果的に生産性は高くなります。あわせて、エディタの機能やショートカットを活用することで、タイピング量そのものを減らすアプローチも有効です。
自分のタイピング速度が気になっている方は、まずは現在の速度を測定してみてください。そのうえで、速度が思考の妨げになっているかどうかを冷静に判断し、必要であればタッチタイピングの基礎固めやプログラミング特化の練習に取り組むとよいでしょう。大切なのは、タイピング速度を上げること自体を目的にしないことです。