ホーム > エンジニアのREADME作成ベストプラクティス - 読まれるドキュメントの書き方

エンジニアのREADME作成ベストプラクティス - 読まれるドキュメントの書き方

GitHubでリポジトリを開いたとき、最初に目に飛び込んでくるのがREADMEです。ところが、多くのプロジェクトではREADMEがほぼ空っぽだったり、初期テンプレートのまま放置されていたりします。「コードを読めば分かるでしょ」と思うかもしれませんが、実際にはREADMEの出来がプロジェクト全体の印象を左右するのです。

実は、採用面接でポートフォリオとしてGitHubリポジトリを見せたとき、面接官が最初に読むのはコードではなくREADMEだったりします。「このプロジェクトは何をするものなのか」「どうやって動かすのか」「どんな技術を使っているのか」。こうした情報がREADMEにきちんと書かれているかどうかで、あなたのエンジニアとしての印象が大きく変わります。

この記事では、「読まれるREADME」を書くための具体的なノウハウを紹介します。個人プロジェクトからチーム開発、オープンソースまで、あらゆる場面で使える実践的なテクニックをお伝えしていきます。

READMEはプロジェクトの「玄関」である

READMEファイルの歴史は意外と古く、1970年代のソフトウェア配布にまで遡ります。当時はテープやディスクで配布されるソフトウェアに「まず読んでください(READ ME)」というテキストファイルが同梱されていました。半世紀が経った今も、READMEはソフトウェアプロジェクトにおいて最初に読まれるドキュメントという役割を変えていません。

GitHubやGitLabといったプラットフォームでは、リポジトリのトップページにREADME.mdの内容が自動的に表示されます。これは、READMEがプロジェクトの「玄関」であることを意味しています。住宅に例えるなら、玄関が散らかっている家に入りたいと思う人はいないでしょう。プロジェクトも同じで、READMEが整っていないリポジトリに対して、コントリビュートしたい、使ってみたいと思う人は減ってしまいます。

そういえば、オープンソースプロジェクトの調査で面白いデータがあります。READMEが充実しているプロジェクトは、そうでないプロジェクトに比べてスターやフォークの数が明らかに多い傾向にあるのです。これは「プロジェクトの中身が良い」からスターがつくのか、「READMEが良い」からスターがつくのか、どちらとも言えません。ただ確実に言えるのは、READMEが貧弱なプロジェクトは、そもそも人の目に留まる機会を逃しているということです。

READMEに必ず含めるべきセクション

「READMEには何を書けばいいのか」。この問いに対する答えは、プロジェクトの種類や規模によって異なります。しかし、どんなプロジェクトでも共通して含めるべき要素がいくつかあります。ここでは、それぞれのセクションについて、なぜ必要なのか、どう書くべきなのかを解説します。

最も重要なのは、プロジェクトの概要説明です。このプロジェクトが何をするものなのか、誰のためのものなのかを、最初の数行で伝える必要があります。技術的な詳細に踏み込む前に、「このツールを使えば、APIのレスポンスタイムを自動計測して可視化できる」のように、一言で価値が伝わる説明を書きましょう。エレベーターピッチを想像すると分かりやすいかもしれません。30秒で相手の興味を引けるかどうかが勝負です。

概要の次に来るべきは、インストール方法とセットアップ手順です。プロジェクトに興味を持った人が「使ってみよう」と思ったときに、すぐに動かせる状態にたどり着けることが大切です。依存関係のインストール、環境変数の設定、データベースのセットアップなど、初回起動に必要なすべてのステップを漏れなく記述します。「自分のPCでは動く」は説明として不十分で、前提条件(OSのバージョン、ランタイムのバージョンなど)も明記しておく必要があります。

さらに、使い方のセクションも欠かせません。インストールが完了した後、実際にどのように使うのかを具体的なコマンド例やコードスニペットとともに示します。CLIツールであれば代表的なコマンドとそのオプション、ライブラリであればimport文と基本的な使用例を載せておくと、利用者がスムーズに使い始められます。

効果的なセクション構成の例

READMEの構成に決まったルールはありませんが、読みやすさと情報の見つけやすさを考えると、ある程度のパターンが見えてきます。プロジェクトの規模が大きくなるほど、構造化された情報設計が重要になります。

小規模な個人プロジェクトであれば、プロジェクト名、概要、インストール方法、使い方、ライセンスの5つのセクションがあれば十分です。これだけでも、「何ができるのか」「どう使うのか」「自分のプロジェクトに組み込んでいいのか」という基本的な疑問に答えることができます。シンプルに保つことで、メンテナンスの負担も小さくなります。

一方、チームで開発しているプロジェクトやオープンソースプロジェクトでは、追加のセクションが必要です。コントリビューションガイドライン、行動規範(Code of Conduct)、変更履歴(Changelog)、トラブルシューティングといったセクションがあると、外部の開発者が参加しやすくなります。特にコントリビューションガイドラインは、プルリクエストを受け付ける際のルールを明確にすることで、メンテナー側の負担を軽減する効果があります。

ところで、READMEのセクション構成をすべてREADME.mdに詰め込む必要はありません。READMEが長くなりすぎると、かえって読みにくくなります。詳細な設定手順はCONFIGURATION.mdに、API仕様はAPI.mdに、コントリビューション方法はCONTRIBUTING.mdに分割し、READMEからリンクを貼るという方法が効果的です。READMEは「目次」のような役割を果たし、詳細は別ファイルに委ねるのが上手なやり方です。

読みやすいREADMEを書くためのライティングテクニック

内容が充実していても、読みにくいREADMEは結局読まれません。ここでは、文章としてのREADMEの質を上げるためのテクニックを紹介します。

最も意識すべきなのは、「読者が誰なのか」を明確にすることです。自分のプロジェクトのREADMEを読む人は、そのプロジェクトについて何も知らない状態でやってきます。開発者本人にとっては当たり前のことでも、初めて見る人にとっては全く分からないことがほとんどです。「うちのチームではみんな知っている」という前提を一度リセットして、外部の開発者が初めてこのリポジトリを訪れたときのことを想像しながら書くのがコツです。

コードブロックの使い方も重要なポイントです。インストール手順やコマンドの実行例を書くときは、必ずコードブロックで囲みましょう。Markdownの機能を活かして言語の指定もしておくと、シンタックスハイライトが効いて視認性が格段に上がります。コマンドの実行結果も一緒に載せておくと、「正しく動いているかどうか」を利用者が判断しやすくなります。

実は、README特有のテクニックとして、バッジ(Badge)の活用があります。CIのステータス、テストカバレッジ、npmのバージョン、ライセンスの種類などをバッジとして表示することで、プロジェクトの健康状態を一目で伝えることができます。Shields.ioを使えば、さまざまな種類のバッジを簡単に生成できます。ただし、バッジの数が多すぎると逆にノイズになるので、本当に伝えたい情報だけを厳選しましょう。

スクリーンショットとデモの活用

「百聞は一見にしかず」という言葉は、READMEにもそのまま当てはまります。特にUIを持つアプリケーションやCLIツールの場合、スクリーンショットやGIFアニメーションがあるだけで、プロジェクトの魅力が格段に伝わりやすくなります。

スクリーンショットを載せるときのコツは、ただ画面を撮るのではなく、プロジェクトの特徴が最も分かりやすい画面を選ぶことです。ダッシュボードのアプリケーションであれば、データが入った状態のスクリーンショットが効果的です。空のダッシュボード画面を見せても、何ができるのかイメージが湧きません。デモデータを用意して、実際に使われている雰囲気が伝わる画像を選びましょう。

CLIツールの場合は、asciinemaやVHSといったツールでターミナルの操作を録画して、GIFやSVGとして埋め込む方法が人気です。静止画では伝わりにくいインタラクティブな操作感を、動画として見せることができます。そういえば、GitHub上で人気のあるCLIツールのリポジトリを見ると、ほぼ例外なくデモのGIFアニメーションが掲載されています。開発者がプロジェクトの価値を「見た目」で訴求することの効果を、よく理解しているのでしょう。

GitHubでのREADMEの見せ方を工夫する

READMEの中身が充実していても、GitHubでの表示を意識していなければもったいないことがあります。ここでは、GitHub特有の機能やMarkdownの拡張を活かした見せ方のテクニックを紹介します。

GitHub Flavored Markdownには、標準のMarkdownにはない便利な機能がいくつかあります。タスクリスト、テーブル、折りたたみ(details/summary)、脚注、アラート記法などがその代表例です。特に折りたたみは、長い設定例やFAQセクションをコンパクトにまとめるのに重宝します。READMEの見た目をすっきり保ちながら、必要な情報にはアクセスできるという、読者にとってありがたい工夫です。

目次(Table of Contents)の設置も効果的なテクニックです。READMEが長くなると、読者が目的の情報にたどり着くまでに時間がかかってしまいます。冒頭に目次を設けておけば、読者はクリック一つで欲しいセクションにジャンプできます。GitHub自体がMarkdownの見出しに自動でアンカーリンクを付与してくれるので、手動でアンカーIDを設定する必要はありません。

ところで、GitHubのREADMEでは画像の配置にもちょっとしたコツがあります。HTMLのimg要素を使えば、画像のサイズ指定や中央揃えが可能です。Markdownの画像記法だけでは細かいレイアウト制御ができないので、特にプロジェクトのロゴやスクリーンショットを綺麗に配置したい場合は、HTMLタグを併用するとよいでしょう。アクセシビリティの観点からも、alt属性を適切に設定することを忘れないでください。

プロフィールREADMEの活用

GitHubには、ユーザー名と同じ名前のリポジトリを作ると、そのREADMEがプロフィールページに表示されるという機能があります。エンジニアとしての自己紹介、得意な技術スタック、主要なプロジェクト、直近の活動などをまとめることで、GitHubプロフィールを一種のポートフォリオとして活用できるのです。

プロフィールREADMEの効果は、転職活動で特に顕著です。採用担当者やテックリードがあなたのGitHubを見たとき、整理されたプロフィールREADMEがあれば、コードを一つ一つ読む前にあなたの全体像を把握できます。GitHub Actionsを使って、最新のブログ記事やコントリビューション状況を自動的に更新するという手法も広く使われています。

実は、プロフィールREADMEのデザインにこだわるエンジニアが増えたことで、github-readme-statsやgithub-profile-trophyといったツールが人気を集めています。コミット数やプルリクエスト数、使用言語の割合などを視覚的に表示できるため、自分の開発活動をアピールするのに便利です。ただし、見た目のデコレーションに凝りすぎると本末転倒になるので、あくまで中身が伝わることを最優先にしましょう。

READMEのメンテナンスを習慣化する方法

READMEは書いて終わりではありません。プロジェクトが進化するにつれて、READMEも一緒に更新していく必要があります。ところが、多くのプロジェクトではREADMEの更新がコードの変更に追いつかず、気づいたときには内容が古くなっているということがよくあります。

この問題を防ぐための方法として、プルリクエストのチェックリストにREADMEの確認項目を入れるというものがあります。APIの仕様が変わったなら、READMEの使い方セクションも更新されているか。依存関係が追加されたなら、インストール手順に反映されているか。こうした確認を仕組みとして開発プロセスに組み込んでおけば、更新漏れを大幅に減らせます。

もう一つ効果的なのは、READMEのテスト自動化です。READMEに書かれたコードスニペットが実際に動くかどうかを自動テストする仕組みを構築できます。Rustのcargo testはドキュメント内のコード例を自動テストする機能を持っていますし、他の言語でもdoctest系のツールを使えば同様のことが可能です。コード例が動かなくなったらCIで検知できるようにしておけば、ドキュメントの正確性を機械的に担保できます。

そういえば、READMEの更新をコミットメッセージで明示するという地味だけれど効果的な方法もあります。「docs: update installation instructions for v2.0」のように、Conventional Commitsの形式でドキュメント更新を記録しておくと、変更履歴を追いやすくなります。チームメンバーが「READMEもちゃんと更新されているな」と認識できるため、ドキュメントへの意識がチーム全体に波及していくのです。

README作成スキルがキャリアにもたらす価値

READMEを上手に書けるスキルは、一見地味に思えるかもしれません。しかし、このスキルはエンジニアのキャリアに想像以上の影響を与えます。ここでは、READMEスキルがどのようにキャリアに結びつくかを考えてみましょう。

オープンソースプロジェクトの世界では、優れたREADMEを持つプロジェクトのメンテナーは、それだけで一定の尊敬を集めます。技術カンファレンスで登壇する機会が生まれたり、企業からスポンサーの打診が来たりすることもあります。READMEは、あなたのプロジェクトの「営業担当」のようなものです。プロジェクトの価値を正確に、魅力的に伝えることができれば、ユーザーもコントリビューターも自然と集まってきます。

転職活動においても、READMEのクオリティは意外なほど見られています。エンジニアの採用面接で「GitHubを見せてください」と言われたとき、リポジトリのREADMEが整っていれば、「この人はコミュニケーション能力が高い」「プロジェクト全体を俯瞰して考えられる人だ」という印象を与えることができます。コードの質が同程度であれば、READMEの質が選考の決め手になることも珍しくありません。

ところで、READMEを書くスキルは、技術ブログの執筆、社内Wikiの整備、設計書の作成といった他の文書作業にも直結します。「読者の視点に立って、必要な情報を必要な順序で伝える」という能力は、あらゆるドキュメント作成の基盤です。READMEを通じてこの能力を磨いておくことで、シニアエンジニアやテックリードといった上位ポジションへの道が開けてくるのです。

よくある失敗パターンとその対策

最後に、READMEでよく見かける失敗パターンと、その対策を紹介します。自分のプロジェクトに当てはまるものがないか、チェックしてみてください。

一番多い失敗は、「環境構築手順が不完全」というものです。開発者本人のマシンには各種ツールがインストール済みなので、手順の一部が抜けていても気づかないことがあります。これを防ぐには、新しいPCやDockerコンテナなど、クリーンな環境でREADMEの手順通りにセットアップを試してみるのが一番確実です。できれば、チームの他のメンバーに「READMEだけを頼りにプロジェクトを動かしてみてほしい」とお願いするのもよいでしょう。

二番目に多いのが、「情報が古くなっている」パターンです。プロジェクトの初期に書いたREADMEが、その後のリファクタリングやバージョンアップに追従していないケースです。特にインストールコマンドが変わっている、設定ファイルの形式が変わっている、廃止されたAPIの使い方が載っているといった問題は、利用者にとって大きなストレスになります。前述の通り、CIでの自動チェックやプルリクエストテンプレートでの確認が効果的な対策です。

三番目のパターンは、「技術的に正確だが、読む気が起きない」というものです。情報は網羅されているのに、構造が分かりにくい、文字が多すぎる、視覚的なアクセントがないといった問題です。この対策としては、適切な見出しの分割、コードブロックやバッジの活用、スクリーンショットの挿入、折りたたみセクションの利用などが挙げられます。READMEも一種のUI設計だと考えて、読者の「目の動き」を意識して構成すると、ぐっと読みやすくなります。

まとめ

READMEは、プロジェクトの顔であり、最初に読まれるドキュメントです。概要、インストール方法、使い方といった基本セクションを押さえた上で、読者の視点に立った分かりやすい記述を心がけることが、良いREADMEの条件です。

READMEを書くことは、単なるドキュメント作成ではなく、「自分の仕事を他者に伝える力」を鍛えるトレーニングでもあります。この力は、チーム開発でのコミュニケーション、転職活動でのアピール、オープンソースでのコントリビューションなど、エンジニアのキャリアのあらゆる場面で活きてきます。

今日からできることとして、まずは自分の一番お気に入りのリポジトリのREADMEを見直してみてはいかがでしょうか。プロジェクトの概要は初めて見る人にも伝わるか、インストール手順は最新の状態か、使い方のコード例は動くか。小さな改善を重ねていくことで、READMEの質はどんどん上がっていきます。そして、その積み重ねが、あなたのエンジニアとしての信頼を築く土台になるのです。

IT転職で年収アップを実現しませんか?

エンジニア・プログラマー向け転職エージェントで、理想のキャリアを手に入れましょう。

おすすめ転職サイトを見る