ホーム > セキュリティエンジニア未経験者が最初に学ぶべきことと学習順序

セキュリティエンジニア未経験者が最初に学ぶべきことと学習順序

「セキュリティエンジニアになりたいけど、何から勉強すればいいんだろう」と悩んでいる方は少なくないはずです。サイバーセキュリティの世界は非常に広く、脆弱性診断、インシデント対応、セキュリティアーキテクチャなど、さまざまな専門分野が存在します。いきなりセキュリティの専門書を手に取ったものの、前提知識が足りなくて挫折してしまった経験がある方もいるのではないでしょうか。

実は、セキュリティを効率よく学ぶには「学ぶ順番」が極めて重要です。セキュリティとは、ネットワークやOS、アプリケーションといったIT基盤の上に成り立つ分野であり、土台となる知識がなければ表面的な理解にとどまってしまいます。逆に言えば、正しい順番で基礎から積み上げていけば、セキュリティの専門知識は驚くほどスムーズに身につきます。

この記事では、未経験からセキュリティエンジニアを目指す方に向けて、最適な学習順序と各段階で学ぶべき具体的な内容をお伝えします。それぞれの学習段階で役立つリソースや期間の目安も紹介するので、自分だけの学習ロードマップを描く参考にしてください。

なぜ学習順序がセキュリティ分野で特に重要なのか

プログラミングやWebデザインなど他のIT分野であれば、比較的すぐに手を動かしながら学び始めることができます。しかし、セキュリティ分野ではそのアプローチが通用しにくいという特徴があります。セキュリティは「守るべき対象」を深く理解していなければ、「どう守るか」を考えることができないからです。

たとえば、Webアプリケーションの脆弱性を診断しようと思ったら、HTTP通信の仕組み、Webサーバーの動作原理、データベースとの連携方法など、Web開発全般の知識が前提として必要になります。SQLインジェクションの対策を理解するにはSQLの基本文法を知っている必要がありますし、XSS(クロスサイトスクリプティング)を理解するにはJavaScriptとDOMの知識が欠かせません。このように、セキュリティの各トピックは必ず別の技術分野と結びついています。

ところで、セキュリティの学習で遠回りしてしまう人の多くは、「ハッキングの技術を早く学びたい」という気持ちが先走って、基礎を飛ばしがちです。気持ちはよく分かりますが、基礎を固めずに上級テクニックに手を出すと、ツールの使い方は覚えても「なぜその攻撃が成立するのか」が理解できず、応用力が身につきません。遠回りに見えても、基礎からしっかり積み上げるアプローチが、結局のところ最短ルートになるのです。

ステップ1: ネットワークの基礎を固める(学習期間の目安: 1~2か月)

セキュリティエンジニアを目指すなら、最初に取り組むべきはネットワークの基礎です。サイバー攻撃の大半はネットワークを介して行われるため、ネットワークの仕組みを理解していないとセキュリティの議論についていくことすら難しくなります。

ネットワーク学習で押さえるべき中核は、TCP/IPモデルとOSI参照モデルの理解です。データがアプリケーション層からネットワーク層、データリンク層を経て物理層へと渡り、相手に届く過程を理解することが出発点になります。特にIPアドレスの仕組み(サブネットマスク、CIDR表記など)、TCPとUDPの違い、DNSの名前解決の流れ、HTTPやHTTPSの通信プロトコルは、セキュリティのあらゆる場面で前提知識として求められます。

実は、ネットワークの基礎を学ぶ段階で、すでにセキュリティの入り口に立っています。ファイアウォールはパケットフィルタリングの仕組みで成り立っていますし、VPNは暗号化されたトンネル通信という概念です。ネットワークを学んでいる最中に「この仕組みをどう悪用するのか、どう守るのか」と考えるクセをつけておくと、後のセキュリティ学習が格段に効率的になります。

ネットワーク学習のおすすめリソース

ネットワークの入門書としては、「マスタリングTCP/IP 入門編」が長年の定番として知られています。ITのバックグラウンドが全くない方であれば、「ネットワークがよくわかる教科書」のような図解が豊富な入門書から始めるのも良い選択です。

資格を目標に据えて学習するのであれば、CompTIA Network+やCCNA(Cisco Certified Network Associate)がおすすめです。特にCCNAはネットワークエンジニアの登竜門として広く認知されており、学習過程でルーティングやスイッチングの実践的な知識が身につきます。CCNAの学習を通じて得られる知識は、セキュリティエンジニアとしてのキャリアでも大いに活きてきます。

そういえば、ネットワーク学習では机上の勉強だけでなく、実際にパケットキャプチャツールを使ってみるのが効果的です。Wiresharkという無料のツールを使えば、自分のPCが行っている通信をリアルタイムで確認できます。HTTPのリクエストとレスポンスを実際に目で見ることで、教科書で学んだ知識が一気に腑に落ちる瞬間があるはずです。これは後のセキュリティ学習でも頻繁に使うツールなので、この段階で慣れておくと一石二鳥です。

ステップ2: OSの基礎知識を身につける(学習期間の目安: 1~2か月)

ネットワークの基礎を固めたら、オペレーティングシステム(OS)の学習に進みましょう。セキュリティエンジニアが扱うシステムの大半はLinuxまたはWindowsで動作しており、OS内部の仕組みを理解していることは必須条件と言っても過言ではありません。

特にLinuxは、セキュリティの世界では避けて通れないOSです。Webサーバーの多くはLinux上で稼働しており、セキュリティツールの大半もLinux環境を前提に開発されています。コマンドラインでの操作に慣れ、ファイルパーミッション、プロセス管理、ユーザー管理、ログの確認方法といった基本操作をマスターすることが重要です。仮想マシン(VirtualBoxやVMwareなど)を使って自分のPCにLinux環境を構築し、実際に操作しながら学ぶのが最も効果的な方法です。

Windowsについても、Active Directoryの基本概念、グループポリシー、イベントログの見方などは理解しておきたいところです。企業環境ではWindows Serverが広く使われており、セキュリティインシデントの調査ではWindowsのログ解析が頻繁に求められます。LinuxとWindows両方の基礎を押さえておくことで、セキュリティエンジニアとしての守備範囲が大きく広がります。

Linux学習のポイント

Linuxの学習では、まずUbuntuやCentOSなどの主要ディストリビューションをインストールするところから始めましょう。GUIではなくターミナルでの操作を中心に学ぶことが大切です。cd、ls、cat、grep、chmod、chown、ps、netstat、ssなどの基本コマンドは、セキュリティ業務で毎日のように使うことになります。

実は、Linuxの学習は後のセキュリティ専門学習と直結しています。Kali Linuxというセキュリティ特化のディストリビューションは、脆弱性診断やペネトレーションテストに必要なツールがあらかじめインストールされた環境です。一般的なLinuxの操作に慣れておけば、Kali Linuxへの移行もスムーズに進みます。

資格としてはLPIC-1(Linux Professional Institute Certification Level 1)やLinuC Level 1が、Linux基礎の体系的な学習に最適です。資格取得を目標にすることで学習のモチベーションが維持しやすくなりますし、転職活動の際にもLinuxの基礎力を客観的に証明できるメリットがあります。

ステップ3: プログラミングの基礎を習得する(学習期間の目安: 2~3か月)

ネットワークとOSの基礎が固まったら、プログラミングの学習に取り組みましょう。セキュリティエンジニアに求められるプログラミングスキルは、開発エンジニアほどの深さは必要ありませんが、コードを読む力とちょっとしたスクリプトを書く力は必須です。

セキュリティ分野で最も汎用性が高いプログラミング言語はPythonです。Pythonは文法がシンプルで学びやすいだけでなく、セキュリティツールの開発やログ解析の自動化、脆弱性の検証コード(PoC)の作成など、幅広い場面で活用されています。セキュリティ関連のライブラリも豊富に揃っており、Scapyを使ったパケット操作やRequestsライブラリを使ったHTTP通信の自動化など、実践的なスキルを比較的短期間で身につけることができます。

ところで、Pythonと併せて学んでおきたいのがBashスクリプトです。Linux環境での作業を自動化する際にBashスクリプトは非常に重宝しますし、セキュリティツールの多くがシェルスクリプトで動作しています。ワンライナーで複数のコマンドを組み合わせてログを解析したり、定期的なセキュリティチェックを自動実行するスクリプトを書いたりできるようになると、実務での作業効率が飛躍的に向上します。

Web技術の理解も欠かせない

プログラミング学習と並行して、HTML、CSS、JavaScriptの基礎にも触れておくことをおすすめします。Webアプリケーションのセキュリティは、セキュリティエンジニアの主要な業務領域の一つであり、Web技術の仕組みを理解していなければ脆弱性の本質を把握することができません。

HTMLの構造、フォームによるデータ送信の仕組み、JavaScriptによるDOM操作、CookieやSessionの管理方法など、Webアプリケーションがどのように動作するかを一通り理解しておくことが重要です。これらの知識は、後にOWASP Top 10を学ぶ際の前提条件となります。

そういえば、SQLの基本文法も忘れずに学んでおきましょう。データベースへのクエリの書き方を理解していれば、SQLインジェクションがなぜ危険なのか、どのような入力が攻撃に利用されうるのかが直感的に分かるようになります。SELECT文、INSERT文、WHERE句などの基本操作を覚えておけば、この段階では十分です。

ステップ4: セキュリティの基礎知識を学ぶ(学習期間の目安: 2~3か月)

ネットワーク、OS、プログラミングという三つの土台が揃ったところで、いよいよセキュリティの基礎知識に本格的に取り組みます。ここまでの学習で蓄えた知識があれば、セキュリティの概念が驚くほどスムーズに頭に入ってくるはずです。

セキュリティの基礎学習では、情報セキュリティの三大要素であるCIA(機密性・完全性・可用性)の概念を理解するところから始めましょう。この三つの要素は、あらゆるセキュリティ対策の判断基準となる根本的な考え方です。暗号化は機密性を守るための技術であり、ハッシュ関数は完全性を確認するための仕組みであり、冗長構成は可用性を維持するための設計です。個別の技術を学ぶときに「これはCIAのどの要素を守るためのものか」と紐づけて考える習慣をつけると、知識が体系的に整理されていきます。

実は、この段階で取り組んでおきたいのが情報処理安全確保支援士(登録セキスペ)の学習です。合格を最終目標にしなくても、この資格の学習範囲がセキュリティの基礎知識を網羅的にカバーしているため、教材として非常に優秀です。暗号技術、認証の仕組み、ネットワークセキュリティ、アプリケーションセキュリティ、セキュリティマネジメントなど、セキュリティエンジニアに必要な知識の全体像を把握するのに最適な学習素材と言えます。

暗号技術の理解を深める

セキュリティの基礎の中でも、暗号技術は特に重要なテーマです。共通鍵暗号と公開鍵暗号の違い、ハッシュ関数の仕組み、デジタル署名と電子証明書の関係性など、暗号技術の基本を理解しておくことで、TLS/SSLの仕組みやVPN、PKI(公開鍵基盤)といった実用的なセキュリティ技術の理解が深まります。

AES、RSA、SHA-256といった具体的なアルゴリズムの名前と特徴を覚えることも大切ですが、それ以上に「なぜ暗号化が必要なのか」「どのような場面でどの暗号方式を選ぶのか」という判断力を養うことが重要です。暗号技術は数学的な背景を持つ分野ですが、セキュリティエンジニアとしては数学の詳細よりも、各方式の強みと弱み、適切な使い分けを理解していれば十分です。

ところで、暗号技術の学習と合わせて、認証と認可の仕組みについても理解を深めておきましょう。パスワード認証、多要素認証(MFA)、OAuth 2.0、OpenID Connectなどの認証プロトコルは、現代のWebサービスやクラウド環境において欠かせない技術です。これらの仕組みの脆弱性を理解することは、セキュリティエンジニアの重要な業務の一つとなります。

ステップ5: 専門分野を選んで深掘りする(学習期間の目安: 3か月以上)

セキュリティの基礎を一通り学んだら、いよいよ自分が進みたい専門分野を選んで深掘りしていく段階です。セキュリティエンジニアの仕事は幅広く、すべてを同じ深さで学ぶことは現実的ではありません。自分の興味と市場のニーズを照らし合わせて、注力する領域を絞り込むことが大切です。

脆弱性診断の分野に進みたい方は、OWASP Top 10を徹底的に学ぶことから始めましょう。Webアプリケーションに対する代表的な攻撃手法と対策を体系的に理解できます。Burp Suiteなどの診断ツールの使い方を覚え、CTF(Capture The Flag)やHackTheBoxなどのプラットフォームで実践的な演習に取り組むことで、実務に近い経験を積むことができます。

インシデント対応やSOC(Security Operations Center)の方面に興味がある方は、ログ分析やSIEM(Security Information and Event Management)の知識を深めましょう。Splunkなどのログ分析ツールの使い方、フォレンジック(デジタル鑑識)の基礎、マルウェア解析の入門知識などが求められます。CompTIA CySA+(Cybersecurity Analyst)の学習が、この分野のスキルセットを体系的に身につけるのに適しています。

実践の場を見つける

セキュリティは座学だけでは身につかない分野であり、実際に手を動かす経験が不可欠です。幸いなことに、合法的にセキュリティスキルを磨ける環境は数多く用意されています。

HackTheBoxやTryHackMeは、オンラインで脆弱性のあるマシンに挑戦できるプラットフォームで、初心者向けのチュートリアルから上級者向けのチャレンジまで幅広く揃っています。自分のペースで取り組めるため、仕事をしながら学習を続けたい方にも最適です。OWASP WebGoatやDVWA(Damn Vulnerable Web Application)のような意図的に脆弱性を含んだWebアプリケーションを自分のローカル環境に構築して練習する方法もあります。

そういえば、日本国内で開催されるCTF大会に参加するのも良い経験になります。SECCON BeginnersやCpawCTFなど、初心者向けのCTFイベントが定期的に開催されており、暗号解読、Webセキュリティ、バイナリ解析、フォレンジックなど、幅広い分野の問題に挑戦できます。チームで参加することで、セキュリティに興味を持つ仲間とのネットワークも広がり、学習のモチベーション維持にもつながります。

学習全体の期間と転職までのロードマップ

ここまで紹介した5つのステップを着実に進めていけば、おおよそ10か月から1年半程度でセキュリティエンジニアとしての基礎力が身につきます。もちろん個人の学習ペースや前提知識の有無によって差はありますが、一つの目安として参考にしてください。

学習を進める上で大切なのは、各ステップを完璧にマスターしてから進むのではなく、ある程度理解できたら躊躇なく先に進むことです。全体像が見えてくると、前のステップで学んだ内容の理解も自然と深まります。どのステップにいても「これはセキュリティとどう関係するのか」と考え続けることで、学習の方向性がぶれずに済みます。

ところで、転職活動との兼ね合いも重要なポイントです。すべての学習が完了するまで待つ必要はありません。ステップ4あたりまで進んだ段階で、セキュリティ関連のエントリーレベルの求人に応募を始めるのは十分に現実的です。SOCアナリストやセキュリティ運用担当のポジションは、未経験者でも基礎知識とやる気をアピールすれば採用される可能性があります。学習と並行して転職活動を進めることで、面接を通じて自分の知識の穴を発見し、学習計画を修正するというフィードバックループも生まれます。

資格取得のタイミングと戦略

学習の各段階で取得を目指す資格を設定しておくと、学習のマイルストーンとして機能します。ネットワーク段階ではCompTIA Network+やCCNA、OS段階ではLPIC-1、セキュリティ基礎段階ではCompTIA Security+や情報処理安全確保支援士が候補になります。

CompTIA Security+は、セキュリティ分野の入門資格として国際的に認知されており、海外のセキュリティ求人でも頻繁に要件に挙げられます。日本語でも受験可能で、学習期間は2~3か月程度が目安です。セキュリティの基礎を体系的に押さえるのにちょうど良い難易度であり、転職活動でのアピール材料としても有効です。

実は、資格はあくまで知識の証明であり、それだけで採用されるわけではありません。しかし、未経験からセキュリティ分野への転職を目指す場合、実務経験の代わりに「体系的な学習をしてきた」ことを証明する手段として、資格は非常に有効に機能します。資格取得の学習プロセスそのものが、セキュリティの知識を体系的に整理する良い機会になるため、資格を目標にすること自体に大きな価値があります。

まとめ

セキュリティエンジニアへの道のりは、ネットワーク、OS、プログラミング、セキュリティ基礎、専門分野という順番で学習を進めることが最も効率的です。各段階でしっかりと土台を固めることで、セキュリティの専門知識を深く理解する力が自然と養われていきます。

学習期間は全体で10か月から1年半程度が一つの目安ですが、大切なのは完璧を目指すことではなく、着実に前に進み続けることです。HackTheBoxやCTFなどの実践的な演習を取り入れながら、座学と手を動かす学習をバランスよく組み合わせることで、現場で通用する実力が身についていきます。

セキュリティ人材の不足は深刻化しており、未経験者にも門戸は広がっています。正しい学習順序で着実にスキルを積み上げていけば、セキュリティエンジニアとしてのキャリアは決して遠い目標ではありません。この記事が、あなたの学習ロードマップを描く一助になれば幸いです。

IT転職で年収アップを実現しませんか?

エンジニア・プログラマー向け転職エージェントで、理想のキャリアを手に入れましょう。

おすすめ転職サイトを見る