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入社日交渉の進め方 - 円満退職と新天地の両立

この記事のまとめ

  • 入社日の交渉は内定承諾前に行うのが鉄則で、承諾後の変更は信頼関係を損ないやすい
  • 引き継ぎ期間は「自分が思う最短期間」に2週間を上乗せして見積もるのが現実的
  • 有給消化の権利を正しく理解し、退職日と入社日のスケジュールを逆算して設計することが大切

入社日交渉はいつ切り出すべきか

内定をもらったときの喜びはひとしおだが、その勢いのままオファーを承諾してしまうと、あとから入社日の調整に苦労することがある。入社日の交渉は、内定通知を受けてからオファーを正式に承諾するまでの間に行うのが望ましい。この段階であれば企業側も「まだ条件のすり合わせ中」という認識を持っているため、入社日の相談を切り出しても角が立ちにくい。

一度オファーを承諾した後に入社日の変更を申し出ると、転職先から「約束を守れない人」という印象を持たれかねない。特にエンジニア採用では、チームの体制やプロジェクトの開始タイミングに合わせて入社日が設定されていることが多い。入社日がずれることでプロジェクト計画に影響が出る場合、入社前から信頼関係にヒビが入ってしまうリスクがある。

理想的なのは、面接の段階で入社可能時期についてある程度の目安を伝えておくことだ。「現職の引き継ぎを考えると、内定後2か月程度の期間をいただきたい」といった形で事前に伝えておけば、内定時に提示される入社日がそもそも現実的な日程になりやすい。面接での発言と内定後の交渉に一貫性があることが、転職先からの信頼を得るうえで大切だ。

現職の引き継ぎ期間を正確に見積もる方法

入社日を交渉するためには、現職の退職にどれだけの時間がかかるかを正確に見積もる必要がある。エンジニアの場合、引き継ぎの対象はコードベースだけではない。設計思想、運用手順、暗黙知としてチーム内に共有されている判断基準など、ドキュメント化されていない知識の引き継ぎが最も時間がかかるものだ。

引き継ぎ期間の見積もりで多くの人が犯す過ちは、「自分が最短で引き継げる期間」をそのまま退職日として設定してしまうことだ。実際には、後任者の選定が遅れたり、引き継ぎ中に緊急対応が入ったり、上司から追加の引き継ぎ事項を求められたりと、想定外の遅れが発生することが珍しくない。目安として、自分が見積もった引き継ぎ期間に2週間を加えた日程を退職日の候補にしておくと、余裕を持ったスケジュールになる。

具体的な引き継ぎの進め方としては、担当しているシステムやプロジェクトの一覧を作り、それぞれについて「後任者が単独で対応できるようになるまでに必要な情報」を洗い出すところから始めるとよい。運用マニュアルの作成、コードのコメント追加、障害対応の手順書の整備など、やるべきタスクを明確にしておくことで、引き継ぎ期間の見積もり精度が上がるだけでなく、現職の上司に対しても「計画的に退職を進めている」という安心感を与えられる。

退職交渉で揉めないための心構え

退職を切り出すタイミングは、多くのエンジニアが悩むポイントだ。法律上は退職の意思表示から2週間で雇用契約を終了できるが、就業規則で「1か月前」や「2か月前」の申告を求めている企業が大半だ。円満退職を実現するためには、法律上の最低ラインではなく就業規則に従ったスケジュールで退職の意思を伝えるのが無難だ。

退職を伝える相手は直属の上司が基本だ。いきなり人事部門に連絡したり、同僚に先に話してしまったりすると、上司の面目が潰れて退職交渉がこじれる原因になる。上司との1on1の場を設けて、感謝の気持ちを伝えたうえで退職の意思を告げるのがスマートな方法だ。このとき、転職先の社名を伝える義務はない。聞かれた場合でも「詳細はまだお伝えできませんが、自分のキャリアの方向性に合った会社です」といった形で答えれば問題ない。

退職交渉で大切なのは、感情的にならないことだ。「この会社が嫌だから辞める」というニュアンスを出してしまうと、上司としてもいい気持ちはしないし、引き継ぎ期間中の関係性にも影響する。「新しい環境でチャレンジしたい」「自分のキャリアを考えた結果」といったポジティブな理由を軸に話すことで、建設的な退職交渉ができる。引き留められた場合の対応については、カウンターオファーの記事も参照してほしい。

有給消化の取り扱いと退職日の設計

有給休暇の消化は、退職時にトラブルになりやすい項目のひとつだ。労働基準法上、有給休暇の取得は労働者の権利であり、退職前にまとめて消化することも法的には認められている。ただし、引き継ぎが不十分な状態で有給消化に入ってしまうと、現職のチームに迷惑がかかるだけでなく、業界内での評判に影響する可能性もある。

有給消化を含めた退職スケジュールを設計する際は、「最終出勤日」と「退職日」を分けて考えるのがコツだ。たとえば、最終出勤日を3月15日、そこから有給消化に入って退職日を3月31日にする、といった形だ。この場合、転職先への入社日は4月1日になる。最終出勤日までに引き継ぎを完了させることが前提になるので、引き継ぎ計画は最終出勤日を基準に立てる必要がある。

有給休暇が大量に残っている場合は、有給消化期間が長くなり、入社日との調整がさらに難しくなることがある。残日数が20日以上ある場合は、一部を消化して残りは退職時に買い取ってもらえるかどうかを確認してみるのも手だ。有給の買い取りは法的な義務ではないが、就業規則で認めている企業もある。いずれにしても、有給消化の計画は退職交渉の早い段階で上司と相談し、合意を得ておくことがトラブル防止につながる。

転職先への期待管理の方法

入社日を交渉する際に忘れてはならないのが、転職先への期待管理だ。入社日が遅れることを伝える場合、単に「引き継ぎがあるので遅くなります」と言うだけでは不十分だ。転職先の採用担当者やマネージャーが知りたいのは、「具体的にいつ入社できるのか」と「その日程が確実なのか」の2点だ。

入社日を伝える際は、できるだけ確実な日付を提示するようにしたい。「3月中には入社できると思います」のような曖昧な表現ではなく、「4月1日に入社いたします。現職の引き継ぎと有給消化のスケジュールから逆算した日程です」と根拠を添えて伝えることで、転職先の安心感が格段に増す。スケジュールを共有する際に、現職の退職交渉がこれからなのか、すでに合意を得ているのかも伝えると、より信頼度が高まる。

転職先が入社日を急いでいる場合でも、無理に早い日程を約束するのは避けたほうがいい。引き継ぎが不十分なまま退職すると、前の会社からの印象が悪くなるだけでなく、新しい会社に入ってからも「中途半端な引き継ぎをする人」というレッテルを自ら貼ることになりかねない。「しっかり引き継ぎをしてから入社したい」という姿勢は、むしろ転職先からの評価を高めることが多い。誠実に対応していれば、多くの企業は1〜2か月程度の待機期間を受け入れてくれるものだ。

退職から入社までの空白期間をどう過ごすか

最終出勤日と入社日の間に数日から数週間の空白期間が生じることがある。この期間の使い方次第で、新しい職場でのスタートダッシュの質が大きく変わる。退職後にリフレッシュの時間を確保することは精神的な切り替えのために大切だが、ただ漫然と過ごすのではなく、新しい環境への準備期間として活用するのが賢い使い方だ。

転職先で使う技術スタックが現職と異なる場合は、基本的なキャッチアップをこの期間に済ませておくと入社後の立ち上がりが早くなる。たとえば、新しいプログラミング言語のチュートリアルを進めたり、転職先が公開しているテックブログを読んで技術的な方針を理解したりするのが有効だ。転職先のプロダクトがパブリックに利用できるものであれば、ユーザーとして触ってみるのもよい。

社会保険や年金の手続きについても、この期間に確認しておく必要がある。退職日と入社日の間に空白が1日でもあると、国民健康保険への加入手続きが必要になる場合がある。住民税の支払い方法が変わるケースもあるため、退職時に人事から渡される書類をしっかり確認しておこう。これらの事務手続きは地味だが、後回しにすると入社後にバタバタする原因になる。

入社日が決まったあとに起きやすいトラブルと対策

入社日が決まって安心した矢先に、思わぬトラブルが発生することがある。よくあるのは、現職から引き留められて退職日が延びるパターンだ。「後任が見つかるまでもう少しいてほしい」「このプロジェクトが終わるまで待ってくれないか」といった要請を受けると、断りにくい気持ちになるのは自然なことだ。しかし、一度合意した退職日をずるずると延ばしてしまうと、転職先との約束にも影響が出る。

こうしたリスクを避けるためには、退職届を書面で提出しておくことが有効だ。口頭での合意だけでは、後から「そんな話は聞いていない」と言われる可能性がゼロではない。退職届に退職日を明記し、受領印をもらっておけば、日程が動かしにくくなる。退職届の提出後は、引き継ぎ計画を上司と共有し、進捗を定期的に報告することで「計画的に引き継ぎを進めている」ことを示し続けよう。

転職先の都合で入社日が急に変わるケースもまれにある。組織再編やプロジェクトの延期などが理由だが、この場合は冷静に状況を確認し、代替の入社日を提案してもらうのが基本的な対応だ。もし入社日の延期が繰り返されるようであれば、その企業の組織運営に問題がある可能性を視野に入れつつ、転職エージェントに相談するのがよいだろう。

まとめ

入社日の交渉は、現職への責任を果たしつつ新しいキャリアを気持ちよくスタートさせるための大切なプロセスだ。交渉のタイミングは内定承諾前がベストであり、引き継ぎ期間には余裕を持たせたスケジュールを組むことが重要になる。

退職交渉では感情的にならず、有給消化のスケジュールも含めた現実的なプランを事前に設計しておこう。転職先に対しては確実な日程を根拠とともに伝え、誠実な対応を心がけることで、前の会社との関係を壊すことなく新天地での好スタートを切ることができる。

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