海外クラウドソーシングでフリーランスエンジニアとして活動する際、最初に迷うのがプラットフォームの選択です。世界的に知名度の高いUpworkとFiverrは、どちらもエンジニア向けの案件が豊富ですが、その仕組みや文化は大きく異なります。「どちらが自分に合っているのか」を判断するためには、両プラットフォームの特徴を正しく理解する必要があります。
この記事では、UpworkとFiverrをエンジニアの視点から比較し、それぞれのメリット・デメリットを具体的に解説します。自分の働き方やスキルに合ったプラットフォームを選ぶための判断材料として、ぜひ参考にしてください。
プラットフォームの基本的な違い
UpworkとFiverrは、見た目は似ているようで、その根底にあるビジネスモデルが大きく異なります。この違いを理解することが、両プラットフォームを効果的に使いこなすための第一歩です。
Upworkは「求人型」、Fiverrは「出品型」
Upworkの基本的な仕組みは、クライアントが案件を投稿し、フリーランサーがそれに対して提案(プロポーザル)を送るという「求人型」のモデルです。フリーランサーは案件を探して応募し、クライアントが提案の中から最適な人材を選ぶ流れになります。就職活動に近いイメージで、案件ごとにカスタマイズした提案文を書く必要があります。
一方Fiverrは、フリーランサーが自分のサービス(Gigと呼ばれる)を出品し、クライアントがそれを購入するという「出品型」のモデルです。ECサイトで商品を購入するのに近い感覚で、クライアントは検索やカテゴリからGigを見つけて注文します。フリーランサーは自分のサービスページを充実させて、クライアントからの注文を待つ形になります。
この構造の違いが、案件獲得のプロセスに大きな影響を与えます。Upworkでは能動的に案件を探して提案を送る行動力が求められ、Fiverrでは魅力的なGigページを作り込んで検索上位に表示させるマーケティング力が求められます。どちらが得意かによって、適したプラットフォームは変わってくるでしょう。
案件の規模と質の違い
Upworkはもともと企業向けのアウトソーシングプラットフォームとして発展してきた経緯があるため、中〜大規模の案件が多い傾向にあります。数千ドルから数万ドル規模のプロジェクト、長期契約、チームの一員としてのポジションなど、本格的なエンジニアリング案件が充実しています。
Fiverrは「5ドルからサービスを購入できる」というコンセプトで始まったプラットフォームであり、現在は高額なGigも多数存在しますが、全体的にはUpworkよりも小規模な案件が多い傾向です。ロゴデザインやちょっとしたコード修正、WordPressのカスタマイズといった短時間で完了する案件が中心で、大型のシステム開発案件はUpworkのほうが圧倒的に豊富です。
ただし、Fiverrでも高単価のGigを設定してプレミアムなサービスを提供しているエンジニアはいます。初心者向けの小さな案件から始めて、評価を積み重ねながら徐々に価格を上げていくという成長戦略はFiverrでも有効です。
手数料体系の比較
フリーランスプラットフォームを選ぶ際に、手数料の違いは収益に直結する重要な比較ポイントです。UpworkとFiverrでは、手数料の計算方法が根本的に異なります。
Upworkの段階制手数料
Upworkの手数料は、クライアントごとの累計請求額に応じて段階的に変動します。最初の500ドルまでは20%、500ドルから10,000ドルまでは10%、10,000ドルを超えると5%という3段階制です。同一クライアントとの取引が続くほど手数料率が下がっていくため、長期的な関係構築にインセンティブがある設計になっています。
この段階制は長期契約に有利ですが、新規クライアントとの最初の取引では20%という高い手数料がかかるのがデメリットです。多くのクライアントと少額の取引を繰り返すスタイルでは、常に高い手数料率を負担することになります。
Upworkでは提案を送る際にConnectsというクレジットも必要で、月に無料で付与される分を超えると購入が必要です。このConnectsのコストも、実質的な手数料の一部として考えるべきでしょう。
Fiverrの一律手数料
Fiverrの手数料はシンプルで、売上の20%が一律で差し引かれます。取引額や取引回数に関係なく、常に20%の手数料がかかるという仕組みです。Upworkのような段階制はないため、長期クライアントとの取引でも手数料率は変わりません。
一見するとFiverrのほうが不利に見えますが、Upworkでも新規クライアントとの最初の500ドルは20%の手数料がかかることを考えると、短期の少額案件に限ればほぼ同等です。むしろ違いが出るのは、同一クライアントとの長期取引の場面で、この点ではUpworkに明確な優位性があります。
Fiverrにはクライアント側にも追加の手数料(サービスフィー)がかかるため、クライアントの支払い総額はフリーランサーが受け取る額よりもかなり大きくなります。この点はクライアントの予算感に影響を与えるため、間接的にGigの価格設定にも考慮が必要です。
エンジニアにとっての使い勝手比較
手数料だけでなく、実際の使い勝手も重要な比較ポイントです。エンジニアとして活動する上で、プラットフォームの仕組みがどのように仕事に影響するかを見ていきましょう。
案件獲得のプロセス
Upworkでの案件獲得は、能動的なアプローチが必要です。案件を検索し、内容を吟味し、カスタマイズした提案文を作成して送るという一連の作業が欠かせません。人気のある案件には数十件の提案が集まるため、自分の提案を目立たせる工夫も求められます。提案のたびにConnectsを消費するコストも考慮に入れると、案件獲得の効率は重要な指標になります。
Fiverrの場合は、一度Gigページを作成して公開すれば、あとはクライアントからの注文を待つ形になります。Gigページのタイトル、説明文、タグの最適化によって検索順位が変わるため、SEO的な考え方が必要です。受動的なアプローチではありますが、Gigの評価が高まるにつれて自然と注文が入るようになるため、軌道に乗ると安定感があります。
どちらのプラットフォームでも、クライアントから直接声がかかる「インバイト」や「カスタムオーダー」の仕組みがあります。評価やプロフィールの充実度に応じて、クライアント側からアプローチが来るようになれば、案件獲得の負担は大幅に軽減されます。
コミュニケーションスタイルの違い
Upworkでは、案件の受注前からクライアントとメッセージのやり取りが可能です。提案に対してクライアントが質問してきたり、面接(ビデオ通話)を行ったりと、受注前のコミュニケーションが活発です。プロジェクトの要件を詳細にすり合わせてから契約に進むため、認識のずれが起きにくいというメリットがあります。
Fiverrでは、Gigページに記載された内容に基づいてクライアントが注文するため、受注前のコミュニケーションは比較的少ない傾向にあります。注文後にメッセージでやり取りすることは可能ですが、すでに購入が確定した状態なので、大幅な仕様変更は難しくなります。そのため、Gigの説明文で提供範囲を明確に定義しておくことが非常に重要です。
エンジニアリングの案件は、要件が曖昧なまま着手すると問題が発生しやすいジャンルです。事前に十分なコミュニケーションを取れるUpworkのモデルは、この点でエンジニアにとって安心感があるといえるでしょう。
収入の安定性と成長性
フリーランスとして長期的に活動する上で、収入の安定性と成長の見通しは重要な判断基準です。両プラットフォームの特性が収入にどう影響するかを比較してみましょう。
Upworkは長期契約で安定しやすい
Upworkの強みは、長期契約やリテーナー型の案件が豊富な点です。週に20~40時間の定常的な稼働を求めるクライアントも多く、一度信頼を得られれば安定した月収を確保しやすくなります。また、クライアントとの累計取引額が増えるほど手数料が下がるため、長期的な収益性も向上します。
反面、Upworkでは案件の空白期間が生じるリスクもあります。プロジェクトが終了した後、次の案件を見つけるまでの間は収入がゼロになるため、常に複数の案件やクライアントとの関係を維持しておくことが大切です。
時給制の案件を活用すれば、稼働時間に応じた安定的な報酬を得ることも可能です。特に、週に一定時間以上の稼働を保証するタイプの契約は、フリーランスでありながら安定した収入を実現できるモデルとして人気があります。
Fiverrはスケーラブルな収益モデル
Fiverrの収益モデルは、ひとつのGigが複数のクライアントから繰り返し注文されるという特性があります。人気のGigを作ることができれば、同じサービスを多くのクライアントに提供することで収入をスケールできるのが大きな魅力です。
たとえば、「WordPressサイトの速度最適化」というGigを出品して、月に10件の注文を受ければ、1件あたり200ドルだとしても月収2,000ドルになります。サービス内容が定型化しているほど、効率的に作業をこなせるため、実質的な時給も上がっていきます。
ただし、Fiverrでは注文数が安定するまでに時間がかかることが多いです。新しいGigは検索結果の上位に表示されにくく、最初のレビューを獲得するまでが一番大変な時期です。この初期の壁を乗り越えられるかどうかが、Fiverrでの成功と失敗を分ける分水嶺となります。
どちらを選ぶべきか - 判断基準のまとめ
両プラットフォームの特徴を踏まえたうえで、自分の状況に合った選択をするためのガイドラインを整理しておきましょう。
Upworkが向いている人
大型のプロジェクトに参画したい方、長期的なクライアント関係を構築して安定収入を得たい方にはUpworkが適しています。要件の擦り合わせや密なコミュニケーションを好む方、フルスタック開発やシステム設計など複雑な案件を得意とする方も、Upworkのほうが活躍の場を見つけやすいでしょう。
提案を書くのが得意で、能動的に案件を探す行動力がある方もUpwork向きです。受動的に注文を待つよりも、自分から攻めていくスタイルが性に合っているなら、Upworkのモデルのほうがストレスなく活動できるはずです。
Fiverrが向いている人
定型化したサービスを多くのクライアントに提供したい方にはFiverrが適しています。特定の技術やタスクに特化した専門サービスを持っている方——たとえばWordPressのカスタマイズ、ランディングページの制作、APIの開発など——は、Fiverrで専門Gigを出品することで効率的に収益を上げられるでしょう。
マーケティング的な思考が得意で、Gigページの最適化やブランディングに興味がある方もFiverr向きです。自分のサービスを「商品」として磨き上げ、多くの顧客を獲得していくプロセスを楽しめるなら、Fiverrは大きな可能性を秘めたプラットフォームです。
両方を併用するという選択肢
実は、UpworkとFiverrの両方を併用するという戦略も有効です。Upworkで長期クライアントとの安定した収入基盤を作りつつ、Fiverrで定型サービスによる追加収入を得るという二刀流は、リスク分散の観点からも理にかなっています。
両方のプラットフォームで活動することで、フリーランスとしてのスキルも多角的に磨かれます。Upworkではクライアントとの関係構築力、Fiverrではマーケティング力と効率化の能力が鍛えられるため、フリーランスとしての総合力が向上するでしょう。
まとめ
UpworkとFiverrは、どちらも優れたプラットフォームですが、その仕組みと向いている案件のタイプは大きく異なります。Upworkは長期的な関係構築と大型案件に強く、Fiverrはスケーラブルな定型サービスの提供に適しています。
自分のスキルセット、働き方の好み、目指す収入モデルを考慮して、最適なプラットフォームを選んでください。迷うなら両方を試してみるのも手です。実際に使ってみることで、自分に合ったスタイルが自然と見えてくるでしょう。